第19話 ラッキースケベは命がけ
どういうわけか、酷くうなだれている。
歩くスピードが落ちたので、子供の手を引くように森を進む。
「そんなことですか」
そんなことってなんだ!
今日した話で一番大事なことだろ!
「どうぞ、好きな時に触ってください」
やったー!
心に打ち上げ花火が1000連続で打ち上がる。
ナイアガラに染まる夜景と、火薬の匂いを思い出す。
セミが鳴き始めた夏の頃。
幼い俺は母に連れられ___おっと危ない。尻を触ることを考えただけで思考があの夏の日に飛びそうになった。
「じゃあ、今いいか?」
「い、今は手を繋いでるので、ダメです!」
「えーじゃあ繋ぐのやめよっかな」
最重要項目だ。なによりも優先される。
「姉を助けたら! 神域に戻って好きなだけどうぞ! エッチじゃない範囲で!」
「いいだろう、俄然やる気が出てきた」
好きな時に好きなだけ、だとずっと触ってることになるからな。あまりに幸せで意識もぶっ飛ぶ。それだと世界を救ったり、姉と妹を助ける約束を守れない。
アイオンの許可が降りた時くらいで丁度いい。
「きゃ!」
アイオンが木の根に引っかかりずっこけた。手を繋いでいたは俺は一緒に倒れ込む。
「あっ、ちょっと、守さんそこは」
ひでぶ!!!
初々しくアイオンが顔を赤らめていると思ったら!
俺の片手が、アイオンの片乳を鷲掴みにしているではないか!
ま、まずい! 魔物がいる危険な森で先ほどまで遠のいていた夏の思い出が強制フラッシュバックしてしまったら、目覚めると共に死んでいる可能性がある!
というかその可能性しかない!
尻はちょっと触る程度のつもりだったが、これはまずい!
完全に鷲掴んでいる!このままだと意識がもっていかれる!
お、おっぱーい!
あかん思考の侵食がはじまっぱーい!
セミの鳴き声と花火とおっぱいが!
俺をむしばっぱいぱいパイナポー!
「おおおおおおおおおおおお! ああ!!」
はあ…はあ…屈強な意思でおっぱいから手を引き離した。危うく死ぬところだった。
今日一の命の危険を感じた。
ラッキースケベで死んだら本望かもしれないが、俺はまだ尻を揉んでいない。
ここで死ぬわけにはいかない。
アイオンに手を差し伸べ、立ち上がらせた。俺の丸出しの下半身も、立ち上がっていた。
「ありがとうございます。でも静かにして下さい、もうすぐ目的とは別の四天王が住む城があります。やり過ごしますよ」
ヤり過ごす? なんだ卑猥な言葉にしか聞こえない。
「どこにあるんだ、その城は」
「ここから20キロほど左に進むと、森を抜けます。その少し先に城が見えます。四天王最強の邪神ベルゼブブの住処です」
「そこに姉妹もいるのか?」
「いえ、いません。おそらく私が捕まった場合の幽閉先なんでしょう」
「なるほど。ちょっと見に行ってもいいか? 俺も下見したい」
「わかりました、静かにお願いします。触りたいなら言ってください」
「触りたくない時なんてない」
「きー! じゃあ夜までお待ちください」
やっぱり今夜から一緒に寝るってそういうコト?! 聖なる力失うと困るのでは?俺がいるから大丈夫か。
「ほら、いきますよ」
アイオンは俺の手を取り、身をかがめ進んだ。さっきの魔法で疲れてるからな。仕方ない。んふ。
しばらく進むと森を抜け、城が見えた。
縦長に塔を持つ、いかにもな城だった。
空は紫色に染まり、怪鳥があたりを飛んでいる。入り口には門番なのか、オーガジェネラルが立っていた。
あの中にもっと強い魔物や魔人が沢山いるのか。
「なあ、一つ試したいことがあるんだが」
「なんでしょう」
「その前に、まだ昼前だし一旦帰って休んでもいいか? 腹も減った」
「そうですね。一度戻りましょうか」
俺は閃いていた。
まずは腹ごしらえだ。
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