第5話 俺たちの戦いはこれからだ
「あ、あの。ごめんなさい聞き間違えたかもしれません。もう一度お願いします」
涙が嘘のように止まった女神からのプリーズ リピート アゲインだ。
アンコールに応えよう。
俺はファン想いのフロントマンだ。
「俺の好きな時に好きなだけおっぱいを揉ませてほしい」
ゆっくりと、そして一言一句たがえずに正確に伝えた。
少しの硬直の後、女神は早口で答えた。
「いやいやいやいや、何言ってるんですか!」
両腕を上下にブンブンと振り下ろすアイオン。胸も同様に、いやそれ以上にばいんばいんする。Live2Dと提携しているのか?
「俺は真剣だ」
「私の誘惑で契約しなかったから今あなたがいるんじゃないんですか?」
「おっぱいを揉ませてほしい」
「こんな貧相で色気のない体のどこが」
「充分豊満だ。おっぱいを揉ませてほしい」
「ちょっと、さっきからどこに向かって言ってるんですか」
おっぱいだ。
「おっぱいを揉ませてほしい」
俺は真顔で凝視し続ける。
真顔なのは、心を置き去りにしているからだ。そうしないと、俺の相棒が雲を割き、大地はひび割れ、そこに花を咲かせてしまう。
「ジロジロと見ないでください!」
アイオンは腕で胸を隠した。むしろエロくなった。
「おっぱいを揉ませてほしい」
「目を見て言わないで下さい!」
じゃあどこを見ていえばいいんだ、お尻か?後ろ向いてくれ。
そう伝えようと思った刹那___
「わかり……ましたよ。世界を救ってもらうんです、それくらいの代償、支払います。私の体で良ければ、好きにしてください」
神よ。
私に何度試練をお与えになるのか。
宝石よりも美しい女性に、こんな台詞を言われて、この気持ちを抑えることができるのだろうか、いや出来ない。
豚野郎でもなんでもいい、むしろ豚野郎がいい。なんとでも罵ってくれ。我々の界隈ではご褒美です。
震える俺の手はゆっくりと、しかし確実に、その禁断の果実へと距離を縮めていく。
「でもエッチな触り方は禁止ですよ!聖なる力が薄れたら、女神としての力も失います!」
全然構わない。世界とかどうでもいい。
「ちょっと! 聞いてますか?」
鼻息と脈拍は、シャトルラン100回を超えたあたりより速くなり、秘宝との距離は数センチとなる。
「あーもう! 覚悟をきめました! 指を動かさないでくださいね」
そういって女神アイオンは俺の手を掴み、自らの胸元へ導いた。
「んっ」
神聖ローマ帝国に建築された荘厳なカトリック教会を彷彿させる神殿の中央。
俺の脳内でまつろわぬ変態達がパイプオルガンで超絶技巧な旋律を奏で、ミクソリディアで調声されたグレゴリア聖歌をアニソンのごとく熱唱する。
神よ、感謝します。俺を転生させてくれてありがとう。
これが、おっぱい。
だとしたら、俺が今までおっぱいだと思って揉んでいたものは台所スポンジ、もしくは生花のオアシスだ。
弾力と柔らかさを兼ね揃え、それでいて手のひらに吸い付いてくる瑞々しさ。
その夢の世界の奥に守られた心臓が、ドクドクと脈打ち、命を伝えてくる。
聖女の恥じらう表情が、これ以上にないスパイスとなって、俺を悠久の安らぎへと導いた。
「も、もう充分でしょう? まだですか?」
顔と上体をそらし、おっぱいの女神は言う。
その神経反射な拒否反応は、より俺の元へと果実を近づけた。
まだだ。この幸せに終わりなどない。
世界が滅亡するまで、2人でこうしていよう。
しかし、女神の視線が俺の下半身に移ると、悲鳴と共に強烈なビンタが炸裂する。
顎先に貰ったそのご褒美で脳震盪をおこし、俺は気絶した。
俺のゾウさんが雄叫びをあげていたのだ。
さながら百獣の王の子、次なる支配者であり、統治者の誕生を祝福するように。
まあ、それから色々女神と頑張って、世界を救った。
完
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