第4話 凍り付く世界

 お前らの魂胆はすべてまるっとお見通しだ!

 もう騙されないぞ。色気仕掛けにも動じない。

 そうやって俺を騙して、悪魔の生贄にでもするつもりなんだろう。


「信用できない。さっきのやつも同じことを言っていたが、結局邪神だった」


「な、なるほど、非常に聡明。それでこそ勇者にふさわしいお方です」


「持ち上げても無駄だ、俺はもう行く」


「お待ちください!」


 踵を返し、プリティなお尻を女神に見せつける。さらばだ、俺は街に行き普通に恋をして、普通に結婚して、普通に子供を育てて、とにかく幸せに生きたい。

 女神の話が本当だとしても、勇者なんてまっぴらごめんだ。

 せっかく別世界に転移したんだ、後悔なく生きていく方がいい。 


 聖女が俺の腕を掴み引っ張るが無視だ。知ったこっちゃない。

 しかし、俺は聖域の外に出て驚愕した。

 自然は朽ち果て荒廃し、人骨が転がっているではないか。これではまるで魔物の国で、とても人間が住んでいる世界とは思えない。

 振り返りながら腕を掴んだ手を振りほどき、怒号する。


「やはり騙していたな!」


 息をあらげ、怒りをあらわにする。

 下半身もあらわにしている。


 女神は一瞬だけ俺の下半身の相棒を見たが、急いで視線を上げ、弁解を始めた。


「騙すだなんて滅相もありません! この世界の姿が、今人類の置かれている危機を表しているのです。9割の人間はすでに滅び、数少ない人類を力あるもので保護するので精いっぱいなのです」


「そんな……」


 俺の幸せな転生生活は、夢のまま終わるということか?


「今来たばかりの世界のために、嘆いて下さるのですね」


 全然違う。俺は俺の人生を嘆いていただけだ。 


「うん」


 とりあえず話を合わせてしまうのは社会人の悪い癖だ。


「ありがとうございます、流石は意志の勇者様」


 いや、違うけどね。まあいい。


「だが、お前を女神として信用出来るかは別だ。契約と称して、悪魔にでも変えられたらかなわん」


「そのようなことはけして! いえ、このような言葉に価値はありませんよね。私はどうしたら、信用して頂けるでしょうか?」


「なんでもするか?」


「はい。勇者様が望むことをすべて」


 純粋無垢な聖女は、たしかにそう言った。 

 不純物100%の俺は、それを利用することにする。


「そうか。なら俺が何を望むか、考えてみろ」


「うーん、アポカリプスが私の姿で行った、私の想像もつかないような色気仕掛けでまったくなびかなかった勇者様ですから、当然そちら方面ではないでしょうし」


 ブブー!!! 

 ばーかばーか、大外れだ!むしろ答えはそれです、それ!


「そんなことはない。俺は必死に耐えていただけだ。お前は魅力的だ」


「お気遣いありがとうございます」


 結構気持ち悪いことを言ったつもりだったが、女神は思いの外喜びを隠せずに表情を緩めた。可愛い。


「仕方ないな。答えを教えてやろう。よく聞け、死ぬことも消えることも許さん。俺と共に世界を救え」


「それが条件ですか?」


「ああ」


 少しの戸惑いの後、女神の唇が歪んだ。堰を切ったように突然嗚咽を上げて、子供のように泣き出してしまう。


 え、俺とずっと一緒に過ごすのそんなにしんどい?!


「どうした、そんなに嫌か」


 女神はフルフルと顔を横に動かす。その瞳は子猫よりも純粋無垢で光を乱反射していた。

 俺はすかさず駆け寄り、女神の後頭部を撫でた。

 あ、今なら髪触っても怒られなさそう。そう思ったからだ。


「ご、ごめんなさい。私、死ななくていいなんてそんな未来、考えたこともなくて。世界のために、勇者様に力を譲るために産まれて、消える存在だったのに」


 自らの手の甲で涙を拭き続けるが、その大粒の涙はとどまることを知らない。

 頬を涙を親指でぬぐうと、アイオンは蕩けた瞳で俺と目線を絡ませた。

 いまだ、いましかない。言おう。


「そうか。あと俺の好きな時に好きなだけおっぱいを揉ませてほしい」


 ピシャリ!世界が凍りついた。

 え?俺また何かやっちゃいました?


         ⭐︎⭐︎⭐︎


 お初にお目にかかります。

 君のためなら生きられる。と申します。

 ここまでの7000文字近いご愛読、誠にありがとうございます!


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限界集落で育った童帝オタク、王都の美女達に毎日口説かれるけどスローライフを送りたい

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