第22話 絶え間なく銀色
:ロリババア視点
「お兄ちゃーん!いってらっしゃーい!チュッ、エヘヘッ」
私はエゴと理性の狭間で藻掻きながら存在していた。
最近やっとキスしてくれる様になったお兄ちゃん。お尻の◯でならしてくれるお兄ちゃん。ヌルっと滑ってもう少しで大事な何かが破れそうで楽しみな今日この頃。
本当に
私がこの朽木家に生まれたのは幸運だった
私には前世の記憶があった。前世では90年を生き若い頃から冒険者をしていた。肉体強化を駆使して周囲の気配を察知する斥候役だった。
無理はしない
冒険者家業危険は付き物だ。無理をしなければ生き残れるのだ。冒険者が冒険すると死ぬ
目の前でミンチになった冒険者
毒でオカシナ顔色になってグリーン姉さ◯みたいになって死んでいった冒険者
昔は神社で復活するなんてイージーなものがなかった。
冒険しないで私は冒険者を続けた
すると42歳になった時だ
スキルが芽生えた、それは『鏖』ってスキル
スキルは覚えると感覚でわかる。
これは同じ空間に居る相手を指定して確実に殺せる凶悪なスキルだった。
42歳にもなるとお腹は出てくるし朝起きるのもけっこう辛い。疲れがとれないのだ。
そんな私がこのスキルを使って何をしろと?
私にはあまり欲が無かった
力の使い道を知らなければ持っていてもしょうがない。しかし斥候役でピンチに陥った時はモンスター相手にスキルを使って助かった。私は少しだけ、ほんの少しだけ冒険する様になった。欲は前より少し、出てきた。
それから幾千の星が流れて年をとった。老後は幸せだった。食べる物に困らない生活。雨風の入らない部屋に暖かい布団。普通って、何が普通なのか底辺も天辺も見なきゃわからない。女達ばかりで溢れてるこの世界もお金が有れば大概の事は出来たが私の1番欲しいモノは手に入らなかった。
それは愛してくれる男
歳を取り過ぎた。欲しい物は手に入れられても本当に欲しい者はいつだって手に入らない。あの時にああしてればとか、この時にこうしてればとか、若い頃は何故か気付かない。チャンスを自ら失う、それが歳を取るってことなんだろう。
私は老後になってからも夜空を見るのが何より好きだった
夜空には沢山の星が光ってる
星は輝いていて、綺麗
ある一つの光が
その光は点滅して力を失って消えようとしてる、そんな星だ
ああ、あれは私だ。目を閉じると私は宇宙に帰っていった。
天国、そんな場所が有るなら教えて欲しい
私は死んだ筈だった。
夜空を見上げて横になって居たらそのままポックリと逝った筈だ、死ぬ前の光景を覚えている。それが何時の間にか物心が付いた3歳くらいの銀髪の幼女に成り変わっている。
混乱した
死んだらアマテラスの名のもとに神の国に入るのではなかったのか?しかもこの肉体に芽生えたスキルが不老不死?私死なないの?
体も大きさが違って違和感しかない。アタフタと自分の体をペタペタ触ると部屋に居るメイドと思わしき人物が怪訝な顔をした。
「どうされました?朱音お嬢様」
「あかね?私の名前なの?」
「あらまあ!なんて賢いっ!2歳でこんなにしっかりお喋りになるなんて!」
どうやら2歳らしい。私は情報を把握する事に務めた、斥候は情報が大事だから
この広いお屋敷。朽木財閥の直系が住まう豪邸だった。母親はマリア。この齢でお母さんなんて言うのも恥ずかしいのでマミーって呼ぶことにした。マミー馬鹿だし。
姉さんはおっとりとしていてとても優しい。子供ながらにおっぱいがでかい姉ちゃん。
お兄ちゃんが居るみたいだけど会ったことがない。3歳に上がる前に一度だけ部屋から出るお兄ちゃんを見た。天使が居る、そう思った
「どけ、風呂入るから」
ポーと見惚れて突っ立ってた私に邪魔だと言うお兄ちゃん。私は光の速さで壁にへばり付いた
それからも一年に一回は顔を見れた。邪魔、向こう行け、あっち行け、臭い、うるさい、等ネガティブな言葉達だったが私は嬉しかった
こんなにカッコいい人に口を利いて貰えるなんて
私は満足してた
それがいつからかもっと欲しくなった
欲が出てくる
それはそう、あの頃から
今年から小6かあなんて部屋でぼんやりしてた時だった。不老の状態が今、ちんちくりんの状態で止まるなんて私の人生オワタってしんみりしてる時。
お兄ちゃんの部屋から何かが倒れる大きな音がした。私は気配察知をお兄ちゃんに限定して常時使ってるから何が起きたのかすぐにわかった
。私は自室を出てマミーを呼ぶ。お兄ちゃんの部屋には入れないから怒られたら最悪マミーのせいにしたらええんや!!
「マミー!!!お兄ちゃんの部屋から大きな音がしたから見てきてっ!!」
「なんだって!?そいつはぁてえへんだっ!!グヘヘっ!!!」
涎を垂らしながら部屋へと向かうマミー。
いつも息子の体を狙ってるのが私にもわかった。
取り敢えずなんかムカついたのでタンスの中に入ってる靴下を逆に裏返しする嫌がらせをした。
36足程裏返した時だった
「朱音へ〜聖夜くぅんが倒れてるからぁあん運ぶのぉぉてつだぁてちょ」
マミーの口元がベチャベチャに濡れて目が潤んで事後の様な服装をしてたが私は突っ込まない
初めてのお兄ちゃんの部屋に突っ込む方が大事だからだ
「お兄ちゃんっ!!!」
マミーをふっ飛ばしてお兄ちゃんの部屋に向かった。マミーはアヘアヘ言ってた
初めてのお兄ちゃんの部屋。もんのすごくいい匂いがしたあ。お兄ちゃんをベッドに運んで寝顔を眺める。口元がめちゃくちゃびちゃびちゃになってる。んなことよりも息、してない?
胸に耳を当て心音を確かめる。
『ドクンっ、ドクンっ』
生きてる。だけど気配がしない、この違和感はなんなのか実質年齢101歳の私でもわからなかった。
その日からお兄ちゃんは変わった。私を抱っこしたりメイドのお尻を見てたり。サランラップ歌ったり、女とヤッたり。
別の人格が乗り移ったと言われたら私は素直に信じるだろう。だけど家族でその話はしない事に決めたのだ。元のお兄ちゃんに戻ったら嫌だから、母さんも撫でられないのが嫌だから、お姉ちゃんはズルイ・・スポンジ枠になってる
私も全身洗ってもらってるけどね、手が滑ったなんつって私の色んな所を触るお兄ちゃん
優しい言葉を投げ掛けてくれるお兄ちゃん
お膝に抱っこして頭を撫でてくれるお兄ちゃん
ロリババアだけど愛してくれるかな?
夏の日にお兄ちゃんが入院してた精神病院で害虫達を全員皆殺しにしたらお兄ちゃんは物凄く悲しんでた。ごめんね
許せなかったから、お兄ちゃんを餓鬼に変えた奴等を。だけどガキでもなんでもいいんだよお兄ちゃん、お兄ちゃんさえ居てくれたら他は何も要らない。
マミーは慰謝料と警察への裏金を出さなくちゃなんて言ってたけどマミーも大概ブットンでる。私の通う小学校も朽木家からの多額の寄付金で頭が上がらないのだ。マミーはお金を山の様に稼ぐし湯水の如く使った。お金がなんで一部の上流階級達にしか集まらないのか。元々の資金が違うのだ。持ってるモノが違う。
コネ、金、土地、不動産、コネが有れば馬鹿でも政治家になれるこの世界。金で揉み消し土地で国から金を引っ張る。不動なのだ、金持ちは一生金持ち。奴隷の上に金持ちが居座るのはいつの時代も変わらないって歴史は教えてくれた
だけどお兄ちゃんはお金じゃ買えない。誰でも仲良くなるお兄ちゃんにコネなんて要らない。
私のお兄ちゃんへの想いは不変だ。大好き
私は今日も小学校へ通う。行かないとマミーが怒るからだ。女臭い教室でお兄ちゃんからパクったパ◯ツの匂いを嗅いで夢想する。
お兄ちゃんとの甘い日々を
学校から帰るとリビングのソファーに知らない女、じゃない、のぞみんっつーお兄ちゃんの女だ。お兄ちゃんの女が横になって寝てた。
「えっと、ミ、ミチルちゃん、のぞみんが何でここに居るの?」
ジ◯ジョ立ちしてたミチル(メイド)に聞く
「ああっ!そいつっ!?なんか聖夜に置いてけぼりにされたからとかなんとかで角村さんが家に連れて来たわよっ、聖夜が置いとけだって」
このメイドはお兄ちゃんの事を早い段階から呼び捨てで呼んでる痛い女だ。この女の名前を一瞬忘れかけたがそんなの読者だって忘れてた。
私は夏休み明けて初日の学校が半日だったので昼食を取ろうと食堂へと足を向けた
お昼を食べてから部屋でゴロゴロしてた。
お兄ちゃんの気配はまだ近くにない。
よしっ
瞑想をしながら待つ。
瞑想を毎日しないとスキルを使うときに老婆だった前世の姿に戻る時が有るのだ。
瞑想大事よ
頭がぐわんっぐわん揺れているとお兄ちゃんの気配が、私はダッシュで玄関まで走った
途中すれ違ったメイドがあ〜れ〜なんつってたが無視だっ!
「たらいま〜」
「お兄ちゃあん!おかりん!エヘヘッスリスリ」
「ヨチヨチ、どしたん甘えて」
お兄ちゃんは最近たまに関西弁になる。変わってる変なお兄ちゃん、抱きついても怒らないお兄ちゃん、ナデナデしてくれるお兄ちゃん
「大好きだよ」
男が私の方に向いてないと下を向いた時
兄に嫌われてる事についてないと賽を置いた時
お兄ちゃんが目覚めたらまた藍色になるのは嫌だから
絶え間なく私の事を見ててね?お兄ちゃん
銀髪のツインテールは今日も機嫌良く揺れている
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