第21話 〜奮エテ眠レ〜


目の前に居る女の真っ暗なフードの中から覗き光る真っ赤な目の色の奥底にある物は諦観か後悔か


  「震えて眠れ」


・・・ろからそんな言葉を放つ彼女に俺は呪われた


時は今から少し遡る、





夏の終わりも近付いて8月の末日。配信を終わらせた後にシコってベッドに寝転んで森◯直太朗の夏の終わりんなんて口遊くちずさんだりしちゃうセンチな夜。自室で天井を見ながらゴロゴロしてた。何もしない時があってもいい、日常を忘れたいのは日常が大変だからだ。そんな気持ちを人は色々な手段で発散する。俺は専らオ◯ニーだ。◯ナニー伯爵の貴族位を授爵されるくらいには励んでいる。

肉体と精神を最近酷使しすぎてたのでこうやって何もしない日なんてのも必要な事なのだ。配信はチヤホヤされたいのでするしムラムラするのでシコるが。


のぞみんとの生配信や霞ちゃんをお迎えに皇居を爆破させたりと最近有ったことをぼんやり思い出す、丸めたティッシュ片手に。ダンジョンではオカマやピーチグループ達と出会いバカンスでは入院させられるし、マーメイドや出会い厨とも会ったり色々思い出が出来たな、なんつって


「ふん〜〜んんん〜んんんん〜んん〜『トロリロリン、トロリロリン』ッ!?」


3週目の夏の終わりんの導入部を口遊んで居たらライムの着信音が鳴り体がビクついた。

だれだ?


のぞみん

と出る画面を見て出るかどうか少し迷ったが出てみるか、


「もし?」


「あっ!聖夜くん出るのおそっ!暇?今暇?」


「暇じゃない」

嘘です暇です


「ウソつかないでよ暇でしょ森山リョッコの夏の終わりん口ずさんでベッドに横になってるじゃん」


「え?なんでわかるの透視能力に目覚めたの?」


「配信切り忘れてるよっ!シコリ配信とその後の歌が呪文かなにかと間違えられてるからやめたほーがいーよっ!」


ナニっ?俺はパソコンの電源ボタンをそっ押しして無かったことにした。ならないな。


「教えてくれてありがと」


「いいよっ!ご馳走さまでしたっ!エヘっ!」


「じゃあ切るわ」

また自爆してしまったので今日は不貞寝だ。寝たら大概の事は忘れられる。それは真理だ。


「ちょっと待って!あのさ!あ、明日から学校でしょ?だから最後の夏の思い出作りの為にちょっと出かけたいなって思って!」


「出かける?もう夜だよのぞみん」

寝て忘れたいのだ僕は


「聖夜くんの近所に幽霊が出る配水場が有るんだって!イカない!?」


幽霊?んなもん居るわけないでしょ。人間がお化けになるならこの世界お化けばっかだろ。輪廻転生に第8世界、ないとも限らんが。


「その話詳しく聞きましょ、んで?」








んかわけでやって来ました近所の浄水場。配水を担うその建物の外観は古びた塔で住宅街の片隅にポツンと建っている。この見た目は魔女の塔と言わんばかり、こりゃ何か居ますわ。


「こわ~」


「聖夜くんビビってる笑」


「ハアなんでやねん朽木くんがバビつくわけないやろ」


いや、怖いんですが。煽ってくるのぞみんと好感度MAXだがやらせてくれない黒ギャルの彩愛っちと護衛達と共に入り口を探す。他の女達は夏休みの宿題をやっていて来れないのだそうだ。委員長までやってないとか言われた時はバビッた。んなことは置いといて事前情報の通りに狭い通路を歩いて外壁をチェックすると


「ほんとだ、こんな所に穴が空いてる」


「まとめサイトに載ってあったからねっ!はいろはいろっ!」 


なんつって1番乗りで懐中電灯に光を点けて中に入ってくのぞみん。勇気あんなあ。


浄水場の中は広大だった。汚水で腐った匂いと地下へと続く薄暗い室内に何処からともなく流れてくる水の音。現代のダンジョンは浄水場にあったのだ。違うか。


「管理者とかどうなってんだこれ」


呟くも、昔は草臥れて放棄されたダンジョンじゃない浄水場なんて普通にあったらしい。


「都会にこんな浄水場があるなんて不思議発見やね、だけどうち幽霊おばけなんか出て来ないにスーパーふとし君人形かけるわ」


俺の呟きを拾ってくれるスーパーイケてる黒ギャルの彩愛っち。答えにはなってないが好意にビンビン来ちゃうね。


「まあお化けなんているわけないよ・「キャーーーーー!!!」なっ?」


先を歩いてたのぞみんから悲鳴が、まさかまた作者の雑なフラグだったのか?!



「どうしたのぞみんっ!?」


のぞみんの居た部屋に駆け付ける。のぞみんが指ですその先に居る謎のナニか、黒いフードを被り蒼色の髪が覗いてるがボヤけた姿。目は梟の様に真っ赤で暗いオーラを身に纏い佇んでいる。


「な、な、なんだココココイツはッ?」


「おっ、お化けっ」


「・・・・(ポケェ)」彩愛


もちつけ、まだ慌てる時間じゃない、母さんにおねだりして買ってもらった3000万の腕時計を見て気持ちを落ち着かせる。時刻は10時、子供が寝ないと親に怒られる時間だ、違うそうじゃない、落ち着け


テンパってると俺達の前にスッと立つ護衛の者共。嫌だ惚れちゃう


「朽木殿、私にお任せを」キラリン


「除霊・・ヨロシク・・・」


助さんが宝束(エネルギー弾)を放とうと力を込めると幽霊らしき存在が慌てて口を開いた


「まっ!待てっ!それはよくないモノだっ!」


お前がよくないモノだろと突っ込みたい


待ったをかける幽霊


構わずぶっ放す助さん


黒いお化けに真っ直ぐに突き進む光の束、その光がお化けの目の前から出た黒い障壁で屈折して天井へと突き抜ける。


「ちっ障壁持ちだ代われ助平私がヤる」


なんつってる三戸さんと、違う話を聞けなんつってる幽霊らしき存在。


「ちょ、ちょっと待って三戸さんこの人話あるんじゃない?」


あやかしは信じたら駄目なんですよ朽木さん、なので天に返すの1択です、私がやります」


「可哀想だからっ!ちょっとまって・ん?」


可哀想、お化けが可哀想だからなんつった俺に重く肩に伸し掛かった黒い影。言霊により俺に吸い寄せられたのだ、お化けが俺の肩越しに囁く。


「震えて眠れ」


「不味いっ!角村頼むっ!」


「『無敵むてき』・・・」


角さんが魔法スキルを使い引き離される幽霊、俺は尻餅をつく。幽霊は角さんにタコ殴りにされて床にゴロンと転がった。フードが取れて素顔が晒される、その顔は美形。

もうやめたげて、もうヤメてくれと泣きが入るまで殴るのを止めない角さん。7人にボコられて泣きが入った自分を思い出す。アレは夏の夜、ネットで知り合ったシャカって男とCLUBに行った時だ。若かった。そしてイキってた。男女のグループが居て女に声かけたら男がやんのかコラって言ってきたな。喧嘩売られるの久しぶりだった。坊主でガタイの良い俺に喧嘩売ってくるやつ居なかったから本物達を知らなかった。ハングレだった。7人〜10人、数はそんぐらいだった。こっちは俺一人。シャカはどこかに消えてた。そんで俺はオシャカにされた。マジバナだからトラウマだ。ってんなことはどうでもいい。


「角さんそんくらいでええからっ!」


焦って関西弁になてまう俺


「了解・・・」


「おい妖、お前朽木さんに何をした?呪いをかけただろう?解け」


三戸さんが幽霊を縄で縛りながらそんな事を言う。幽霊って縛れるんだとか思ったが俺に、呪いをかけただと?やめたげて


「えっ、呪いですか三戸さん」


「うん、朽木さんこいつらは人を呪う。可哀想だとか絶対思っちゃいけない存在なんだ」


「ヘヘっ、呪いは成った、私にしか解けないよ、早くこの縛った縄を解きな朽木聖夜」


体が勝手に動く。幽霊の縄を解こうとする俺を羽交い締めにして抑える助さん。後頭部に当たる胸圧が凄くて一瞬で勃起した


俺のち◯こが丁度幽霊の顔の目の前に来る。

そんなち◯こを見てお化けは驚愕の表情をした


「デカっ!?なんだそのチ◯コ反則だろ、私とねんごろしなっ!朽木聖夜っ!」


命令口調のそのスッピン顔、妖と言えどもデラべっぴんなお顔に喜んでと言いそうになった。


「朽木殿!?力が強いっ、ちょっと角村手伝え」アセリン


普段より3倍強い力が出てチャックを開こうとしたが助さん角さんにより阻止される。無念


宇宙人に捕まった人みたいになった俺の周りに集まり全員が焦りながらも相談する。幽霊には口に猿轡を嵌めてなんとかなった。


「これは、厄介だぞ、こいつを天に送ると魔界から魔物が朽木さんを探しに来るよな?」

「確実・呪いに惹かれる・・・」

「朽木殿の母上のスキルならなんとかなるんじゃないか?」ピカリ

「助平うちらが殺される却下だ」

「聖夜くんならほっとけば大丈夫じゃないかな?」

「アホかっ!うちの近所の寺で除霊したらええやん」

「いや、彩愛久藤さんこいつの蒼髪、プラチナ国出身の幽霊だ、エクソシストじゃないとキツイぞ」

「だったら三戸さん、呼んだらええやんプラチナ国から?やんな?」

「それがこの妖かなりヤル奴だ、助平のスキルで一撃で倒せないならプラチナ国のエクソシストでもキツイかもしれん」

「大変やん」

「アハハっ!聖夜くんオワコン、ワロタ」


のぞみんは彩愛っちにボコボコにされてそこら辺の幽霊よりも酷い顔になって失神して幽霊の隣に寝転んだ。


「どうするかな・・・」


三戸さん以外全員が押し黙る。助さん角さんは未だに俺を抱きかかえて何故か興奮してるし、彩愛っちは殴り終わった興奮で肩で息をしてる。猿轡をされて沈黙してた幽霊のその隣には失神したのぞみんが。そんなのぞみんが口を開いた。


「朽木聖夜、我と契約しよう、それならば呪いを解いてやる」


「のぞみん?」


「今は魔龍希美なる体を使ってる、隣の私が本体だ、理解したか?」


のぞみんが立ち上がり顔面を腫らしながら隣で寝てる幽霊を指差す


憑依してんのか


憑依した状態じゃ言霊で俺を操れないのは好都合


ないよな?自殺しろとか言わないでおくれよ


「普通に呪いを解いてくれませんか?角さんに拷問させてもいいんですけど」


なんつって自殺した方がマシだと思える言霊を放つ


幽霊わたしらは痛覚無効だ、気持ちいいのはわかるんだぞ、妬みや恨みで幽霊になった奴等はその恨み辛みが糧になるが私は違うのでな、因みに私は処女だ」


聞くところによるとこんな話だった


彼女の糧はここのダンジョンを守る事。


独占欲だ


プラチナ国から出稼ぎに来た彼女、名前はゾーイ・ザ・ダークネス。長いのでネスと呼ぶことにする。ネスは冒険者として活動してた


朝誰も起きない時間に起きて働いた、冒険者と言えば鼻で笑われスキル無しだと言うと冷やかされた。ネスはスキル無しだった

彼女は努力した。剣と通常魔法、朝早く起きて剣を振り、女なら誰でも使える魔法の威力を高める。10分で1万払う自己セミナーにも行った


諦めはなしだぜ、死ぬまでに間に合え。


そんな思いを胸に頑張ったネスはA級冒険者になった、しかし上には上が居る。時間だ、時間が足りない。剣を振る時間、飯を食べる時間、魔法を放つ時間、無駄なものなんて無いのだ。時間は平等で、そんな同じ時を生きてる筈なのに。私は時速120kmで道を走ってるのに隣で330kmを出して追い抜かす様な女達が私を嘲笑うんだ、なんつって笑った。


そしてある日ダンジョンで死んだ。新宿区百人町に有るココのダンジョン、未発見のダンジョンらしい。ダンジョンを見付けたら報告の義務が冒険者には有る。そんな義務より誘惑に負けた。私が先に、私が先に見付ける。宝を、モンスターの討伐を、名声を。独占したい。

名声を求めて死んだ彼女は幽霊になった。

この場所から離れられない、土地に縛られ名声を求めて3年経った。

此処に近付く女達からダンジョンを守り棲息してると言う


それは息してるのか?話が一段落して俺はネスに問い掛ける

「ネスは何になりたかったんだ?」


「私は、私は多分凄いって言われたかったんだ、皆に認められたかったんだと思う」


自分が凄くないって認められる日がいつか来る。それは今だ。


「死んでも化けて出て思いを残してるんだろ?ネスは偉いよ、俺はネスの事を認めてる。だから他人にも優しくしろよ、独り占めの我が儘は子供のする事だぜ?」


他人を認めないから自分が偉いと思っちゃうのだ。他人に優しくすると自分に返ってくるこの世の心理。


「あ、ああ、ありがとう朽木聖夜、契約は成った。今後とも宜しく、な」


なんつって倒れるのぞみん。

と同時でモゾモゾと動く幽霊もといネス。んーんー唸ってる。猿轡とれってか?


アレッ?いい事言ったつもりだったんだが、勝手に契約された俺は何となく肩の力が抜けるのを感じた。気の所為とも言うが。ネスの縄を解くように三戸さんに伝えた


ほんで帰り道。5人と1幽霊で帰路につく。あら?誰か忘れてる気が、気の所為か。


「ネス、憑依した状態でも俺に命令出来たの?しなかっただけ?」



「その時を想像して奮えて眠ってくれ」



なんつってあやふやにされたが俺の股間は震えて居たので期待して帰宅した。



家族に幽霊が一人増えました


暗闇を掻き分けて情熱を滾らせ、

諦めは無しだから死ぬまでに間に合え


もし、死んだとしまったとしても

夢を捨てなければ夢は幽霊を捨てない


働くのが生きる為ならば生きるのは何の為?


そう、模範の答えは要らない、もう反省してるならばマルをつけてあげよう、花丸だ


暗闇のゾーンに入ったネスを救った自分にも花丸を点けて夏の終わりの夜空を見上げる。でんかいまん丸のお月様が俺達をずっと見ていた





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