アロマの世界
「「ごちそうさまでした」」
手を合わせ、食事を終える。
途中こそ気まずい雰囲気があったが、大体満足だ。
「さて、志乃さん次はどこに行きますか?」
「えっと……私の行きたい所でもいい?」
「もちろんです。志乃さんの事、もっと知りたいですし」
「……ありがとう」
お互いずっと先生と生徒という関係で、プライベートな話もせず勉強ばかりの毎日。
志乃さんの好みに俺は興味がある。
「なら、いいかしら? ちょうど寄りたい所があるのだけど」
「はい!」
「ふふ、行きましょう」
柔らかい笑顔を俺に向け、志乃さんは目的の場所まで歩き始めた。
◇
「着いたわよ」
「えっと、ここは……」
志乃さんに案内されるがまま、着いたのは色んな小瓶や煙の出る機械が置いてある店。
なんだろう、色んないい香りがするな。
「ここはアロマオイルの専門店。週末とか少し時間がある時にアロマで癒されてるの」
「へー! アロマですか」
志乃さんはアロマが好きなんだ。
名前だけ聞いた事があるけど、どんな風に使うんだろう。
「色んな香りのオイルがあって、それをディフューザーにセットするの」
「この小瓶ですか?」
「そう。オイルと言っても種類が豊富なの。柑橘系とかハーブとか」
へー。色んな種類があるんだ。
さっき志乃さんはオイルの系統を教えてくれたけど、一つの系統でも更に種類がありそう。
専門店がある事を踏まえると、アロマの世界は奥が深いのだと実感する。
「どれもいい香りですけど、全然違いますね」
「気分によって変えたりするの。私は柑橘系とかお気に入りなのだけど……」
そう言いながら、一つの小瓶を手に取る志乃さん。
「オレンジ、いいわね」
「あ、ちょうどディフューザーにセットされてるみたいですよ」
「それは気になるわね……うーん」
目をつぶり、香りを楽しむ。
「……」
オレンジ特有の爽やかな果実の香り。
強すぎない甘い香りが心地よい気分にさせ、癒しを与えてくれる。
「いいでしょ?」
「はい、香りで癒される理由がなんとなくわかりました」
「私も気に入ったのよね……買っちゃお」
志乃さんも気に入ったらしい。よかった。
手に持った柑橘系のアロマオイルをそのままレジに持っていった
「私の家、他にも色んなアロマがあるのだけど……どう?」
「是非! 気になります!」
「そ、なら今度用意するわね」
なんだか嬉しそう。
好きなものを共有できたからだろうからか。
俺自身も志乃さんの好みを知れて嬉しい。
想像する。
志乃さんの家で志乃さんとアロマに癒される姿。
……最高だな。
◇
「私の好みに付き合ってくれてありがとう」
「全然いいですよ。俺もアロマに興味が持てたので」
買い物後、満足そうな志乃さんと共に店を出た。
「ふふっ……さて、次は優馬くんの番ね」
「え? 俺?」
「ええ、行きたい所とかない?」
「行きたい所ですかー……」
どこかあるだろうか。
普段は通販で全てを済ませるインドア人間な俺。
外で何か買い物をする事があまりない。
まぁ暇さえあれば、勉強か配信を見ていたからだけど……
「大丈夫よ、色んな所を回りながら考えていいから」
このまま何もないというのはよくない。
ぶらぶらしてデートが終わる、なんていうのは思い出としてもアレだし。
それに志乃さんに申し訳なかった。
何かしら行き先を決めたいけど……あ
「ゲームセンターとかどうですか?」
「ゲームセンター、ね……あまり行ったこと無いけど、楽しそう」
「よかったです。では、行きましょうか」
「えぇ」
とりあえず行き先が決まった。
ゲーセンはたまーに行くと楽しいんだよね。
デートでも定番の場所だし、無難な選択肢だったと思う。
こうして俺たちはゲームセンターへと歩みを進めた。
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