先生の…膝枕?

「え、えと……」


 どうしよう。正直に答えるべきなのか。


「ネットに、性癖について聞いておくといいって……恥ずかしい?」

「いえっ、その、あの……」


 性癖とは裏の本性。

 俺自身のディープな価値観を、志乃さんに伝えるべきかすごく悩む。

 

「もしかして私には無いもの?」

「そんなことはありません!!」

「え」

「あ」


 やばいやばいやばい。

 つい熱くなってしまった。

 こんなの余計気にしてしまうじゃん。


「私は引かないから……安心して」

「志乃さん……」


 ……言おう。

 さっさと言ってお互い楽になろう。

 息を整え、俺は決心した。


「えと……足、です……」

「……足?」

「はい……」


 ……恥ずかしい。

 己の恥とも言える秘密を大好きな人に明かすなんて。

 引かれたらどうしよう、とかそういうのじゃない。ただただ、恥ずかしい。


「私の足……見てたの?」

「えっ」

「答えて?」

「あ、はい……」


 志乃さんはよく膝上のタイトスカートを履いている。だから、スカートの外に出た足がよく見えてしまう。  

 おまけに季節等によって、靴下やタイツの色や濃さも変わるわけで……


「ふーん……」

「何、ですか?」

「優馬くんも、男の子なのね……」

「……」


 セリフだけなら誘惑しているように見えるだろう。

 だが実際の彼女は、足元を手で抑えながら、真っ赤な顔をうつむかせている。


 志乃さんは恥ずかしい。

 俺も恥ずかしい。

 なんだこれ。


「……もう少し短い方がいい?」  

「いや、長いのも好きです……」

「露出が少ない方が好きなのかしら?」

「う、ま、まぁ……」

「スカートはタイトなのとフレアなの、どっちが……」


 さっきの質問攻めが別の意味で破壊力を増している。

 はい、ともいいえ、とも言えない。

 歯切れの悪い答えばかり。

 別の意味で殺されそうだ……


「えと、なんで気になるんですか……」

「優馬くんだから、なのと後は……」

「後は……?」

「優馬くんの理想に、なってみたい……」

「……」


 はい、殺されました。 

 大好きな人にこんなことを言われて昇天しないヤツはいません。


「あ、恥ずかしかったかしら……ごめんなさい」

「いえ、大丈夫です……」


 無自覚な誘惑にドギマギさせられる。

 だが、その誘惑に底はないようで。


「……膝枕する?」


 女の子座りから正座に変えぽんぽん、と

 薄めのタイツを履いた足を手で叩く志乃さん。


「……いいんですか?」

 

 志乃さんの膝元に、俺は頭を乗せた。


「いい、わよ?」 


 更なる追撃。

 俺も麻痺したのか素直になったのかわからない。

 

「……どう?」

「きもち、いいです……」

「そ、よかった」


 薄いデニールのタイツが頭にこすれる。 

 おまけに女性特有の柔らかさが非常に気持ちよかった。


「……よしよし」

「……撫でるの好きなんですか?」

「わからない……ただ、かわいいなぁって」


 年上の女性に可愛がられる気分は悪くない。

 というか、大人の女性の経験と包容力にドキドキしてしまい、されるがままになっているだけだが。


「履いてほしいものとかあったら、言ってね?」


 一瞬心臓が止まる。


「靴下ですよね……?」


 そんな訳ないのに。

 不純な俺は靴下とは別の履くものを想像してしまった。


「えぇ、そう、よ……っ!!」

「あ」


 あ、気づいちゃった。

 これは完全に俺が悪い。

 今まで足の話をしていたのに……非常に申し訳ない。


「そ、そそそそっちも……こ、この、好みとか、あったら……うううう……」

「無理しなくていいです……本当にすみません」


 顔が真っ赤になってしまった……

 志乃さんって結構照れやすいよな……と思いながら、俺は膝枕を堪能するのだった。

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