色々聞かせて
「ふあぁぁ……よく寝たなあ」
カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ます。
「あ、まだ志乃さん寝てた……」
すうすうと可愛らしい寝息を立てながら眠る志乃さん。
天使みたいに綺麗だ……このまま眺めていたい。
「昨日は志乃さんに甘えすぎてたなぁ」
勉強だけでなく、晩御飯もごちそうになり、あげく志乃さんよりも先に眠ってしまった。
「そうだ、朝ご飯は俺が作ろう」
志乃さん程上手く作れるか自信はないが、俺だってそれなりに料理をしてきた。
一人で過ごすことが多い分、いつの間にか自炊が習慣になっている。
少しでも恩返しができるなら、と俺は台所へと向かった。
◇
「おはよう……随分と早いわねって、え?」
「あ、志乃さん。おはようございます」
それから三十分後、志乃さんも起きてきた。
「これ、優馬くんが作ったの……?」
「はい、昨日は志乃さんが晩御飯を作ってくださったので、今日は俺が」
作った、と言ってもシンプルなものだ。
卵焼きにほうれん草のおひたしに味噌汁。ご飯は志乃さんの冷蔵庫にあったので温めた。
「そんな……私は大した事をしていないのに……ありがとう」
「いえいえ。さ、早く食べましょう」
「えぇ……」
机に料理を並べ終わり、お互い手を合わせる。
「「いただきます」」
早速、志乃さんがメインの卵焼きに手を付ける。
口に合うといいな……
「っ! 美味しい……」
「本当ですか!」
よかった、口に合って。
「優馬くんの卵焼きは甘いのね」
「はい。志乃さんのとは違いますか?」
「私のは甘さが控えめで……でも、これは美味しい……凄く食べやすい」
「そんなに気に入りましたか?」
「えぇ、レシピを教えてほしいくらいよ」
「俺のでよければ、是非」
それから志乃さんはどの料理も美味しそうに食べてくれた。
たまに帰ってくる親戚もそうだけど、自分の料理で喜んでくれる姿はやっぱり嬉しい。
作ってよかったと心から思える。
「ごちそうさまでした……片付けは私がするわ」
「いえいえ、それくらい俺が……」
「だめ、優馬くんは休んでて」
「はーい」
本当に真面目な人なんだな。
俺はお言葉に甘えて志乃さんの片付けを見守っていた。
◇
「志乃さん、今日は何か予定はありますか?」
片付けと着替えが終わった後、志乃さんに話しかける。
志乃さんは教師、授業の準備など色々ある。
なので忙しそうだったら大人しく帰るつもりだったのだが……
「そうね……今日は一日優馬くんの事が知りたい」
「え?」
意外すぎる一撃を食らった。
「私、優馬くんの事を全然知らない……だから、今日はゆっくりお話したい……」
「俺、も……志乃さんのこと知りたいです……」
「ふふ、そうしましょ」
一日中、志乃さんと入れるなんて。
しかも俺の事を知りたいなんて!!
けど、志乃さんは俺のどんな所が気になるんだろう……
◇
「好きな食べ物は?」
「オムライス……」
「趣味は?」
「配信を見る事……」
「休日何してるの?」
「配信を見ながら勉強……」
なんだろう、普通の質問コーナーになってしまった。
「あの、志乃さん」
「何?」
「志乃さんは楽しいですか?」
「? 楽しいわよ?」
ならいいんだけどね。
当たり障りの無いことしか言えてないから不安だった。
「優馬くんは……楽しくない?」
「へ、いえいえ!! これでいいのかと思ってて……」
「全然いい……真島くんの知らない所がいっぱい知れたから」
「な、ならよかったです……」
僅かに口元をあげ、微笑む志乃さん。
普段あまり感情の変化がないからか、こういった一面にドキッとしてしまう。
「えっと、次は……そう、スマホに」
「え?」
「スマホにメモしてたの……いっぱい聞きたいし忘れたくないから」
「可愛いですね……」
「からかってるの……もぉ」
「いてっ」
軽くデコピン。
そういう所が可愛いんだよなぁとしみじみ思う。あんまり言い過ぎると拗ねそうだから黙るけど。
「まあいいわ、次……っ」
「どうしました?」
「優馬くんの……性癖」
「!?」
いきなりぶっ込んで来ましたね!?
気楽な質問コーナーがディープな内容へと早変わりする。
顔を赤らめてる志乃さんと同じように、俺も妙に緊張してしまうのだった。
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