第82話

「舞佳、今日の体調は?」


「舞佳、今日の宿題は?」


「舞佳、今日は学校どうだったの?」


「舞佳、さっき一緒にいた子は誰?」


 鈴が明るくなるのは、舞香にとっても嬉しいが…

 時々、様子がおかしいと思ってしまう。

 学校のことや友達について、たくさん質問してくるようになった。


 …きっと、学校のこともたくさん知りたいんだろうな…

 お母さんは、お父さんの分まで、私のことを見ると決めたのだから…


 最初はそう思っていたが…やはり慣れない。

 どうしても、鈴の様子がおかしいと思ってしまう。

 そして、無理して笑っている気がする…。


 でも、お母さんが大丈夫って言うなら、大丈夫なのかな…


 そう思って過ごした。






 数ヶ月経った頃。


 学校からの帰り道。

「舞佳さん、一緒に帰っても良いですか?」

「はい、良いですよ…!」

 舞佳は、すっかり仲良くなった真可と一緒に帰っていた。

 今日も流行り物や勉強について話した。


 それで…真可と別れた後だった。


 家に着くと、鈴が飛び出してきた。

「舞佳っ!」

「わっ!ど、どうしたの…?」

 鈴に両腕を掴まれ、舞佳は思わず後ずさった。

「舞佳…もしかして、いじめに遭ってたりしてない?」

「え…い、いや、遭ってないけど…」

「本当⁉︎」

 詰め寄る鈴の手に力が入り、舞佳の腕が締め付けられる。

「うん…本当…だけど…い、痛い…お母さん…」

「そう…なら、良いわ」

 鈴はパッと手を離した。

「テレビ見てたら、いじめについて取り上げられていて…心配になっちゃって…」

 鈴は手招きをして、舞佳を家に入れた。

「そ、そうなんだ…」

 そう言った舞佳だが、内心不安だった。


 …お母さん、大丈夫かな?


 なんとなく…なんとなくだが…過干渉になってきている気がする。

 頑張りすぎた鈴の心が壊れてしまうのでは…そんな気がした。


 でも、気のせいだと思いたい自分がいた。

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