第62話

「きゃあ!!!」


「わあっ!!!」




 電気のような音が爆発し、キラッと光る鉄格子…

 そして、ビリビリと痺れる手のひら。


 舞佳は声を上げると、慌てて手を離し、後退りした。

 そして、フラフラと倒れ込んだ。


 電流が鉄格子に流れたようだ…

 …ふと、錐で手のひらを抉った時のことを思い出した。

 だが、電流でビリビリしているというより……人の手で叩かれているときに似ているような痛み…

 だが…かなり痛い…。

「い、痛い…痛い…!!」

 手をギュッと握って、痛みに耐えるように、身体全体を震わせた。


 …な、何が…⁉︎


 顔を上げる舞佳…その目の前には…


「ま、真可さん!!!」


 横たわる真可がいた。


「あ、う…うう…う…」


 苦しそうな声を上げながら、腕や足を…ガクッガクッと震わせている。


「う、嘘…真可さん!真可さん!しっかり、しっかりしてください!!!」


 舞佳は駆けつけようとしたが、光る鉄格子は二人を分け隔てる…


 真可はやがて動きが鈍くなっていき…

 ピタリと止まった。




 真可の身体は、一瞬で黒ずんでいった…




 そして、灰になって崩れていった。






 灰は真っ白な床に広がると…


 消えずに残った。


 黒いインクのようなものを流し、白かったはずの床を染めていく…。






「あ…あ…あ…」

 舞佳の手が震えていた。


 …また、消えた…消えてしまったの…?

 待ってよ…待ってよ…

 どういう事なのよ…この状況…!!!






「あ、あれ、舞佳さん…?」

「まいかおねえちゃん!!!」

「舞佳!」

「舞佳ちゃん!…なんで、捕まっているの?」

「舞佳さん?どうして、ここに?」


 急に、舞佳を呼ぶ声がたくさん聞こえてきた。


「み、みなさん…⁉︎」


 突如として、舞佳の目の前に現れたのは…


 消えてしまったはずの…


 灯真、千太郎、和花、傑、楚世歌、縁人…


 みんなだった。


 消えてなかった、彦、定も…


 仲良く、一緒に過ごしていた…あの時の…


「おい、舞佳…ここはどこなんだ…」


 最初に近づいてきたのは、傑だった。

 舞佳は身体を起こし、両腕を伸ばした。

「来てはダメですっ!!こ、来ないで…!!!」

「え…?」

 傑は不思議そうな顔をしながらも、足を止めた。


 …来ないで…この鉄格子に触れたら…


 そう思った。


 だが、舞佳の行動は、この部屋では関係ないようだ。




 次に光ったのは、鉄格子から外側の床…全体だった。


 床に火花が飛び散るほどの電流が流れた。


 餌食になってしまったのは…

 鉄格子の外側にいる舞佳以外の人たちだ。


「みなさん、逃げて…!」


 舞佳は声を張り上げる…だが、この部屋に出入り口などない。




 ビリビリビリビリビリ………!!!!!!!!!!




「うわあ!!」

「きゃー!!!」

「何?何…⁉︎」


 みんなが、次々に悲鳴を上げた。


 そして、足元から焼かれていくように…灰になっていった。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイいたい痛いイタいいタイ痛イ痛いいたいいたい痛いイタイいタい!!!!!!!!!!!!!!」




 誰の声かは分からない…

 だが、誰かはひたすら焼かれるような痛みを感じながら、灰になっていった。




「やめて!もう、やめてよ!!!!!」

 見ていられなくなった舞佳は、叫んだ。

 誰に言っているのかすら、分からない。


 この状況が終わって…!!!




「もうやめて!もうやめてっ!!!!!」


「やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!!!!!!!!!!」

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