第61話

 ……………




「あれ…ここどこ?」


 気が付いた時、そこは真っ白な部屋の中の鉄格子の中で。

 その中に、自分は倒れていた。


 自分の足元には、スマホが置いてあって。


「何が…起きたの?」


 ゆっくりと身体を起こし、立ち上がった。

 だが…視界に違和感があることに気づいた。


 あれ…視線が低い…わ、私…小さくなってる…?

 な、何…?私、今、どうなっているの?


 周りを見渡す。

 鏡など、自分の姿を映すものは無い。


 …ならば……スマホを使うしかない。

 自発的に飛び跳ねた…あのスマホを。

 触れるのには…勇気がいるが…


 舞佳は恐る恐るスマホに触れた。


 何も、起こらない。


 舞佳はスマホを掴み取った。

 カメラを起動し、自分の姿を映した。




「こ、これ…!どういうこと…?私、私に何が起きてるの⁉︎」


 そこに映ったのは、舞佳が部屋に閉じ込められる前に、一階の廊下で見た…

 あの家族写真に写っていた女の子だった。


 …つまり、舞佳は…


「え、わ、私…子どもになっちゃったってこと…?なんで、急に…!」


 カタン…


 スマホが床に落ちた。

 スマホを持っていた舞佳の”いつもより小さな”手は、小刻みに震えている…


 その手には…包帯が巻きつけられていなかった。

 今までに出来た傷も、全て無くなっている。


「ねぇ…どういうこと?どうして、こうなったの?何が起きたの、これからどうなるの?」


 …私、元いた場所に帰れるの?


 舞佳は頭を抱えて、うずくまった。






「舞佳さん!」


 突然、その声は聞こえた。


「きゃ…!」


 思わず、ビクッとして声を上げた舞佳。

 だが、その声は聞いたことがある声で…

「この声…もしかして…!」

 舞佳は鉄格子の方へ、顔を向ける。


 そこにいたのは…




 真可だった。




「ま、真可さんっ⁉︎本当に、真可さんなんですかっ⁉︎」

 舞佳は、鉄格子の近くに駆け寄った。

 …夢じゃない、彼女は、真可だ。


 良かった!真可さん、生きていたんだ!


「はい、そうです…」

「真可さん…無事で良かったです…!」

 舞佳は嬉しくなり、真可と手を合わせるように、鉄格子に触れた。

 背が少し縮んだおかげで、中腰にならなくても、真可と手を合わせることができる。

「気づいたら…ここにいたんです…」

 真可はキョロキョロと周りを見渡している。

「…ここは、どこなんですか?」

 そう訊く真可に、舞佳は申し訳なさそうに首を横に振った。

「すみません…私も、よく分からなくて…」

「ここ…どこなんでしょうね…私、確か、ここにくる前は…」

 真可は思い出そうとして、うつむいた。

「真可さん……無理して思い出さないでください…」

 舞佳は首を振った。

 あの時の光景を、思い出させるのは…どうしても、気が引けた。

 舞佳が真可の顔を覗いた…。






 ビリビリビリビリビリ………!!!!!!!!!!

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