第59話

 舞佳の身体が、その部屋に入り切った時だった。




 …ガチャンッ!!!


 ドアが勢いよく閉められ、大きな音が鳴った。


「きゃっ…!」

 耳を塞いだ舞佳…

 だが、嫌な予感がして、すぐにドアに駆け寄った。


 …閉じ込められた…⁉︎


 急いで、ドアノブを回す。


 ガチャ…!ガチャガチャ…!


「…あ、開かない…!」

 …少し、遅かったようだ。

 何度も何度も押し開けようとするのだが、一向に開かない。


 …でも、どうして?内鍵は開いているのに…!


 どうやら、何らかの方法で外からドアが閉じられてしまったようだ。

「開けて…開けてください…!!」

 ドンッドンッとドアを叩いて、声を張りあげる。


 向こう側から応答は無く…ふと、耳を澄ました。


 外からクスクスと笑うスズとサチの声が聞こえる。


「これで、もう逃げられないわね…」

「舞佳は、まだ洗脳されているはず…ゆっくりゆっくり解いてあげましょうね…」


 そう話していた…。


 タン、タン、タン…


「…この音…!」


 階段を下っているんだ…!


「待って!!開けて!!!!!」


 舞佳は、必死に声を張り上げた。


 ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!


 嘘でしょ⁉︎

 行かないで!どうして閉じ込めるの⁉︎

 私、これから何をされるの⁉︎どうしていけば良いのっ⁉︎


 不安と焦りが、舞佳を余計に掻き立てた。


 ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!…………


 ただひたすら、ひたすら、ドアを叩く音が二階の廊下に響いた。




 スズやサチがいるリビングには、あまり響かないようだ…。

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