第3章 灰と消滅

第26話

 あれから数日経ったが、スズとサチがやってくる様子はなかった。

 正直、このまま諦めてくれると嬉しいが…




「持ってきたわよー」

 リビングのドアの外側から声がする。

「ありがとうございます…!」

 舞佳がドアを開けると、和花が溢れそうなほどの段ボールを持っていた。

 机の隣にドサっと置き、ふー…とため息をついた。

「段ボールって、かなり重いのよね…」

「本当にありがとうございます」

 舞佳は頭を下げながら、段ボールに自分の荷物を詰めていった。

「おてつだいしたい」

 そこやってきたのは、灯真だった。

「あ、ありがとうございます…じゃあ、この洋服をこの段ボールに入れていってください」

「うん!」

 灯真は、舞佳の洋服を丁寧に丁寧に畳み始める。

 着々と引っ越しの準備が進む中、別室からまりかが飛び出してきた。

 自分の肩掛けバックに色々詰め込み、焦っているように見えた。

「…どうかされましたか?まりかさん」

 舞佳が声をかけると、まりかは別室を指差して言った。

「定が体調を崩したみたいで…ちょっと病院に連れて行く」

「え…!定ちゃん大丈夫ですか?私も一緒にできることがあれば…」

「大丈夫。舞佳は引っ越しの準備を進めて。その方が定も安心する」

 まりかに言われると、それもその通りだと思い、舞佳は準備に専念することにした。

 まりかも出かける準備をしながら、定のいる部屋へと入って行った。

 そして、しばらくしてから、顔色の悪い定の手を繋いで、家から出ていった。

「定ちゃん…お大事に…気をつけて行ってらっしゃい」

 心配そうにドアを見つめながら、舞佳は急いで手を動かした。




 しばらくすると、千太郎がリビングへとやってきた。

「あ、すみません…」

「はい…?」

 舞佳が振り返ると、千太郎が自分のスマホを指差した。

「ちょっと大学の…サークルで呼ばれちゃって。ちょっと行って来ますね。帰りに段ボール持ってきます」

「ありがとうございます…!」

 舞佳の声に「失礼します」と千太郎は頭を下げながら出ていった。

「行ってらっしゃい…!」

 舞佳はそっと手を振った。

 気づけば、横で和花が眠そうにあくびをしていた。

「最近、疲れやすくって…」

「ゆっくり休んでください…和花さん」






「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る