第25話

 しばらく引っ越し会議が続き…

 街中にあるマンションの一室を借りることに決まった。

 一人暮らしには充分な広さの部屋だ。


「じゃあ…段ボールとかある?」

 まりかはもう引っ越しの用意をするようだ。

「段ボール…あ」

 舞佳が「どうしよう…」と言わんばかりの顔つきになる。

「舞佳さんのことです…どうせ、全部、資源物に出しちゃったんでしょ?」

 そう言ったのは、和花だった。

「そういえば…舞佳って、学校でも毎日欠かさずに資源物出してたね」

 楚世歌も思い出して、うなずく。

「はい…ごめんなさい」

 和花の発言がピタリと当たっていたようだ…。

 張り詰めたような顔の舞佳に、まりかは優しく話しかけた。

「大丈夫。近々出かける予定あるし、その時にもらってくるよ」

 言い終わると同時に、楚世歌が「はい」と手を挙げた。

「じゃあ、私は学校で集めてる段ボールを貰ってくるよ」

 だが、この意見を聞いた和花は

「ちょっと…あれは、学校の生徒会やボランティアで使う物よ?」

 と、楚世歌を止めた。

 しかし、それに対し楚世歌は平気そうな顔を見せた。

「大丈夫、大丈夫。使い終わったら、また出しておくので」

 すると、楚世歌は自分の人差し指を口に当てて、明るく意地悪な顔をした。

「あっ、先生、秘密にしておいてくださいね?」

「あー、もう…仕方ないわね…」

 和花は頭を抱えながらも、渋々うなずいた。

 隣で「じゃあ、僕も」と縁人が小さく手を挙げた。

「あ…良いんですね…」

 と、舞佳が一言。

 そのとき、最後に千太郎が

「あの…俺、結構箱買いするので持ってきますね」

 そう言ってくれた。

「ありがとうございます…!」


「でも、今日は念のため外出は控えようね」

 まりかがそう言いながら、チラシをたたんだ。

「今も見られてるかもしれないと思うと…怖いね」

 楚世歌が身震いして見せる。

 周りも「そうだね…」とうなずいた。

「あっ」

 その時、楚世歌が手をポンッと叩いた。

「舞佳、引っ越し先でバイトとか見つけた方が良くない?」

「そういえば。そうですね、調べてみます…」

 将来に向け、貯金も必要。

 そして、外で様々なものと触れ合うことも必要。

 引っ越した後も、外出は危険が付きまとうが…家に引きこもるわけにはいかない。

 いずれ、大学にも復帰しなければ…

「人を笑顔にできるお仕事…頑張ってね!」

「ありがとうございます…!」

 舞佳は、早速スマホをタップした。


 様々なサイトを見ていて、少し緊張した。

 また面接を受けに行かないと…

 そんなことを考えると、不採用通知が思考をかき混ぜてしまう。

 あれが、また届くかもしれない…

 …バイトはもっと早いうちに始めて、面接にも慣れておいた方が良かったかもしれない。

「あれ…私、よくアイドルの面接受けようと思ったな…」

 ふと、呟いた。

 面接に慣れていない状態で、アイドル面接という…難関な面接に挑んだのだ。

 どことなく、自分が自分でないような気すらしてくる…。

 何故か不安になってしまい、メールを開いた。




『受信メール』


件名:【選考邨先棡のご連絡】繝悶Ο繝�し繝�繝励Ο繝繧ッ繧キ繝ァ繝ウ




田谷舞佳様


繝悶Ο繝�し繝�繝励Ο繝繧ッ繧キ繝ァ繝ウ、採用担当の讚サ莠�と申します。


この度は、数ある企業の中から蠑顔、セへご応募頂きまして、誠に縺ゅj縺後→縺�#縺悶>縺セ縺吶�

また先日は蠑顔、セまでご足労頂き、縺ゅj縺後→縺�#縺悶>縺セ縺励◆縲�


譖ク鬘�選考の邨先棡をお伝え致します。


面接でのお話を踏まえ、社内にて厳正な選考を行った邨先棡、

誠に残念ながら今回はご期待に添えない邨先棡となりました。


螟ァ螟画$邵ョではございますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。


蟆�、お預かりした応募譖ク鬘�につきましては、履歴書に書かれておりました住所に返送させて頂きます。


田谷舞佳様のより荳螻、縺ョ縺泌▼蜍昴→縺疲エサ霄阪r蠢�h繧翫♀逾医j逕ウ縺嶺ク翫£縺セ縺吶�

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る