第14話

 作り始めて、一時間程経った。


「できたよー!」

 灯真の大きな声と共に机の上に並べられたのは、白米やみそ汁にサラダや炒め物。

「美味しそーーー!!!」

「おー、どれどれ…」

「美味しそう!上手だね!」

 リビングに歓声が巻き起こった。

「白米は、灯真さんが炊いてくれたんです」

「ぼくがやったんだ!」

 舞佳の隣に、灯真がちょこんと座った。

「ありがとうございます」

 灯真に向き直り、そっと頭を撫でた。

「えへへ…!」

 何とも言えないくらいの明るい顔で、灯真は笑った。


 みんな揃って、手を合わせる。

「いただきます!!!」

 箸を持つ音、おかずを取り分ける音…カンッカンッと音が重なる。

「超美味いっす」

「美味しいー!」

「さすが、舞佳さん!」

「舞佳さんの家庭科の内申点、上げておくわね」

「これ、好き!」

「ぼくのつくったごはん、おいしい!」

「ご飯とこれを一緒にかけると良いですよ」

 一気に賑やかになり、おかずもあっという間に減っていく。

「とっても美味しい。腕が上達したのね」

 まりかは一口一口噛みしめてから、そう言った。

「ありがとうございます」

 舞佳は深々と頭を下げながら、ふと、自分は過去にまりかに食事を作ったことがあったんだな、と思った。覚えていないけれど。

 それを見るなり、まりかは

「随分とニコニコ笑うようになったね、素敵よ」

 そう言った。

 …確かに、前よりも心は軽くなったし、表情は笑っている気がする。

「そうですね…ありがとうございます、みなさんのおかげです」

 舞佳も炊き立ての白米を口に入れた。

「美味しいっ…!」

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