第11話

 あれから、数日が経った。


 今日も、みんながリビングで過ごしている。


 前と違って、随分と賑やかになった。

 恐怖と混乱の中にいた舞佳も、今はお互いに仲良くなる人も出てきて、少しずつではあるが馴染んできている。


「おはようございます…」

 舞佳がリビングに出ると、机にはお茶とバスケットが置いてあった。

「おはよう。もう用意は済んでるよ、一緒に飲もうか」

 まりかが手招きする。

 舞佳が机に駆け寄り、座り込んだ。


「可愛いねぇ…」

 楚世歌が壁際でうっとりとしていた。定の膝枕をしているようだ。

 その隣で和花が鏡を見ていた。薄い桃色の細い縁をした眼鏡をかけている。

「…良いじゃない」

「先生、似合ってますよ」

 楚世歌が鏡越しに、和花の姿を見ている。


 千太郎は窓の外をスマホで録っていた。窓の外には、鳥が何羽か飛んでいる。


 真可がお菓子を配った。彦と灯真はそのお菓子を真っ先にほおばる。


 傑と縁人はお互いを睨みあいながら、お茶を飲んでいた。


「はい、どうぞ」

 まりかから湯呑を渡されて、いつものように両手で受け取った。

 みんなの様子を見ながら、ゆっくりゆっくり飲んでいく。

「みんな、良い人でしょ?」

 まりかはそう言った。

「…はい」

 緑茶を飲み干して、舞佳がうなずいた。

「これ、どうぞ…」

 真可のお菓子配りが、舞佳やまりかの元へやってきた。

「ありがとうございます…」

「ありがとうね」

 二人が受け取ったのは、ザラメの煎餅。

 舞佳は袋を開けて、かじった。

 まりかは、袋ごと小さく割ってから食べている。

「美味しい…」

「私もこれ好きなんだよね」

「美味しいですよね…」

 まりかが煎餅を指差し、舞佳が微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る