第10話

「…さ、続きはまた今度ね。…そろそろ帰りましょうか」

 まりかが立ち上がった。

「また明日」




 舞佳が顔を上げると、そこには誰もいなかった。

 ずっと虚空を見つめていたようだ。辺りはかなり暗くなっていた。

 …舞佳は立ち上がり、昨日のように夕食を作り始めた。

 どこを歩いても、空気を切るだけ。

 だが、昨日より現実感が強かった。さっきの…楚世歌たちの会話は夢じゃない。


 急に人が消えたり、現れたり…

 大学生の自分の前に、高校生の頃の、過去の人物が居たり…

 まだまだ訳が分からないことだらけだ。

 だが…まりかの声の通り、明日も明後日も、この状況が続くのだろう。

 最初は、とても怖かったが…今、舞佳はあの状況を楽しみにしていた。

 楚世歌や和花たちの、楽しそうな雰囲気。

 あの雰囲気に浸れるのは、舞佳にとって安心できた。


 今日もホットコーヒーを入れる。

 鮭おにぎりを握って、かぶりついた…。


 ピコン…


 スマホの通知音が鳴った。

「…誰から?」

 画面を見てみる。

 が…

「あれ…?」

 そこには、何もなかった。

 通知もゼロ件になっている…。

「え…」

 舞佳はスマホを伏せた。

 おかしい、確かに音がしたのに…ただのバグだろうか?




「良い子になってほしいだけなのに…」

「確かに…この子は、ダメな子ね。コーヒーを飲んじゃうなんて」

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