第9話
「こんな、眼鏡とかどうです?」
「ちょっと明るすぎない…?」
「おしゃれでいいと思いますけど」
楚世歌と和花が眼鏡を探している中、舞佳はしばらく黙っていた。
そっと、自分のスマホを見る。
『15:36』
時間は合っている。
日付は…
「無い…?」
表示されていなかった。
いつの間にか、設定が変わっていたのだろうか?
それとも…
「あのときって、隣のクラスで告白ラッシュが続いてましたね」
考え込む舞佳の耳に、楚世歌の元気な声が飛び込んできた。
「あら、そうだったの?」
和花が答える。
舞佳は気になって、楚世歌たちの方へ顔を向けた。
「一番すごかったのが、二人の男子が一人の女子を奪い合って、ヒートアップ
してたことがあったな…あれ、誰だったかなぁ…」
楚世歌が考え込んでいる。
「なんだ…やっぱりお前、隣のクラスの奴か」
後ろの方から声がした。
振り向くと、いつも何かを睨みつけている高校生くらいの男子…”傑”が立っていた。
「え…?」
楚世歌は、傑を見つめている。
「君…傑君だよね?」
「ああ、C組の傑だ」
「思い出した…二人の男子のうち、片方は君だったね」
威圧感のある傑に、楚世歌はさらっと言う。
どことなく…気まずい雰囲気だ。
「そして、もう片方の方は、僕だよ」
気まずい雰囲気にさらに拍車をかけるように声が割って入った。
壁にもたれかかっていた高校生くらいの男子”縁人”だった。
傑はいつものように睨みつける。視線の先は、縁人だ。
険悪な雰囲気が漂い始めている。
「それで…二人は誰が好きなのよ?」
そう訊いたのは…和花だった。
「先生…!?」
さすがの楚世歌も驚き、動きが止まっている。
「……」
「……」
訪れたのは、沈黙だった。
二人とも、すっかり黙って俯いている。
「…ふふっ、でしょうね。年頃の男の子って、皆そうなんだから」
和花は、意地悪そうな顔をした。
「教師が恋愛に口出ししてくるとか…どうかしてるぜ」
傑が座り込んだ。
「まぁ…和花先生は、学校で一番ノリにノッてる先生だからね…」
楚世歌の半分愛想笑いな声が通った。
不思議と…舞佳の胸がギュッと締め付けられるような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます