第7話

 しばらくして、バスケットの中のお菓子も少なくなってきた。

「ねぇ、舞佳ちゃん。ちょっと、これ見てよ」

 ニコニコ笑う高校生くらいの女子…”楚世歌”が、なにやら嬉しそうな顔でスマホを見せてきた。

「これは…?」

 舞佳はスマホを覗き込んだ。

 スマホに映っていたのは、とあるアイドルが実況する、ゲームの攻略動画。

 皆、ふざけたり、時に真面目にプレイをしている。

『え、今の敵、なんで倒せたの!?』

『本当だったら、ここでイベントが起こるよね』

『俺、今日の運が良いかも…これは、占い一位取ったわ』

『今日の占いだと、君が最下位だったよ』

『嘘だろ…』

 …と、こんな風に。

「面白くない?特にココとか…」

 楚世歌はニコニコして、動画をスクロールする。

 すると、その動画を後ろから覗き見する人が一人…

「ああ、この人たち面白いですよね」

 千太郎だった。

「あ、君も知ってるの?」

「はい、俺のクラスでもかなり流行ってるんで」

「そうなんだー、人気者が与える影響ってすごいよね」

 こうして、しばらく三人で動画を見続けた。

 少しすると、舞佳の傍に眠そうな保育園生くらいの女子”定”が来て、一緒に動画を見た。


 動画も終盤に入りかけた頃。

 眠くなってしまった定は、舞佳の膝枕で寝ていた。

「可愛いね、定ちゃん…」

 楚世歌は幸せそうな顔をして、フフッと笑っていた。

 ぐっすり寝ている定の顔と言ったら、こちらもまた幸せそうな顔をしている。

 …舞佳は、定の頭をそっと撫でた。

 定は嬉しかったのか、少し寝返りを打つと、舞佳の服の裾をギュッと握った。

「…!」

 離れたくない、とでも言わんばかりにくっついてくる。

 少し驚いた舞佳だが、とても嬉しくなって、また頭を撫でた。

「フフフ…」

 笑い声が聞こえ、ふと横を見る。

 楚世歌も千太郎も、顔を押さえたり、後ろを向いて笑っていた。

「ヤバイ…可愛いよぉ~」

 楚世歌の声が一層高くなっている。


 それを見た舞佳にも、笑顔がこぼれた。

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