第6話

 翌朝。


 騒々しい雰囲気に、舞佳は目を覚ました。


「ちっす、おはよう」

 スマホをタップしている男性が声を掛けた。


「おはようござ…」

 言いかけて、舞佳は飛び起きた。

「なんで…?」

 昨日の人たちが、またそこにいたのだ。

 声を掛けてきたのは…スマホを見ていた暗そうな”千太郎”だ。

「明日また来るって言ったじゃん」

 女性の声がした。

「まりかさん…?」

 まりかは、机の傍でくつろいでいる。

「お茶入ってるよ。立ってないで飲めば?」

「…はい」

 驚きも二度目になると少しなれて、まりかから差し出された湯呑を両手で受け取り、十一人の中の一人になった舞佳。

 緑茶を飲み干した。

「おなかすいちゃった」

 可愛い声がした…保育園生くらいの男子”彦”だ。

 机に目をやると、今日はお菓子が置かれていなかった。

「少し待っててください…何か持ってきますね」

 舞佳はキッチンに向かうと、棚を開けた。

 そこからお菓子を出して、バスケットに盛り合わせ、持ってくる。

「もし良かったら、みなさんも食べてください」

「おいしそう…」

 彦はゆっくりとお菓子に手を伸ばした。

 後に続いて、みんながお菓子を手に取っていく。

 …その様子を舞佳はずっと見ていた。

「舞佳も食べれば」

 まりかが舞佳にお菓子を渡す。

 パウンドケーキだった。

「ありがとうございます…」

 と言っても私のお菓子なんだけど、と思いながら、舞佳はパウンドケーキをほおばった。ドライフルーツ入りで、舞佳の好きな味だった。

「…美味しい」

「いつも食べれば良かった…」

 舞佳は呟いた。

 キッチンの棚に入っているお菓子は、食べる機会があまりない。

 今日、改めてお菓子の美味しさを知ったのだった。

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