第4話

 まりかは、舞佳を机に座らせた。

 気付けば、机の上には人数分の湯呑とお茶菓子が置いてあった。

「一緒に飲みましょ?」 

 まりかは優しく声を掛ける。

 舞佳は震える手で湯呑を持った。

 …周りの人は、思い思いにお菓子を食べたりしている。

 舞佳は湯呑に口をつけた。温かい緑茶が流れ込んでくる。

 いつも飲んでいるお茶だ。飲むと、少しだけ安心する。

「何か嫌ことがあったら、嫌とか…言ってね。隠し事なんてしない方が良いから」

 ふと、まりかがそう言った。

「え…?」

「…みんな、良い人だから」

 その言葉を合図に、周りの人がうなずき始めた。

 舞佳は戸惑いながらも、交わるようにうなずいた。

 ただただ、そうすることしかできなかった。




「これ、美味しいから食べてください…」

 舞佳の目の前に、一つのお菓子が差し出された。

 顔を上げると、ポニーテールの小学校高学年くらいの女の子がお菓子を配っていた。この子は…”真可”だ。

 舞佳に配られたのは、粉砂糖でまぶされた大福。

「ありがとう…ございます」 

 ゆっくりと手に取り、袋を開け、口に入れる。

「ん…!」

 突き刺さるような甘さに、思わず目を瞑った。

 …でも、どこか安心して、満たされる味。

「だいじょうぶ…?」

 幼い声がして、振り向いた。

 そこには、小学校低学年くらいの男の子、灯真が首をかしげていた。

「大丈夫です…ありがとうございます」

 舞佳がそう言うと、灯真は「うん」と呟き、安心したような顔で去っていった。その行き先は…机の上のお茶菓子。

 灯真はお饅頭にかぶりついた。

「おいし…」

 そう言って、幸せそうな顔をした。

「可愛い子でしょ?」

「はい…」

 耳打ちをしてきたまりかに、舞佳はそう答えた。

 …少しだけ嬉しそうな顔をして。




「そろそろ時間だね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る