第20話 親として
SIDE A. 面倒な相手
土田亜美に電話で注意してから、奈美に状況を話す。奈美が少し不機嫌そうにしているのは不思議に思うが、構わずに全てを話す。
「大変じゃない! どうしてそうなったの?」
「まあ、吉田の親は俺に問いただして、吉田は悪くないって言わせたいんだろうな」
「親としては理解出来るが、もう少し子供の方を気にして欲しいかな」
俺の話を黙って聞いていた父さんがボソッと口にする。
「じゃ、俺は担任に電話するって約束してたから、今からするけど奈美の方も土田の状況を確認しといてもらえるか」
「分かったわ」
はぁ~とため息を吐くと家電を持ち、着信履歴から学校に電話する。
何度目かの呼び出し音の後に『ガチャ』と音がして繋がる。
『もしもし、古田ですが?』
学校名を言わないんだなと思うが、ここは突っ込まずに話掛ける。
「古田先生、田中です」
『田中か! お前、いきなり電話を切るなんて、どういうことだ? いいか「その前にそこにまだ吉田の両親はいますか?」……いるが、それがどうした?』
「詳しいことは明日にでも話しますから、吉田の親に替わって下さい!」
『なんだ? 急ぎか?』
「急ぎです! もしかしたら吉田が警察に捕まるかも知れません」
『な、そう言うことは早く言えよ! 吉田さん!』
電話の向こうで担任が吉田の両親に替わるように言う。
『なんですか? 替われとか、私は一太のことを聞きたいだけなのに……替わりました。一太の父です』
「吉田のお父さんですね。いいですか、落ち着いて聞いて下さい。今、吉田君はどこにいますか?」
『どこって家に決まってるだろ。失礼な子だな』
「本当ですか? 今すぐ確認してもらえますか? 「まー君! 大変!」ちょっと待って下さい」
受話器を抑え、奈美にどうしたと聞くと土田の家に吉田が来ているらしい。
「遅かったか……『もしもし、どうしたんだ? おい!』 あ、すみません。今、吉田君が女の子の家に押し掛けて来ていると連絡がありました」
『なんだと! それはどう言うことだ! 母さん、一太に連絡は? 繋がらない……おい、君、どういうことなんだ!』
吉田の父親が俺を問い詰めるが、その時に学校の電話と吉田の父親の携帯電話が鳴り出す。
「多分、警察からだと思います。すみませんがこれで電話を切りますね」
『おい! だから、それはどう……』
受話器を戻し、奈美から土田の状況を聞くが、向こうはお兄さんさえ気を付けていればなんとかなるらしいと聞く。土田のお兄さんは何をやらかしたんだ?
SIDE B.親として
玄関をドンドンドンと激しく叩く吉田に注意しながら、玄関ドアにチェーンを掛けるとスマホが鳴る。見ると奈美からだったので、タップして電話に出る。
『亜美! 大丈夫!』
「奈美、どうしたの?」
『まー君がストーカー君が逃げたかも知れないって言うから。でね、まー君が亜美のことを気にして確認してくれって言うのよ。優しいよね、まー君。うふっ』
まー君が気にしてくれている。さっきの電話といい、そこまで心配なら直接来ればいいのにとか思うが、今は奈美だ。
「奈美! ナイスタイミングだよ。これを聞いて」
そう言って、スマホを玄関ドアに近付けると玄関ドアを激しく叩く音と吉田の叫ぶ声がスマホを通じて奈美の元へと届けられる
『ちょっと、亜美! 大丈夫なの?』
「聞こえた? 心配してくれたところ悪いけど、まー君の予想通りよ」
『まー君! 大変!』
電話の向こうで奈美がまー君に報告しているようだ。報告が終わり奈美が聞いてくる。
『それで、本当に大丈夫なの?』
「大丈夫よ。お父さんも側にいるし、玄関の鍵もチェーンもしっかり掛けたしね」
『なら、大丈夫なのね?』
「うん。あとはお兄ちゃんがへましなければね」
『へまって……一体何をしたの?』
「それがね……」
奈美にお兄ちゃんが普段はしないのに玄関を開けようとしたこととかを事細かに説明する。
『それは……なんとも言えないわね』
「でしょ! もう、本当にしっかりして欲しいわよね。この間だってね、私に同級生を紹介して欲しいとかさ……」
奈美と電話することで玄関を気にすることもなく、いつの間にか不安も消え去っていた。玄関の小窓から赤い光が見えるのは少し気になるが。そして、気付くと玄関の前で騒いでいた音がしなくなったことに気付き、奈美の電話を切り、お父さんに話しかけると、お父さんもスマホで何かを話していた。
お父さんがスマホを耳から離したので通話が終わったのだろうとどうなったのかを聞いてみる。
「今、確保されたそうだ」
「捕まったってこと?」
「ああ、そうだ。今回は直接的な行動だからな。どうなるのかな。しかし……」
お父さんが私の顔をジッと見てくる。
「何? 私の顔がどうかした?」
「いやな、親のひいき目から見てもお前の顔は可愛いとは思うが……」
視線を下にずらしたお父さんはまだ何かを言いたそうにしている。私は胸を隠しお父さんを睨みながら「スケベ親父!」と言うがお父さんは気にすることなく話を続ける。
「そりゃ可愛いとは思うが家の前で騒げば警察沙汰になることくらい想像つくだろう。なのに高校生という多感な時機にするほどに執着する
「そんなこと言われても私にも分からないわよ!」
「俺に言わせればな「「黙ってろ(て)!」」……はい」
玄関の小窓から見えていた赤色灯の明かりが消えると、玄関のチャイムが鳴る。
お父さんがドアスコープで確認し、玄関を開けるとそこには制服姿の警官が立っていた。
「土田警部」と警官が敬礼し、到着してからの一部始終をお父さんに報告する。
「詳細は、あとで報告書に記載しますが、現時点では以上です」
「そうか、ありがとう」
「はっ。では、これで失礼します」
再び敬礼し警官が去ったのを確認してから玄関を閉める。
「お父さん?」
「取り敢えずは終わったが、明日からは大変だな」
「吉田はどうなるの?」
「どうだろうな。ストーカーと認定されれば、また話は違ってくるだろうし。それになんてったって未成年だろ。いろいろと難しいんだよ」
「そっか。じゃあ、また出てくるかも知れない?」
「そうだな。今度はどういう手で来るか、安心は出来ないな」
お父さんが私を見る。
「なあ、もうすぐ夏休みだろ? 早めにお婆ちゃんのところに行ってみるか?」
「ええ! ちょっと待ってよ。いきなりすぎない?」
「そうだが、あの子の様子だと、例え遠くに行ったとしても、この家をどうにかすることは出来ないしな」
「分かった。でも試験だけは受けさせてよ」
「ああ、前向きに考えてくれ」
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