第17話 親にバレました
SIDE A.どっちなの?
土田さんを奈美達と一緒に駅まで送り届けると、目的のケーキを買って家へ向かう。
「ねえ、なんであのストーカー君は私達の家に来ようと思ったの?」
「由美も気になるの?」
「そりゃあね。まー君はなんでだと思う?」
由美は吉田がなんで自分達の家に来ようとしたのかが気になるみたいだ。
確かに俺もそこは不思議に思ったが、誰かに土田さんが奈美達の家に泊まっていると教えたのであれば、それほど難しい話じゃない。それに由美は同じ学校だし、住所を知ろうと思えばそれほど難しくはないだろう。
それに……由美か。あいつは俺に由美を紹介しろと言ってきた。もし、それが奈美と土田さんの関係を知っていたのなら意味合いは違ってくる。
「まー君、どうしたの?」
「奈美、俺が前に由美を紹介して欲しいって言われたのを話したよな、覚えてるか?」
「ああ、あの話ね。結局は由美のデートについて行けないってことで向こうから断ったんでしょ?」
「なになに、私はその話、聞いてないんだけど?」
「ああ、向こうからすぐに断って来たからな」
「なにそれ? 紹介してとか言いながら、すぐに撤回するなんて!」
「そう言うがな、お前とのデートはデートじゃなくて単なる運動っていうか体を酷使するだけだからな」
「え~なんで? だって、走り回るの楽しいじゃん!」
「お前は小学生か! なにが悲しくて、ずっと手繋いで走り回らなきゃいけないんだ!」
「え? デートって、そうじゃないの?」
「「……」」
「なによ、なんか言ってよ!」
「由美、ついでに言っとくとな。その紹介しろって言って来たのが、吉田だったんだ」
「「え~なにそれ!」」
「なあ、俺もなんで由美なのか不思議だったんだけど、土田さんの情報を探りたかったのかと思うと納得だな。なあ」
「まー君……」
奈美が俺の袖を引いてくる。なんだと奈美が由美を見るようにいうので、由美を見ると立ち止まりプルプルしている。
「どうした? 由美」
「ひどい! まー君。不思議ってなによ!」
「いや……由美がどうこうじゃなくてな、その吉田が話していた好みのタイプに合致しないから不思議だったって意味で、なにも由美が好かれるのが不思議って意味じゃないからな」
「ふ~ん、そう。じゃあ、まー君の好みを教えてよ。そしたら許してあげるし」
「なんで、そこで俺の話になるんだよ」
「いいじゃん、奈美だって聞きたいでしょ?」
「私は別に……」
「本当に?」
「……」
「じゃあ、いいわ。許してあげる。でも、いつかは話してもらうからね」
不意に由美に女性の好みを聞かれたが、俺の好みってどんな子なんだろう。
自分で考えても、これだという風貌が思い浮かばない。
「ねえ、まー君はなんで、ストーカー君が亜美と由美を結び付けたと思うの?」
「なんでって、そりゃ土田さんが奈美と友達だからだろ?」
「それよ! なんで、亜美と友達だからって由美になるのよ?」
「奈美、落ち着けって」
「落ち着いてるわよ」
「ふぅいいか。奈美と由美は双子だよな」
「ええ、そうよ。それが? 今更珍しいことでもないでしょ?」
「そうだ、珍しいことじゃない。だから、奈美のことを調べれば当然、妹の由美のことも分かる。しかも同じ学校なら、出会うのは簡単だと思えたんじゃないのかな」
「ちょっと、サラッと私のことを調べたっていうけど、どういうこと?」
「そんなの、なにも不思議なことじゃないだろ。奈美の乗り降りする駅から通っていた中学の予測はつく。なら、あとは同じ中学卒のやつにさりげなく聞けばいい。例えば、電車の中で途中の駅から乗ってくるメガネの綺麗な子のことを知りたいとな。そうすりゃ、大体のやつなら、奈美のことだと予測がついて話すだろう。双子の妹がいることもな」
「「……」」
「二人ともどうした?」
「綺麗って言われた……」
「私は可愛いだったのに……」
くねくねしている二人を見て歩きづらそうだなと思うが、気にせず歩く。
「話を続けてもいいか?」
「あ、ええ。続けて」
「双子の妹がいることが分かり、なんとか近づこうとする。そこにたまたま幼馴染の俺が同じクラスにいたから、なんとか紹介してもらおうと思ったまではいいが、由美の突飛な行動についていけないと思い断ったってことだろうな」
「突飛ってひどくない?」
「十分、ひどいわよ。でも、大体分かったけど、誰が私の家にいることを教えたのかしら? 私は誰にも話していないのにね」
「そこが不思議だよな。案外、土田さんに聞いたらすぐに分かるかもよ。実は……ってね」
「「笑えないよ」」
家につき中に入ると、父さん母さんが、すでにテーブルに座って待っていた。
「「お邪魔します」」
「久しぶりね。奈美ちゃん由美ちゃん」
「本当だな」
「大は?」
「まだ自分の部屋よ」
「じゃあ、呼んでくる」
「まー君はその前にシャワー浴びて来なさい。それにお昼もまだでしょ」
「そうだった。じゃあ、これ頼むね」
母さんにケーキを渡し、風呂場へ向かう前に着替えを取りに部屋へと向かう。
「行ったわね。で、あなた達のどちらがまー君の本命なの?」
「「……」」
「母さん、直球すぎるよ」
「そう? でも、まー君が相手だと変化球じゃ通用しないわよ。それはあなた達も分かっているんでしょ?」
「「……」」
「でも、母さん。この子達はまだ十代だぞ」
「だから?」
「だからって……「シッ」」
「ふぅ、今度こそお風呂に行ったわね」
SIDE B.お前か!
駅で奈美達と別れてからは、電車に乗り最寄駅で降りた後はスーパーで夕食の買い出しをしてから家に帰る。
昨日今日と放置されていたので、流し台は少し乱雑に汚されていた。
「もう、なんで汚さないように使えないんだろう」
放置されていた食器を洗い片付け終わり、夕食の準備をしていたところにお兄ちゃんとお父さんが一緒に帰ってくる。
「お帰りなさい」
「「ただいま」」
「亜美は大変だったな」
「そうよ、守ってくれるって言ったのにさ。結局は守ってくれたのはまー君だったよ」
「「まー君?」」
「そう、まー君。ただし、婚約者のマー君じゃないけどね」
「そりゃまた。不思議だな」
「そうよね。もうすぐ夕飯が出来るから二人ともお風呂を先に済ませてよ」
「なら、俺が先に」
「ああ、いいぞ」
お兄ちゃんが先にお風呂に行ったので、お父さんとテーブルに座り、今日のことを聞いてみる。
「ねえ、それでさ。吉田は結局どうなったの?」
「ああ、あの子はしばらく監視がつくだろうな。現行犯じゃなく未遂だが、他人を傷付けようとしたからな。まあ、これは俺達の独断に近いから、後からお叱りを受けるかもしれんがな」
「そうなんだ。ありがとうね」
「まあいいさ。おかげで面白い子と知り合えたんだしな」
「そうだ! まー君に酷いことはしなかったでしょうね?」
「ああ、あの男の子な。大丈夫だ、丁重に帰したぞ」
「うん、そう聞いた。それでお父さんに人探しを頼んだこともね」
「そうだ! それをお前にも確かめたかったんだ」
お父さんが上着の内ポケットからスマホを取り出すと、私に一枚の写真を見せてくる。
「あれ? 私、お父さんには送ってないのになんで持っているの?」
「やっぱりか」
「ねえ、お父さん。聞いてるんだけど?」
私が送ってもらった写真と同じものをお父さんが持っていた。
私はお父さんに送った覚えはないのになんでお父さんが持っているの?
「これはな、そのまー君から『カズオ君を探して欲しい』と頼まれて、手掛かりとしてもらったんだ」
「え? ちょっと待って。まー君が……それになんでカズオ君なの?」
「それはこれのせいだろ?」
お父さんが私が履いているブリーフの写真を指す。
それか~確かに『カズオ』って書いてあるもんな~
せっかくマー君が見つかったっていうのに、マー君は『カズオ君』を探しているなんて。
「え? じゃあ、なに? まー君はこの写真の子を男の子だと思って探しているワケ?」
「ああ、そうだな。ただ探すって言うよりも会えたらいいなレベルだって本人も言ってたぞ。でも、このカズオ君には会えないよな」
お父さんがニヤリとして、私を見る。
「そんなのお父さんのせいじゃない! どうせ、子供用のパンツなんてどれも同じだとかいって適当に持っていったんでしょ!」
「まあ、そうだな。でも、巡りも巡ってこんなことになるとわな~不思議なもんだな~」
でも、マー君がまー君だと言うのが分かっただけでも私にとっては十分な成果だよね。やっぱり運命だったんだな~
って、ダメじゃない! まー君はあの奈美達が片想いしている相手なんだから。
さようなら、私の初恋……
「おい、お~い! 亜美」
「ん? なに?」
「それでな、俺達も調べてみたんだが分からないのが、なんであの子はお前が泊まっている場所を知っていたんだ? 俺達もあの子に聞きはしたが、答えてくれなくてな。本当に分からないんだよ」
「そう言えば、そうね。私も泊まることはお兄ちゃんとお父さんにしか言ってないし」
二人して考え込んでいるとお兄ちゃんがお風呂から上がってきた。
「なあ、一夫は亜美が友達の家に泊まっていることは誰かに話したのか?」
「ああ、話したよ」
「そうか、話したのか」
「ええ~! なんで話すの!」
「なんでって、お前が忘れ物をしたから至急届けたいって、電話の向こうで言うからさ」
「「バカ!」」
「なんだよ、親父まで!」
「お前はなんのために妹が友達のところに泊まったのか聞いてたろうが!」
「ああ、そうだったな」
「「はぁ」」
「なんだよ。いいから、飯にしてくれよ。もうコンビニ飯は勘弁だ」
「お兄ちゃんはご飯抜き!」
「なんでだよ! 親父からもなにか言ってくれよ!」
「はぁ、お前はしばらく反省してなさい」
「なんだよ。意味わかんねえよ」
お父さんが半ば呆れながら、椅子から立ち上がるとお風呂に向かう。
私もお兄ちゃんの危機感のなさに呆れながら、自分の部屋に戻る。
「つまみ食いしたら、お兄ちゃんの食事は今年いっぱいは作らないからね!」
「そんな……そこまで怒ることかよ。なあいいだろ?」
「呆れた……お兄ちゃんは私があのストーカーがお世話になった友達の家まで来たことは聞いてるのよね?」
「ああ、聞いてるぞ。なあいいだろ?」
「聞いていても、反省しないの?」
「なんでだ? 俺はストーカーには言ってないぞ?」
「バカ! その電話して来たのがストーカー本人じゃない! もう、信じられない!」
「へ? でも、そいつはストーカーだとは言わなかったぞ? ひと間違いじゃないのか?」
「もう本当にバカ! ストーカー本人がストーカーですなんて、言う訳ないでしょ!」
「あ、それもそうか」
「分かってくれたの?」
「ああ、分かった。なあ、腹へった……」
「ダメだこりゃ……」
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