第16話 2人の過去
「……リンフィ、あの2人って過去に何かあったの?」
リンフィが部屋に来ていたのでベッドに座ってゆっくり話していた。
「言っちゃっていいんでしょうか……」
「あ、いやだめならいいよ」
ふとそんなことが気になって口にしてみたものの、2人の過去の話をリンフィにさせるのはなんだかな。
「……まぁ、話しますよ。友達になったんですしね 」
「ありがとう」
私が返事をするとリンフィは遠くを見つめながら1度深く息をついて話し始めた。
「……エミリは天才令嬢と言われていますよね。彼女は私たちよりも少し立場が上なこともあってたくさんの人に慕われて、愛されていました。……まぁ、今はどうも無いですけど、当時は令嬢が研究をするなんてありえない事だったんですよ? 批判だらけで……。そんな中、エミリが研究を続けることを進めてくれたのがリゼだと、そう言っていました」
「その時からリゼとは関わりがあったんだ」
「はい。……そして2人は互いに惹かれ合って、交際を始めたんです。隠して、ひっそりと。……でもそれも、いずれバレてしまう。関係がバレてしまってからは批判の嵐。何せ、リゼは国1番と言っていいほどの嫌われ者でしたからね」
リンフィはその頃を思い出すようにため息をつく。リゼが嫌われ者だという言葉に私は思わず耳を疑った。
「リゼが嫌われ者……? どうして……」
「あの黒髪ですよ。貴族たちの間じゃ、黒髪なんて滅多に見ないですよね。だから悪魔の使いだとか、呪われた子だとか、そんなことを言い続けられできたんです。ミアリスは知らなかったんですか? だいぶ出回ってた噂のように感じますが……」
「……あー、うん。噂とかあんまり入ってこないんだよね。お母様とも話さないし、友達とかいなかったから……」
「……そう、ですか。続けますね。リゼは昔からそのことが原因で人と関わることを避けてきたんです。私たちに会ってから変わってきてはいますが。……それをエミリは認めて、愛した。ですが、エミリが嫌われ者の味方をしているなんて皆さんの耳に入ってしまったら……」
「エミリも批判されるし、研究は当然打ち切り……」
「そうです。……ですが、エミリはひとつの選択を迫られたんです。リゼと離れて研究を続けるか。研究を捨て、リゼと一緒に国外追放を受けるか」
「国外追放……!?」
そんなの、罪を犯した人だけがうけるものだと思っていた。罪のない、ただの偏見から生まれたリゼへの批判からこんな選択を迫られるエミリは、当時どんな気持ちでいたのだろうか。
「この国の貴族王族はめちゃくちゃですからね。気に入らないことがあれば何をしたって何も言われないんですよ。……地位が高いから」
リンフィは呆れたように呟く。リンフィはこの国の決まりにうんざりしているのだろう。
「……リゼとエミリは今ここにいる、ってことは研究を取ったの?」
「はい。リゼがそうするように言ったんです。エミリはリゼ一緒にいれるなら国外追放でもいい、そういったそうなんですが、リゼは研究を取るよう強く奨めたそうです。エミリは自分のやりたいことをして、私の事でエミリのしたいことを潰したくない、と。そんなリゼの願いに負けてエミリは研究を取り、それを見事大成功させて、今に至るのです。研究を成功させてリゼと会うことも少しは許されたみたいです。今はリゼへの批判も減ってきてはいますけどね。……まぁ、そんな感じです。長くなりましたね」
「リンフィはいつから仲良くなったの?」
「ちょうどエミリとリゼが出会ったあたりですよ。2人のお熱い雰囲気に呑まれて私は仲良くするどころじゃありませんでしたけど」
リンフィは少し不満そうにつぶやく。3人は昔から仲が良かったみたいだけど、こんな所に私がいていいんだろうか。
「2人も、色々あったんだね。今まで知りもしなかった」
「噂とエミリから聞いた話を混ぜて言っていたので少しは違うところがあるかもしれません」
「それでもすごい話だよ。リゼは自分を犠牲にしてまで、エミリを……」
「いくらエミリがそれを否定しても聞く耳を持たず一点張りだったそうですよ。あの頑固さはいつまで経っても好きになれませんね」
そういえばこの2人は仲が悪いだった。リンフィとリゼがお互いを嫌う理由がよく分からない、2人ともいい所あると思うけどな……。
「ほんとに仲悪いね……」
「お互い、いい所に気づいてはいるんですよ。でもなんか気に入らなくて……いっつも喧嘩ばかりでしたよ、昔から。その度エミリがなだめてくれていました」
「理由もはっきりしないまま喧嘩してたの……?」
「素直に言えばリゼのことは嫌いじゃないです。何かが合わないんですよ。ミアリスも慣れたらお互いが本気で嫌ってないことがわかりますよ」
お互い嫌いじゃないけど、何故か喧嘩してしまうなんてそんなの照れ隠しみたいなものじゃないのか。
リンフィも案外そんなところがあったんだ……
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