第15話 仲の悪い2人
「……リゼ、やめてください。私たちはお互いが好きで付き合ってるんです。周りにとやかく言われて別れてしまうような浅い関係ではありません」
リンフィが厳しい表情でリゼを見つめた。
「でも、どうせ……」
「好きだから付き合う、これの何がダメなんですか? 私はミアリスと一緒に居なかったら他の男の人と強制的に婚約させられていた。そんな人生歩むくらいなら皆から冷たい視線を浴びても、ミアリスと一緒にいたいです」
何だか少し恥ずかしくなってきた。リゼも愛がどうとかという話では無いのは分かっているだろう。それを大事にした結果2人は過去になにか起こしているのだから。
「貴方一人の問題じゃないでしょ。……どうなの、ミアリス」
急に様付けが無くなったことに違和感を覚えたものの、私は話を振られて少し黙り込んだ。
「……私、は……人と関わるのは、苦手。皆から嫌な目で見られ続けたら心が折れてしまうかもしれない。辛いのはわかってる……。けどリンフィが居ない方が、もっと……」
上手く喋れなくて言葉が詰まっていたが、これは私の思っているホントのことだ。皆から悪く思われることよりも、リンフィが居ない方がずっと辛い。
すると隣で聞いていたエミリ「ふふ」と笑い口を開いた。
「……本当にリゼとミアリスは似ていますのね。好き、って気持ちは簡単には壊せないって知っていますわよね、リゼ。分かってあげてください」
「……どれだけお互いのことが好きなのよ」
リゼは呆れたように呟いた。何を言っても無駄だと諦めたのだろう。
「ミアリスの為なら何でもしますよ」
「なんでもって……」
「それくらい私はミアリスが好きなんです」
そんなことを言われると恥ずかしくなるじゃないか。
リンフィはいつもこういうことを自信満々に言うから聞いているこっちが恥ずかしい。
「私達も、これくらいの覚悟を持ってたら別れなくてすんだのかしらね」
リゼは小さくため息をついてエミリに視線を向けた。
「……なら、また前のように戻るって言うのもいいんじゃありません?」
「そうかもね、でも私はリンフィみたいにバカ真面目にいられないから。いずれ周りの目を気にして限界が来るわ」
「人のことをバカ真面目だなんて言わないでください。私は好きの気持ちを大事にしただけです」
隙があれば喧嘩し出そうとする2人を私とエミリは少し苦笑いしながら見つめていた。
「はい、皆様。この話はやめにしてちゃんとお茶会をしますわよ。紅茶が冷めてしまいますわ」
◆◆◆
「……え、あんた達お互い親に紹介されて婚約者になってんの? そんなことあるのね……」
「だから言ってたじゃありませんか。信じなかったのはそっちです」
「あの時は信じられなかったのよ……」
少し喧嘩が起きそうになりながらも2人はちゃんと楽しそうに会話している。前からそうだったんだろうか。
エミリからの話によると3人は小さい時よく遊んでいたそうで、リンフィとリゼがあまりにも何度も喧嘩するものだからエミリが毎回止めに入っていたという。
そんな感じもしないくらい、今はお互い落ち着いているようで安心した。最初はどうなることかと思ったけど。
「……ミアリス」
リンフィが私を呼ぶ声が聞こえて私はリンフィのいる方に顔を向ける。
するとリンフィは私が判断できないくらい突然にキスをしてきた。
「リ、リンフィ……」
「ふふ」
リンフィは小さく微笑むと満足気に私から顔を離した。
「あ、あああんたちやめなさいよ!! 人前でそんなこと……!!」
「あらあら〜ラブラブですわね」
リゼは慌てた様子で顔を真っ赤にして言った。
「すみません、今日のキスを1度もしていないことに気がついたので」
「そうだとしても今する事じゃないでしょ……!!」
「リゼ、私たちもしません?」
「なんてこと言い出すのよ! やるわけないじゃない!」
リゼは即答した。
リゼはツンツンしているように見せて本当は凄くピュアな子なんじゃないか。そう思うと少し可愛いところがある。
「え〜そう言わずに。ね? リゼ」
「そんな風に言われても嫌よ! 私キスなんて1度も……!」
そう言うリゼを前にエミリは全く気にせずリゼの唇に自分の唇を重ねた。
「……!」
リゼは驚いて顔を真っ赤にしながらエミリを押しのけようとする。
「エ、ミリ、まっ……ん」
目の前でこんなに熱烈なキスをかわされて私とリンフィは思わず目を逸らした。エミリはおっとりしてそうに見せかけて積極的……。
「……リゼのファーストキス、頂いちゃいましたわ、ふふ。……あれ、皆さんどうして目をそらすんですの?」
エミリはキョトンとした表情でこちらを見つめた。意外と天然なのかも。
「どうしたもこうもないわよ!! 目の前であんなことされてずっと見てられるわけないでしょ……!!」
「あら、やりすぎてしまいましたわね」
「やりすぎってレベルじゃない! 加減してよね……! 窒息するかと思ったわ……」
「その割には最初しか抵抗してなかったように感じましたわ」
「うっさい。気のせいよ……」
しばらくリゼはエミリから視線を外して変な方向ばかりに目を向けていた。さっきの恥ずかしさがまだ残っているのだろう。
◆◆◆
「ではお2人とも、またお会いしましょう」
私は笑みを浮かべながら会釈した。
「はい、ありがとうございました。……ところでリゼはここに残るのですか?」
「……ええ、まだしなければいけないことがありますので」
「え、なにそれ聞いてな……ちょっと!?」
リゼがエミリに手を引かれて戻っていく。
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