第11話 いい所って温泉……?
「ここらの道を真っ直ぐ行ってね、そしたらでっかい建物が出てくるの。今日はそこに連れていきたくて」
「へぇ……」
どこに連れていってくれるんだろうとわくわくしながら私は軽い足取りで道を進む。リンフィもなんか嬉しそう。友達がまたできたからかな。
「あ、ここだよ」
アイリは急に立ち止まって目の前の大きな建物を見た。
「なんの建物ですか?」
リンフィが不思議そうに聞いた。
「温泉だよ〜、温泉」
「おん、せん……?」
外にあまり出てこない私たちにとって温泉という言葉はあまり想像ができないものだった。
「あれ、温泉知らない? うそ、ほんとに?」
「あいにくなかなか聞きなれない言葉でして……」
リンフィが恥ずかしそうの言った。相手は知ってると思って言ったのだから知らないなんてことは考えてもなかったのだろう。
「んーとね、お風呂のさらにでっかいやつ」
頭では想像してみたものの、そのお風呂のさらに大きいものをわざわざこういう建物にしてまで経営する必要があったんだろか、と考えてしまった。
「ま、とりあえず行けばわかるって」
◆◆◆
私たちは温泉の中に入った。わざわざアイリが貸切状態にしてくれたのはありがたい。
リンフィはタオル一枚を身にまとって立っている。……何だか新鮮。
「ひろ……」
私が入ってるお風呂もこんな感じだった。広いだけじゃなくてなんかぶくぶくしてるやつもあるし。
「ほんとに初めてじゃん……」
「あはは……」
「でもふつーのお風呂なんかよりずっと気持ちいいと思うから入ろ〜」
アイリとリアは2人で温泉に向かっていった。するとリンフィが私の耳元で「ミアリスはこっちですよ」と手を引いた。振り向いた時その顔はにっこりと笑っていたからこれはリンフィになにかされてしまうんだということを悟った。
リンフィに手を引かれアイリとリアがまったく見えない位置に来た。壁に手をついているリンフィは、昨日の表情と同じだ。リンフィには私とお風呂に来ると興奮してしまう癖でもあるんだろうか……。
「リンフィ、アイリ達が来たらどうするの……」
「いいんです。今は私だけ見てください。それに今日のキス、まだ終わってないですよ?」
リンフィが小悪魔的な笑みを浮かべて私に唇を近づけた。唇が重なった瞬間昨日のことを思い出して体温がぐっと上がっていくのを感じる。顔が熱い。リンフィはそれに構わず舌を絡め続けてアイリたちに聞こえるんじゃないかと疑うほどの水音を立てていた。
また、体が動かずにリンフィに体を預けた状態になる。
「おふたりさ……あ」
私はキスをした状態で向こうを見ると驚いた表情で固まるアイリの姿があった。
私は慌ててリンフィを突き放す。
「あ、ごめんね? どっか行っちゃったなって思ってたらここで音がしたから……」
「……はぁ、だからバレるかもっていったのに……」
「ごめんなさい、歯止めがきかなくて……」
「ま、まぁまぁ私なんかに見つかってもどうにもなんないよ。私たちだってそういうことするし」
アイリが私たちをフォローするように言った。
「リンフィは人がいるところでやっちゃうから……」
拒めない私も私だけど、出来れば外でこういうことをするのは少しやめて欲しいという思いもある。
「あぁ、でも人がいないところならいいんじゃない? 今みたいに人がいる時は気をつけて」
アイリは思いついたように口を挟んだ。
「そもそもしようとするのがダメなの」
私は呆れたように呟く。こう言っているけど、私もいつもああいうことをされて快楽に溺れているから人のことを言えない。
「ごめんなさい。これからは気をつけるから」
「……ちょっと控えようか。ダメだよ、やっぱり」
「……」
リンフィが驚いた表情を見せたあと悲しそうな表情を浮かべる。私に触れなくなるのがそんなに嫌なのか。
「手繋いだり腕組むのはいいから。キスとかはダメ。ハグは周りを見て」
「……わかりました」
リンフィが少ししゅんとしている気がする。ちょっと言いすぎたかも。
「とりあえず、温泉戻ろ。ね?」
アイリは少し気まずい雰囲気を醸す私たちをの空気を裂いた。
◆◆◆
お風呂が気持ちよく感じられない。やっぱりさっきの、言いすぎたのかも。リンフィがずっと下向いてる。
「2人共、なにかあったの……?」
私たちの様子を不思議に思ったリアが声をかけた。リアはあの場にいなかったから分からないんだ。
「あ、えと……」
「あー! えっとね、リンフィがさっき転んじゃってまだ痛いみたい」
「あぁ……」
ちょっと無理のあるような気もするけどリアが納得してるならそれでいいかと私はいつも通りすごした。
また2人の時間があったら謝ろう。そう思って私は温泉に浸かっていた。あまり気持ちよく感じない。
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