第10話 友達ができた
なんだか、昨日のことを考えていると余計にリンフィを意識するようになってしまって、2日目のデートは思うようにことが進まなかった。
◆◆◆
ただ街をひたすら歩いているとき、リンフィが落ち着かない様子で私をチラチラとみていた。
「ね、ねえミアリス。手、繋いでもいい……?」
そういうことには何故か疎いリンフィが顔を逸らして言った。顔はいつもよりも赤くなっている。
「いい、けど」
するとリンフィは分かりやすく嬉しそうに明るい表情を見せて、私の手を自分の手に絡めて恋人繋ぎをした。緊張からか、少し手が熱くなって汗ばむ。
「ねぇお姉さんたち! お洒落なカッコしてんね! どこの人?」
急に声をかけられたと思えば、目の前にいたのは赤髪ポニーテールの私と同じ年齢くらいの人。あと、後ろにも黒髪の大人しそうな女の子が隠れている。
「あ、アイリちゃん。やっぱやめとこうよ……」
「なんでさー! 仲良くなりたいんだもん!」
「え……っと、どちら様?」
私は怪しむように問いかける。
「あぁ、あたし? あたしはアイリ! この街に住んでるの!」
「わ、私は! あの、その……リア。です……急にすみません……。アイリちゃんが急にあの子たちと仲良くなりたいって言うから……」
「アイリさんに、リアさん? 話しかけて下さりありがとうございます。私はリンフィ。もう少し人のいないところで話を進めませんか?」
リンフィが私の前に出て話した。ナイスリンフィ。
私たちは人のいない所に移動した。話すのにはやっぱり人がいるところは迷惑だ。
「では改めまして、私はリンフィです。こちらは婚約者のミアリス」
「……どうも」
「……」
私が小さな声で挨拶をすると、アイリは黙り込んでしまった。失礼だから怒ってしまっただろうか。
「……わいい、可愛い! 2人とも可愛い!」
急に顔を上げたかと思えば、目をキラキラと輝かせて私たちを見ていた。
「それにしても、女の子の婚約者なんて素敵! 私もこの子と付き合ってるよー!」
アイリはリアの腕を掴んで引き寄せた。
「……そうなの?」
私は思わず口に出してしまった。なんだろう、この街ではこういうのは当たり前なんだろうか。
「そーだよ〜! 私が男の人あんまり好きじゃないし、女の子には騙されるし、幼なじみのリアが唯一好きで信じられるんだ〜」
一瞬闇が見えたような気がしたけど気のせいだろうか。
「そう、なんだ……」
「それは幸せなことですね。私たちもつい最近熱い夜を──」
「……リンフィ」
「……え、な、なんて……熱い夜ってあの……そういう……」
リアが顔を真っ赤にして慌てている。
「お二人さんなかなかお熱いじゃん。私たちも、ね? リア」
「え!? あ、それは……あの、恥ずかしいので!!」
リアはそう言ってその場にうずくまった。恥ずかしがり屋なんだろうか。
「まーいいや! とりあえず2人とも! あたしと友達になろっ!」
アイリはそういうとニカッと明るく笑顔を向けた。なんて眩しい笑顔……。
「ええ、よろしくお願いします。アイリさん」
「よ、よろしく」
「もー! ミアリス、だっけ! 硬い硬い! もっとゆるーく行こうよ〜。リンフィも、呼び捨てでいーからさ!」
こんなにフレンドリーな子がどうして私氏たちと友達になりたいだなんて急に言いだしたんだろう。
まぁ、絡みやすいし案外楽しいかも。
「では改めて、よろしくお願いします。アイリ、リア」
「あっ、よ、よろしくお願いします!! リンフィ、ミアリス!」
名前を呼ばれて立ち上がったリアが慌てて頭を下げる。2人とも礼儀正しい。
「……2人は、なんで私達と仲良くなりたいって思ったの?」
ふと、聞いてみることにした。
「んー、特に深い意味は無いよ。でも恋人繋ぎしてるし、恋人なんだろうな〜と思って。似たもの同士?」
アイリは私たちの手を指さして言った。ずっと違和感を感じていなかったけど、私達はまだ手を繋いだままだった。顔が熱くなるのを感じて慌てて手を離す。
「まあミアリスったら恥ずかしがり屋さん〜。もしかして気づいてなかったんですか?」
そう煽るように言ってリンフィは私の目を見た。
「……今気づいた」
「あらあら。私はずっと気づいてましたよ。でもなかなか離さないからミアリスが繋いでいたいと思ってくれてるだけかと……」
「そんなわけないでしょ……」
「ミアリスはツンデレだね」
「……なっ!」
急に変な事を言われて頭が混乱する。ツンデレ? 私が……?
「そうなんです。ミアリスはとってもツンデレなんですよ。キスの時は体を預けてくれるのに、こういう時は否定するんですから。体は正直ってやつですかね〜」
なんなんだ。リンフィは人を馬鹿にする天才なの? 私悲しい。
「でもそんなところも可愛いというか……。お風呂も一緒に入りましたよね♡」
私は顔を逸らして無言で頷いた。
「お風呂一緒に!? なにそれほんとにラブラブじゃん2人とも! あ、リアも今度一緒にお風呂入ろーよ〜」
「え、私!? 無理無理! 一緒にお風呂なんてそんな……!! 恥ずかしいよ……!!」
「え〜……残念」
アイリが肩を落とすと、リンフィは二人を見て微笑んでいた。
「そーだ2人とも、良いとこ連れて行ってあげるから着いてきてよ〜!」
「ほんとですか? それはありがたいです」
リンフィがそういうとアイリはパッと嬉しそうに目を輝かせて「こっち!」と手招きした。
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