第7話 レッツクッキング
「さて、ミアリス! 待望のお料理の時間です!」
リンフィはどこから持ってきたのか分からないエプロンを身にまとい腕の袖をたくしあげた。
「……それで、肝心の材料は?」
私が呆れたように言うと、リンフィはハッとして私に目で何かを訴える。多分、何買えばいいか分からなかったの目だ。
「買いに行こうか、そこら辺に市場あったよ」
「……はい」
私たちは部屋を出て、市場まで歩く。そして少し先にある市場に立ち寄った。
なにやら見た事ない食材が沢山並んでいる。私は置いてある赤く染った実のようなものに目をやった。あれは何かの実?
「……んん、全然わからないですね……」
「正直、何が何なのかもさっぱり……」
「もう適当に買っていきましょうか」
「そうだね。甘さとか辛さとか聞いてたら適当にできるかもだし……」
私たちの闇鍋は多分適当にものを入れ込んだだけの本物の闇鍋になってしまうだろう。
「……なんかこれ美味しそうですよ。甘味ですかね?」
確かに見た目も甘そう。よく見たら看板にも甘いって書いてある。
「なんかよくわかんないけど、それにしてみる?」
「はい」
リンフィが返事をすると私たちはその実を手に取った。
◆◆◆
私たちはそのあとも適当に何かも分からない実をたくさん買った。あとはよくわからなかったのでとりあえず香辛料なども買った。これでそれっぽいものは作れるはずだ。
「ではではレッツクッキング〜!」
「テンション高いね」
これからとんでもない料理が出来そうだと言うのに。
「まずは元になる水……? スープ?」
リンフィが鍋に水を汲んだあと火にかけた。
「水に味ってどうやって付けるの?」
私が聞くと、リンフィは同じように首を傾げた。
「さっきの香辛料ですかね? あとなんかお鍋に入れるだけ! って書いてた四角い何かの塊じゃないですか?」
あの四角いのに関しては本当に検討もつかない。あの中に何が詰まってるんだろう。
「とりあえず……入れてみよう」
私はそれを手に取ってお鍋に放り込んだ。ポチャンという音がして水が輪っかを作る。
「おぉ……溶けてますね。これがスープに……」
「あ、いい匂い」
湯気に乗った香りが私の前を通った。いい匂いだけど、このいい匂いをあの変な実で消してしまうんじゃないかと少し怖くなってくる。本当に大丈夫なんだろうか……。
「……じゃあこの実を入れて〜これも、これも」
リンフィはつぎづぎと色んなものを入れていく。次第に鍋の中身は恐ろしい色に変わっていった。そんな鍋を見て青ざめながら、私はただ見つめていた。
……リンフィ、もしかして鍋はものを入れるだけだと思ってるんじゃないか。いや、間違ってないけど、またそこに工夫が……
「リ、リンフィ。そこまでにしとこう」
「……あ、そうですね〜! ちょっと入れすぎちゃったかもしれないです♪それにしてもすごい色ですね〜」
「た、多分色んな実入れたからその色が移ったんだと思う……」
「なるほど、まぁ味はたべてみないとわかりませんよね。とりあえずこのまま火にかけときましょうか」
「そうだね」
◆◆◆
「あれ、ほんとに美味しいのかな」
鍋がグツグツするのを待っている時間、私はリンフィに聞いた。
「んー大丈夫でしょう。スープがあんなに美味しそうだったんですから」
「……確かに、そうだけど」
不安ではある。不安ではある、けど……もしかしたら奇跡が起こって美味しくなるんじゃないかとか期待してみるけど、あの色を見る限り絶対に無理そうだ。
「あ、ミアリスもうグツグツしてますよ」
「早いね。火止めようか」
「はーい」
リンフィは鍋に駆け寄って火を止めた。匂いに、違和感は無い。
「ちょうどスープ入れるマグカップがありますね。ここに入れましょうか」
リンフィはマグカップを手に取ると、2人分のスープをついだ。
「はーい出来上がりです」
そう言ってリンフィは私が座った席にスープを置く。
「ありがとうリンフィ」
「じゃあまずは私が……」
私はリンフィがスープを口に運ぶ瞬間をじっと眺めた。あれは本当に人が食べれるものなのかと心配したけど、リンフィは驚いた表情で私に顔を向けた。
「美味しいですよ!」
リンフィの言葉に少し驚いた。流石にそんなはずないと思ったから。
「……あ、まだ食べないでください。ちょっとやって見たかったことがあるんです」
「何?」
なんだろうと思ってリンフィを見つめる。するとリンフィはスープを口に含んで突然私の口に覆いかぶせるようにキスをして口移しをした。
あまりの驚きに私はその場に突っ伏す。どんな考えをしていてもあの状況からあぁしようなんて思うはずがないと思った。流石のリンフィだ。私が思ってもないことを平気でやってのける。
「……美味しいですか?」
味は悪くない。けど関節キスよりも刺激が強すぎる……!
「美味しい……」
もうリンフィと目を合わせられない。思い出して失神してしまう。
「口移しっていいですよね。私一回やって見たかったんですよ」
一体どこでそんな言葉を覚えたのか、リンフィは嬉しそうに言っているのがわかった。
この人は隙あらばキスやら何やらをしてくるのが得意なんだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます