第169話 脳が蕩ける配信 その一

──玉木さんと話し合いを終え、さてどうしたものかと頭を悩ませ数時間。


「はい皆さんこんばんは。デンジラスのスーパー猟師、山主ボタンでございます。今日は料理配信していきたいと思いまーす」


:ばんわー

:きちゃ

:待ってました

:今日はなに作るの?

:きちゃあ

:おこんばんわ

:きちゃ!

:はじまた

:料理楽しみ

:ばんわー

:おばんです

:きちゃー!


 俺は配信をやっていた。……個人的な悩みと配信(仕事)は別だからね。仕方ないね。

 というわけで、料理配信である。なお、今回はスタジオじゃなくて自宅。アレコレ考えすぎてスタジオに移動するのが億劫になったのと、今日の料理自体が簡素な内容を予定しているためだ。


「それじゃあ、早速本題に入ります。今回使う材料はこちらになります。……ホットケーキミックス!」


 なお市販品。


「てことで、今日は普通のホットケーキを作っていきます。……いやパンケーキか? ま、どっちでもいいや。これにダンジョン産の蜂蜜やらメイプルシロップやらを掛けて優勝していきます。チョイスの理由は、個人的な事情でいま現在ストレスがマッハだからですね。バチくそに甘いものを食べて落ち着きたい」


:なんか女子みたいなこと言ってる……

:ストレス!? 山主さんがストレス!?

:ホットケーキかぁ

:草

:草

:OLかな?

:山主がストレス溜まってるってヤバくない……?

:なにやらかしたん……?

:甘いもの好きの?

:草

:これワンチャン世界の危機では?

:えぇ……

:草

:何が起こったんだってばよ……


 はー、ホンマ。いま思い返しても腹立つわぁ。さすがに配信では言わんけどさぁ。

 なにが嫌って、潰せはするけど絶妙に面倒な反撃能力を持ってることよね。 問答無用ですべてをぶち壊せばイけるけど、そんなことしたら周りへの悪影響がエラいことになるし。

 かと言って、見せしめ程度に収めたら反撃してくる可能性が高いわけでしょ? 動機をバレないようしたら見せしめの意味はないし、そうなると弱いところが狙われるわけで。

 とまあ、そんな風にアレコレ悩んでたら糖分が足りなくなったので、重めのスイーツを貪って気分を良くしようと思ったわけです。……ちなみに俺は甘いものは結構好きです。


「それじゃあ、サクッとホットケーキの方を作っていきます。なお、生地の方は市販品のホットケーキミックスを使って作るので、基本的に巻いていきます。気になる人は自分で調べてください。人によってはご自宅に普通にあるでしょうし、パッケージの裏でも見てください」


 まあ、俺はネットで調べた情報でやるけど。スフレパンケーキってやつを作ってみたい。

 えーと、粉ひと袋で三枚分。必要なのは卵一個と牛乳が百ミリリットルだから……まあ、一箱全部使えば良いか。

 とりあえず、使う粉に合わせた量はわかった。ここからはネット情報ね。まず卵黄と牛乳をボウルに入れて、よく混ぜる。混ざったら粉を入れて、また混ぜる。

 そんで次。卵白を泡立て器でかき混ぜて、メレンゲを作る。途中でグラニュー糖をぶち込むのも忘れずに。……量は控え目かな。ホットケーキミックスだし。それにシロップがダンジョン産なので、甘さはいくらでもカバーできると思われ。

 んで、角が立つぐらい混ぜたら、メレンゲを生地に入れる。なお、この時全部は入れない。三分の一ぐらい。それでよく混ぜる。混ぜ終わったら、残りのメレンゲを投入。再びしっかり混ぜる。ただガシガシせずに優しい感じで。


「……はい。これで生地は完成です。あとは焼くだけですねー」


:おー

:美味そう

:これはなかなか

:ふわふわ間違いなしですわ

:やっぱり山主さんって手際良いよね

:電動泡立て器並の時間でメレンゲ作ってた件。手動ですよね?

:パッケージ裏の作り方と全然違うんですがそれは

:それスフレパンケーキの作り方じゃない?

:普通のホットケーキとは

:スイーツ店みたいなホットケーキできないそれ?

:美味そう

:生地ちょっと舐めたい


 評判のようでなにより。はい次いくよー。まずはデカイフライパンと、ケーキ用の丸い型枠を用意します。今回は三つ。……ちなみに型枠は通販で買いました。

 そしてフライパンにサラダ油をサッと塗って、弱火で加熱。しっかり温まったら、型枠に生地を流し込む。

 その後、フライパンに少し水を注いで、蓋をして五分から十分蒸らす。この時、生焼けや焼きすぎに注意。俺は超感覚で分かるので問題なし。

 んで、具合が良くなったらひっくり返して片面を焼く。この時点で火は入ってるので、型枠も外しておく。もう型崩れの心配はないしね。


「あ、ここ注意喚起ね。俺は面倒だから素手で型枠掴んでるけど、皆さんはちゃんとヘラ使いましょう。手が焼けるよ。……ま、やるやつなんていないとは思うけど」


 でも念のためね? 小さい子が真似したりするかもだし、たまに想像を絶する馬鹿もいるから。……本当に世の中ってやべぇのいるからな。人類の多様性を侮ってはいけない。


「それはともかく。片面にも焼き目がついたら、ホットケーキの完成です。……今更だけど、ホットケーキとパンケーキの違いってなんなんだろうね?」


:美味そう

:うわマジで美味そう!

:やっば……

:これ山主さんが作ったってマ?

:ホットケーキは生地が甘い。パンケーキはご飯用もあるので、生地が甘くなかったりする

:パティシエやん

:めっちゃ美味そう!

:デザートまで作れるとかハイスペすぎんか?

:これでまだダンジョン食材出てきてないんですか……?

:シンプルに料理が上手い

:フワッフワで草ですわよ

:店のクオリティ

:これは女子にモテますわ


 あ、雑学書いてくれた人いたわ。へー、そういう違いなのか。じゃあこれはホットケーキ? でも名前的にはスフレパンケーキが正しいんだよな多分。スフレホットケーキってあったっけ?

 まあ、味には関係ないし別にいっか。ともかく、チャチャッと残りの生地も焼いていきましょうねー。

 なお、先に完成したやつは余熱してたオーブンいきです。これで多分冷めやしないだろう。最後にもう一回軽く焼くのもアリ。


「じゃあ、残りも作るべ作るべ」


 それではいってみよう。










ーーー

あとがき

皆様に、この場を借りてお知らせがあります。

なんと『次にくるライトノベル大賞2024』に、本作がノミネートされました! いえーいどんどんぱふぱふ!


そんなわけで、よろしければ投票をお願いいたします! 番号は【21】です! よろしくお願いします!!!!!


てか、コレって該当期間中に発売されたシリーズが自動的に対象になるんじゃないのね。いや、私もよくわかってないんだけどさ。ノミネートってことは、選ばれたってことでしょ? 報告受けた時はビックリした。うん。


ま、そんなわけで。入れてね? 入れて入れて入れて入れて入れて!!!!!

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