第157話 オハナシ
──結論から言うと、身バレしました。多分だけど。
「いやはや、言われてみれば盲点だったなぁ」
天目先輩に指摘され、マネさんたちのもとにとんぼ返りして相談した結果、高確率でしてるんじゃないかと言われてしまった。
おかげで緊急対策会議ですよ。帰ろうと思ってたのにタスクが生えてきて悲しかった。
ちなみに身バレした理由は、雷火さんによる年齢ポロリだと思われる。高校関係者ばかりから連絡来てたことを考えると、まず間違いないだろう。
まあ、高一で探索者デビューして、そのままずっと続けられる人種って少数派だしね。そんで高校卒業から二、三年ぐらいしか経ってないことを考えると、同級生とかなら確かにバレるわなって感じ。絡み自体は少なくとも、印象的ではあっただろうし。
あ、ちゃんと他の可能性も検証したよ。その上で、それっきゃ理由はないよねってなった。なにせデビューするまではネット上で活動なんかしてなかったし、デビュー後は身バレに繋がるような情報をポロリした記憶がない。
んで、プライベートである『夜桜猪王』側については言わずもがな。玉木さんたちによって情報関係はガッチガチに固められているので、そこからすっぱ抜かれることはまずありえない。……関係者からのリークは一旦考えないものとする。
『ごべんねぇ……!! ボダンごべんねぇっ!!』
「ガチ泣きで草」
そんなわけで、ただいま元凶さんから全力の謝罪を受けております。……なんか大袈裟では?
「どうしたのよ雷火さん。謝るのはまあ分かるけど、泣かれるほどとは思ってなかったんだけど?」
『だっでボダン怒っでると思ってぇ! 凄い迷惑掛けぢゃったじぃ……!』
「いや怒ってないけど」
『身バレさせたってこどで、もじかしだら逮捕とがあると思ってぇ……!!』
「ねぇよ」
何でだよ。年齢ポロリ、しかも悪意ゼロでやらかしただけで逮捕とかされんから。そりゃうっかりミスがすべての免罪符になるとは思ってないけど、年齢ポロリ程度なら十分に通用するよ。そもそも罪ですらないし。
動揺してるが故の暴走なんだろうけど、あまりに正気を失いすぎている。何をどうしたらそんな結論に至る羽目になったのか。
「ちょっと落ち着きなよ雷火さん。逮捕されるとしたら、俺の個人情報を悪用した馬鹿だけだよ。雷火さんがそういうことをしない限り、逮捕とかされるわけがないでしょ」
『……ほんどうに?』
「本当だよ。それとも悪用する予定とかあんの?」
『ないでずぅ……!』
「じゃあ泣きやみなさい」
『ぢょっと待っててぇ……!』
一旦雷火さんが離席。顔を洗いにでも行ったのだろう。あと鼻とかかみに。
『……戻りました』
「おかえりなさい。正気に戻った?」
『いまでも申し訳なさと恐怖でキツイです……』
「申し訳なさは分かるけど、恐怖って何よ?」
『……ボタンに迷惑掛けた罪で、もしかしたら消されるんじゃないかって。国とかに』
「やっぱりまだ正気失ってんな」
そんなことされるわけないでしょうが。少なくとも雷火さんは消されないよ。消されるとしたら個人情報ではしゃいだやつだけよ。
「俺が身内に危害加えさせるとでも?」
『それつまり身内じゃなければ消されるってことなんじゃ……』
「ニコッ」
『口で言わないで待ってめっちゃ怖い聞かなかったことにしてよろしいでしょうか!?』
「ジョーダンダヨ」
『ねぇどっち!? もうなんか全部ありそうで分かんないんだけど!? どこが冗談なの!? どっからどこまでが冗談なの!?』
とりあえず話を変えますか。
「まあ、ともかく。雷火さんが気に病む必要はないよ。いまのところ、特に困ってないし」
『……本当に?』
「本当。皆で久々に会おうとか、そんな感じの連絡が来るだけだし」
現段階だとそんな感じ。身バレこそしたものの、思ってたより平和かなと思っている。
まあ、不特定多数にバレたわけではないからね。あくまでかつてのクラスメート、その一部から探りを入れられている状況だ。
まだ慌てる段階じゃない。ここからの転び方によって対応を考える必要性こそあるものの、予想以上にあっけなく終息するパターンも全然ある。
「とりあえず、チャットは適当に返して様子見中。仕事が忙しいとか言って煙に巻いて、そのままフェードアウトできたらなって感じかなぁ」
『ブロックはしないんだ?』
「それだと言外に認めてるようなもんでしょ? あと、変に逆ギレされてばら撒かれても困るし」
『あー……。てか、意外だね。ボタン、クラスメートと連絡先交換してたんだ』
「いや、ほぼしてないかな。ただ学校行事とかの関係で、クラスのグルチャには入ってたからさ。そこからね?」
後悔先に立たずではあるけれど、卒業した時にさっさと退会しとけば良かったなとは思う。抜けるの忘れてたんだよね。卒業後はグルチャも滅多に動かなかったし。
おかげで面倒な手間が発生してしまった。ほとぼりが冷めたら退会しとかないと。
「まあ、あとはネットを監視しつつかなぁ。昔のクラスメートを疑うのもアレだけど、SNSや匿名掲示板とかに書き込む馬鹿も出るかもだし」
『それは本当に洒落にならないよね……。ちなみにだけど、やりそうな人っているの?』
「微妙。クラスの連中はそんなでもなかった気がするけど、学年全体だとアホなことしてる奴らもいたし。交友関係次第では普通にあると思う」
直接的なことを書きそうな奴らもいたし、匂わせをしそうな奴らはもっといた。
ネットに生息する野生の捜査班の力は侮れないし、場合によっては野生じゃない捜査班とかも出てくるだろうから……あんまり良い未来は想像できんよね。
『うぅ……なんか、本当にゴメンねボタン』
「お気になさらず。この活動をしてれば、いつかは起きてたことだろうし。むしろ、雷火さんも気をつけなよ? 反面教師にして良いから」
『はい。もう二度とこんなことを起こさないよう、肝に命じます』
そういや元凶だったねキミ。じゃあ言うまでもないか。
ーーー
あとがき
Amazonで紙の二巻の在庫が復活してましたね。ちょっとだけど。紙派の人は急ぐべし。
あと、AmazonUnlimited? ってやつだと、電子版一巻は無料になっております。多分。詳しくは各自お調べください。
この感じだと、ぼちぼちサイバー攻撃の影響が解消されていきそうですね。
それはそうと、最近少し悩んでることが。ほら、コミカライズのWeb版って金曜更新っぽいじゃないですか。
なので水曜の更新を、木曜あたりにズラそうかなぁって。……金曜にまでズラすと、日曜更新に響きそうだし。水金日は言わずもがな。無理。
なんでちょっと考えます。決めたらお知らせしますね。
あ、前回の質問で教えていただいた皆様、ありがとうございます。とても参考になりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます