第151話 エピローグ的なアレ

 というわけで、年齢=彼女いない歴から脱却しました。山主ボタンの中の人こと、夜桜猪王でございます。

 そして私の恋人となった人気アイドルVTuberの中の人、御堂紗奈さんですが……凄い釈然としない顔をされておる。なんでや。


「すいません。本っ当にすいません! ちょっと一旦落ち着かせてください! まだ頭の中がこんがらがってまして!!」

「ア、ハイ」


 告白を受け入れてから、大体五分ほど。その間、紗奈さんはずっとこんな調子だ。端的に言って悶々としている。俺の恋人、情緒不安定すぎやしやせんか?

 OKする前までのシリアス、何処に行ったって話である。直前まで泣きそうな顔をしてたのに。お互い、穴が空くんじゃないかってほどに見つめ合ったのに。悲しいぐらいにムードがなかった。


「俺、そこまで変なこと言いましたかねー」

「言ったか言ってないかで言えば、言ったような気もしないと言いきれないんですが!」

「なんて?」


 やっぱりまだ混乱しておるな。告白明けの空気かこれが……?


「だってアレ、明らかにお断りする流れだったじゃないですか! あの話の展開からOK出るとは思わないじゃないですか! 私、泣き喚きながら縋り付く寸前だったんですよ!?」

「寸前どころか、しっかりやってましたけどね」

「そうなんですけど! そうなんですけどね!?」


 あ、蹲った。改めて我が身を振り返ったら、思いのほか恥ずかしかったのかな?

 まあ、それだけ必死だったってことなのだろう。その対象だった身としては、悪い気もしないので微笑ましく思えるのだが。


「うぅぅぅっ! 配信の時もそうですけど、夜桜さんって本当によく梯子外してきますよね!?」

「お嫌いですか?」

「嫌いですけど大好きです!」


 完全にヤケクソである。見ている分にはとても楽しい。……まさかこれが恋?


「というか、あんなの予想できるわけないじゃないですか……。告白した側が言うのもアレですけど、あんな簡単にOK出して良いんですか……?」

「良いんじゃないですか? 俺としても、特に断る理由もないですし。いろいろ覚悟して付き合いたいと言うなら、そうですかとしか」

「軽いよぅ……」


 そうかな? 恋愛漫画じゃあるまいし、現実の交際ってこんなもんな気もするけど。両想いになってから付き合うなんて方が稀だと思う。


「いや、不満があるわけじゃないんです。私だって大人ですし、そういうものだってことも分かってます。……ただその、夜桜さんの場合は例外かなって。ほらその、特別じゃないですか。恋人になるには、何かしら条件があったりしないんですか?」

「ないですよ? 強いて言うなら……仲の良い人?」

「待って思ってた以上にハードルが低い」

「いや、そうでもないと思いますけど」


 基本的にアレコレ鈍くはしているけど、悪意などに関してはデフォルト設定のままだし。

 だから俺と仲良くなるには、俺に付属する諸々を前にしてなお、邪な感情を抱かない善性が必要になってくる。

 で、その上で性格的に合う合わないもあるので、意外とハードルは低くないんだよね。俺自身、性格的にはかなり癖があるし。なんならクズの部類だ。


「友人付き合いならまだしも、恋人云々になると無理って人も多いでしょうし。そんなにですよ」

「でもそれ、夜桜さん側は来る者拒まずってことですよね……?」

「まあ、はい」

「ぶっちゃけ、私がOKされたのものそういうことですよね? 早い者勝ち的な……」

「そうですね」


 常識的に考えて、肯定するのはどうなんだって話ではあるのだが。すでにさっき、似たようなこと言っているのでね。ここは誤魔化さずにいこうと思う。


「軽蔑しましたか?」

「いえ。さっきの言葉は本気です。夜桜さんのそばにいられるのなら、愛人でもなんでも良かったんです。だからどんな理由でもOKです。お付き合い、できただけでも……」

「え、ちょっ!? どうしました!?」

「す、すいません! その、話してたら、やっと実感が湧いてきて。嬉しくて……!」


 あ、嬉し泣き? 急に涙流したからビック……嬉し泣き!? え、そんなことある? 振られて泣くなら分かるけど、OKされて泣くの!? しかも時間差で!?

 えーと、これはそこまで想われてたってことでよろしいのかしら? それとも、万に一つも勝算がないと思ってたってことか?

 どっちにしろ、俺ってそんな上等な人間じゃないのだが……。探索者としての才能があったってだけで、人間としての厚みはそんなないのだが。ただのギャンブラー気質の浪漫主義者だぞ俺。


「えーと、抱き締めたりした方が良いですか……?」

「それされると、多分本格的に泣いちゃいます、から……」

「左様で」


 じゃあ、とりあえず見守るだけに留めておきます。……これ恋人として正しいんか?

 いや、した方が良いムーブはいくつか想像できるんだけどさ。でもそれやると、多分だけど紗奈さん申告通りマジ泣きするし……。

 わざわざ泣かせにいくのも違うよなって。かと言って、スマホで調べるわけにもいかんし。いくら俺でも、この空気でスマホ弄るのはアカンってことは分かるもん。

 どうしよう? 肩を叩く感じにしてお茶を濁すか?


「……夜桜さん」

「はい?」

「その、私の方からも、言わせてください。不束者ではありますが、何卒よろしくお願いします」

「あー、はい。クズで恋愛初心者なので、絶対に苦労やら心労やらを掛けるとは思いますけど……。なるべく愛想を尽かされないよう努力するので、ええ。頑張ります」

「ふふっ。大丈夫ですよ。私が愛想を尽かすなんてこと、絶対にありませんから」

「……」


 あんまこういうこと言っちゃ駄目なんだろうけど、どうだかなぁ……? ワンチャン、一カ月もせずに破局とかもある気がするのだが。


「まあ、紗奈さん次第かぁ……」

「そうですね。だから、絶対に逃がしませんよ?」

「ヒェッ」


 薄々そんな気はしてたけど、さてはこの人わりと重いな? ……よくよく考えたら告白の台詞の時点で重かったわ。

 都合の良い女でも構わないって何なん? 告白の時にそんな台詞吐くことありゅ?

 これさては早まったか? 大丈夫? 恋愛初心者なんだけど俺。ハードモード通り越してルナティックだったりしない?





ーーー

あとがき

失礼、遅れた。夜中に急遽お皿が回るところにいかなきゃいけなくなってじゃな。

ま、それはともかく。これにて本章は終わり。次章はまたシリアス寄りの内容にする予定。


コ イ ツ が マ ト モ な ラ ブ コ メ を で き る と お も う か ?


以上、嘘の嘘予告でした。ばいちゃ

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