第145話 VS 山主コラボ その三

「今日はなんと、山主さんに私の手料理を食べていただこうと思ってます!」

「つまるところ、普段と逆ですね。ウタちゃんさんが振る舞う側で、俺が振る舞われる側。男は台所に入ってくんなってことです」

「言い方ァ!! 別にそういう意図はないですからね!?」

「じゃあ大炎上させて火達磨にしてやる的な……?」

「ないです!! 山主さん、分かってて言ってますよね!?」

「歴史は繰り返される」

「それを言われると強く出れないんですけども! なんなら今ここで土下座しましょうか!?」

「いやん。違う意味で燃えちゃう」


 ライブラのライバーに土下座させるとか、大炎上待ったなしですやん。ユニコーンどころか、一般ファンたちの頭も煮え立っちゃう。

 なお、実際はわりと真面目に土下座案件だった模様。と言っても、本人は土下座できる状況にいなかったわけだが。


「でも実際のところ、結構攻めてますよねコレ。言われた時はマジかって思いましたし。……炎上しません?」

「むしろ山主さんの目的からすると、こっち系の炎上はドンと来いでは?」

「炎上目的と言われたらそれはそう」


:草

:草

:厄介勢を炙り出すためにやってるからなぁ

:草

:認めちゃったよw

:新手の炎上芸だもんな

:草

:草

:草

:賢い奴はむしろ黙るんだよなぁ

:草


 これで厄介ファンとやらが吹き上がってくれたら、駆除作業も捗るってのは間違いない。

 ただそれはそれとして、ウタちゃんさん側のファンもうるさくなるのでは? もちろん、相手側の厄介勢を駆除するのを手伝うと宣言はしたけど、今回のムーブは厄介勢どころか一般層にまで届くんでねぇかなと。


「まあ、俺が杞憂民になりすぎてもアレですし、ウタちゃんさんが良いって言うならそれまでなんですがね」

「そこは本当にご心配なくです。正直、この程度のことをいちいち気にしてたらキリがないですし。あと、こう言うと問題かもですけど、手料理以上に凄いこととかやってますしね」

「待って不意打ちでエグいこと言われた。手料理以上のことってなんすか!? 心当たりないんですけど!?」

「お互いに住所交換したじゃないですか。なんなら私の方は実家の住所も」

「お中元のためですけどね!? 決して邪な理由ではないですけどね!?」


 相当プライベートな情報を知ってると言われたらそらそうだけども! ご家族含めて、本名諸々知ってるけども!

 でもそれはアレじゃん! ウタちゃんさんを助けたことに伴う諸般の事情ってやつであって、いかがわしい言い方をされるととても困るというかね!?


「あはは。さっきのお返しですよー」

「勘弁してくださいよ……。不謹慎ネタより、スキャンダル寄りのネタの方が火力高いんですから。俺もウタちゃんさんもそういうキャラで売ってない分、余計に真実味みたいなの出るじゃないっすか」

「まあ、それは確かに。テマリちゃんとかじゃないと、こういうのは許されないですね。ごめんなさい」

「謝っていただくほどではないですが……」

「でも冗談抜きで、山主さんは私の大恩人なんですよ? お返しだって全然できてない。それなのに、手料理を振舞う程度でアレコレ文句言われてもって話じゃないですか。……あ、私の料理如きがお返しになるって意味じゃないので。そこはお間違えなく」

「いやいやいや。今をときめくアイドルVTuberであるウタちゃんさんの手料理とか、多くのオタクが血涙流して羨ましがりますよ」

「山主さんの料理は世界中の誰もが羨むじゃないですか」

「あんな男飯とアイドルの手料理が勝負になるわけないでしょ」


:男飯とアイドルの手料理じゃ比較対象にならないってのは同意だけど、山主さんの場合は例外なんよ

:草

:いや正直、ウタちゃんと山主さんだったら、俺は山主さんの料理を選ぶ

:草

:草

:たまにオスが出るよな山主さんって

:草

:どう考えても山主の料理なんだよなぁ

:材料費の時点で比べものになんねぇんだわ

:ウタちゃんの手料理も凄く食べたいけど、それ以上に山主さんのダンジョン飯を食べたい

:草生えるわ


 そりゃまあ、味に関しては俺の作る飯の方が圧倒的に上だろうけども。でも付加価値が違うじゃん? 男の飯は基本的に味しか評価項目はないけど、可愛い女の子の手料理はその時点で価値があるじゃん?

 てか、俺の飯なんてアレだからな。九割九分食材の質だからな。ダンジョン食材に価値があるのであって、付加価値なんてものは皆無だからな。

 ダンジョン食材さえ用意できれば、誰が作ろうと同じ。むしろ頻繁に適当やってる分、俺以外の人間が作る方が上等まである。


「はぁぁ。コメント欄分かってねぇなぁ。そもそも前提条件を揃えずに比べるなっての。一般食材にしろダンジョン食材にしろ、お互いに使うものは同じ。それでもう一回考えるんだよ。どう考えてもウタちゃんさんだろ」

「……意外と山主さんってコメントが多いですよ?」

「それ全員厄介勢ですね。あとで駆逐しときます」

「もっと自分のファンを大事にしましょう!?」


 条件揃えた上で、雑な男飯とアイドルの手料理で前者を選ぶのはただの馬鹿だよ。そんなの選ぶな。食いたきゃ自分で作れ。

 いや、コメント主が女性だったらまだ分かるのよ? ガチ恋勢とか関係なく、同性の推しと異性の推しなら、異性の方を選びたくなるのが人情だろうさ。

 でもコメント欄で俺を選んでるやつ、文体を見る限り半数以上が男じゃん。意図的に男っぽく書いてる場合もあるだろうけど、判別できない以上は男としてカウントするしかないわけで。

 シンプルにキショくね? アイドルの手料理より、俺の手料理を選択する男って。お前らそれでもオスかよ。可愛い女の子の手料理に飛び付くのが男のあるべき姿だろうが。スカすな。


「単純な話、山主さんの方が圧倒的にファンの母数が多いんですから……。この結果も当然だと思いますけど?」

「はーつっかえ。ウタんちゅもっと頑張れよ。百万人いるんだから、コメント欄をウタちゃんさんの名前で染めるぐらいやってみろって。推しを男に負けさすなよ」

「私のリスナーを煽らないでくださいよ!? てかそんなこと言うなら、山主さんのところなんて億越えてるじゃないですか! 流石に無理ですって!」

「寡兵よく大軍を破ることこそ男の本懐じゃないですか」

「山主さん本気で現代人ですか? 実は戦国時代あたりからタイムスリップしてきてたりしません?」

「何でそんな本気の眼をしてらっしゃるので?」

「山主さんなら割と真面目にありそうだなって思ってるからです」

「んなわけ」


 正真正銘の現代人じゃい。今の時代を生きてる母親の胎から産まれとるわい。


「はぁ。なら仕方ない。リスナーがこの体たらくであるのなら、ウタちゃんさん本人に頑張ってもらうしか道はないみたいです」

「山主さん?」

「ウタちゃんさん。是非ともこの配信で証明しましょう。俺みたいなのの男飯よりも、アイドルの手料理の方が万倍も尊いということを!」

「山主さん!? 勝手にハードル爆上げしないでくれませんか!?」

「俺みたいなクソ野郎の料理より、自分の方が遥かに美味しいものを作れるんだって世界に証明しましょう!」

「山主さん!? もしかしてワザとやってませんか!?」

「え、当たり前じゃないですか」

「山主さん!!」


:草

:草

:草

:草生えるわ

:草

:草ァ!

:草

:草

:草

:草


 定期的にネタを挟まないといけない病に罹ってるからね、俺。まあ、リスクヘッジってだけなんだけど。

 下手にガチっぽさが出て、活動に影響が出たらことじゃん? 特にウタちゃんさんはアイドルVTuberだし。コラボ相手にはちゃんと気遣いしなきゃね。これ常識よ。








ーーー

あとがき


てことで、主人公と料理勝負するコラボでしたー。なお食べ比べする食戟形式ではない。


そして前回の答え合わせですが、正解は『それとなく大型コラボの形式にすることで、ガチ恋疑惑のあるアメリカライバーとサシで合わせないようにした』です。

橋渡し役としてコラボに相乗りする、とコメントしてた人も結構いましたけど、そこまでやると不自然ですからね。

牽制するのと同じ効果を発揮させつつも、周囲に違和感を持たせない内容に留める。それが恋する乙女の強かさ。それが恋愛頭脳戦ってやつですよ。

あと補足すると、ライブラリアンはライブラ系列の男性プロダクションです。どっかの掲示板でちょろっと出てた……はずです。


あ、それと話は代わりますが、星三万を突破しました。ありがとうこざいます。……いやはえぇのよ。前回投稿して一時間ぐらいで達成しとるやん。マジかと思ったよ。


いやー、まさか本作の読者の方々の中に、こんなにも新規と呼んで差し支えない方々がいらしたとは。(チラッ


こんなに新しい人がいるんだったら、当然原作をまだ未購入の方もいっぱいいるんだろうなー(チラッ


ここまで言えば……お分かりですね? 私、活きのいい牡蠣は嫌いですけど、勘の良いお餓鬼の皆さんは大好きなんですよ(チラッチラッ


フライにされたくなければ買ってください

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る