第142話 箸休め的コラボ その二(八月後半、二十日ぐらい)
「……ま、それはともかく。そろそろゲームの話に移ろっか」
「そうっすね」
「今日やっていくゲームはこちら! 【ウルトラ・ファニーマン】です! このオンラインモードで遊んでいくよー!」
:これかぁ
:出た
:これは相性が求められる
:協力プレイだ
:楽しみ
:これなら山主さんもできるな
:どうなるかなー
:上手くできるだろうか?
:是非とも苦戦してほしい
:これ好き
ウルトラ・ファニーマン。一時期ネットに話題となり、その独特なビジュアルとゲーム性から今なお人気の……なんだろ? まあ、謎ゲーだな。うん。
ザックリ説明すると、スクワットの形で固定された不審者が、爪先と指先を駆使して跳ね回り、時に物や壁を掴んで移動してゴールを目指すゲームだ。
どう操作してもビジュアルがイカれているのでネタにしやすく、その上で難易度も高くプレイヤーのリアクションを引き出せる。
こうして分析していくと、配信適正の高いゲームと言えるだろう。……ただそれはそれとして、何を食べたらこんなイカれたゲームを思い付けるのかは不明だ。本当に何で作ったこのゲーム?
「山主君はゲームがお上手すぎて逆にできないらしいからねー。でもコレなら一筋縄ではいかないよー? だって私がいるからね!」
「別に上手なわけで……まあ似たようなもんか。とりあえず、お気遣いありがとうございます」
「いえいえ。一緒に遊べそうなゲームを選んだってだけだからねー。それじゃあ、ゲームスタート! あ、操作方法はやりながら覚えていく形でね?」
「ういっす」
えーと、俺が黄色の不審者で、根角さんがピンクの不審者か。んで操作方法は……基本的なPCゲーと同じかな。
まず試しにくるんと前に一回転。次に後ろに一回転。これで前後移動の仕方は把握。んで、回転しているタイミングでジャンプボタンを押すと、進行方向に跳ねるのね。タイミングの差で飛距離は変わりそう。
「はいはいはい」
「あははは! 相変わらずおかしいよねー、この絵ぇぇぇ!?」
「早い早い早い」
:一瞬で崖に落ちて草
:草
:草
:なんでそうなる?
:草
:綺麗にカッ飛んだな
:まだ開始一分も経ってないんですが
:草
:草
:草
:ゲームオーバーになるの早すぎワロス
弾丸のように後方に吹っ飛んでいったな。すぐ後ろ崖なのに。根角さん、足掻くことすらできずに落ちていったぞ。
このゲーム、協力プレイの場合は二人ともゴールしないとクリアにならないのよね……。つまり、この時点でリトライ確定ですありがとうございました。
なるほど。確かにこれなら、俺がいくらフィジカルによる神入力を連発しようが関係ない。なにせ俺のフィジカルが及ばないところで勝手に自爆される! ……これつまり介護要員では?
「根角さん、このゲーム既プレイでしたよね? ライブ見た記憶あるんですけど」
「あ、見ててくれたのー? ありがとー。……それはそれとして、山主君に良いこと教えてあげる。ゲームは操作感を憶えてなきゃ、初見プレイと大差ないんだよ?」
「壁に掴まりながら言ってると説得力ダンチですね」
「見てないで助けて〜」
堂々とそんなこと言えるなら、なんで躊躇なくコロコロ前に転がっていったんです? 穴を飛び越えようとしたのは分かったけど、ものの見事にホールインワンしかけてたら世話ねぇのよ。
「これは……どうすれば?」
「掴んで! 上手い具合に掴んで、グイッて引っ張って! そうすればイけるはずだから!」
「掴み、掴み……こうすか?」
「そうそう! それで私、ぁぁぁぁ!?」
「何で今ジャンプしようとした?」
:草
:草
:草
:これは仲良死
:草
:引き摺り落としてて草
:草
:山主巻き添えで草
:草
:草
:ギリギリで引っ掛かっとるな
:これクリアできるんか?
人が掴んでる状態で暴れないで? そりゃ確かに穴の中でビチビチしてたら、反動で上手いこと上がれたりするけどさ。
このゲーム、物理エンジンに若干怪しいところあるじゃないですか。だから悪足掻き以外でレバガチャ系の操作は悪手でしょうに。
おかげで俺まで落ち掛けてるんですけど。なんとか爪先を壁に引っ掛けて耐えてるけど、これ端的に言って詰みでは?
「これ落ちて良いすか?」
「いやイける! 頑張ればまだイけるよ! ほら揺らしながら壁を蹴っていけば……あ」
「あ、じゃねぇんですけど」
:そらそうよ
:草
:草
:あの状況で暴れたらそうなるわ
:草
:目ん玉ガラスか?
:草
:この状況から入れる保険があるんですか(ないです)
:草
:ド戦犯で草
:チウちゃんさぁ……
二人揃って穴の中じゃないですかちょっとぉ……。ギリギリ踏ん張って落ちてないけど、これもう無理ぞ。俺はワンチャンあるかもだけど、根角さんが位置的にアウトや。
てか、そもそもタイムアタック要素あるんですわこのゲーム。ゴールすればクリア判定だけど、それとは別にミッションがステージごとにあってですね。クリアタイムもその一つなのよ。
序盤は問題ないけど、中盤ぐらいからミッション報酬を消費してステージを解放していく仕様なので……。ここまで詰みだと諦めた方が無難なのよね。
「あー、リトライしますね」
「あれー? こんなはずじゃなかったんだけどなー……」
「ちなみに何を予定してたんですか?」
「そりゃもちろん、ドヤ顔で山主君にレクチャーして、登録者数世界一位になった時に『山主君は私が育てた』って自慢するため」
「壮大な計画すぎる」
後方師匠面するにしても限度があるだろ。ゲーム上の不審者の動かし方を教えたところで、何が誇れるって言うんだ。
そもそもできてねぇし。むしろ俺がキャリーしてるまであるし。配信見てるから初見とまではいかないけど、初プレイではあるんですけど?
「待っててね! 操作感を思い出したら、ちゃんと教えてあげるから!」
「あ、じゃあ協力プレイが必要な箇所が出てくるまで先に行きますね」
「待ってー!? 置いてかないでー!?」
むしろ早く来てくれません? 師匠、割と真面目に苦戦しすぎなんですよ。これまだ第一面なんですけど分かっ……てないねぇ!? 何でまた落ちてんだよコレだと俺もクリアになんないんだけど!?
ーーー
あとがき
箸休めだし、この話これで終わりで良くね? ……まだみたい?
あ、タイトルの()は気にしないでください。作中時間を把握するための作者の目印です。
作中での描写があやふやなら、分かりやすい形で記録すれば良いという頭の良い(悪い)ウルトラCです。
それはそうと、なんか三つ石溜まって引いたらシエルきたわ。
https://x.com/aikwarendbiryut/status/1821849150385983520?t=SUtFK9tGJIJ1F_cpAjGaVA&s=19
あと、コレ。藍川先生がXに公開している、コミカライズ版の導入部分のリンクね。まだ読んでないって人は、ちゃんと見てくるように。
その上でいいね、RT、ブックマークとかよろしく。
あ、リンクは何あったら消します。その場合はご了承ください。
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