第141話 箸休め的コラボ その一
気付けば八月も後半。女性ライバーとのオフコラボ強化宣言してから、大体二週間ぐらいだろうか?
数としては二回。人数的には三人。ただ全員身内。これどうなんだろ? 強化になってる?
てか、地味に違う危機感が湧いてきてたり。これ、ムーブが完全に出会い厨では? 端的に言ってキショいのでは? そんな感じで自問自答する今日この頃。
いや、分かってる。てか、憶えてる。きっかけは厄介ファン。つまるところ女版ユニコーンを駆逐するために始めたことだ。
理由はちゃんと外部に向けて周知した。コラボに名乗りを上げてくれたライバーさんたちも、発生するであろうデメリットを承知している。
だから別に問題があるというわけではないのだが。……ないのだが、それはそれとして個人的にはやはり思うところがある。
そもそもからして、俺はVTuberオタクである。それも最近この業界を知った新規ではなく、VTuber黎明期を知っている古参だ。……一応言っておくが、誇ってるわけではない。ただの事実を語っているだけである。
で、よ。そんな古いオタクの性なのか、どうしても昔の感覚というものが抜けきらないのだ。懐古厨よろしく『昔はなー……』って言いそうになるのよ。
女性ライバーのお膝元で繁殖していくユニコーン。アイドル売りに舵をきったライブラ。混沌とした初期の環境から、どんどんしがらみが増えていき、それらはやがて境目となり、最終的には暗黙の了解というものが誕生した。
男女コラボが大変だった時代の誕生だ。オフコラボなんて滅多になかったんだよマジで。やって同箱内だからね。外部ライバーとのコラボタグが消えていった物悲しさったらないよ。
今は一周回ってその辺の壁は薄くなってるけど、それでも過去は消えない。あの時の空気感は今でも憶えているし、ライバー側に立つとやはり身構えてしまうものがある。
アンチもユニコーンも怖くはないが、それはそれとして面倒くせぇんだ。相手側にも気を遣わないといけないし、余計な労力が発生するとなれば倦厭したくもなるだろうさ。
あと、VTuber以前から培われたイメージもあるよね。ネットの世界の住人に対して、異性がリアルで会いたがるってアレじゃん? 古のオタクって、大なり小なりそういう刷り込みってあるじゃん?
俺の異性ライバー周りの価値観って、この二つの混合物なのよね。だからこそ割と根深いし、今回みたいな理由があってなお疼くのですよ。
「──はいどうも! バーチャル美少女おじさんの根角チウでーす! 今日はコラボ配信をしていくよー」
──そんなオタクの面倒なところを鎮めるためにも、一旦男性ライバーとのコラボを挟んで中和を試みようと思った次第です。……バ美肉してる人を男性ライバーとカウントして良いかは諸説あるが。
「てことで、自己紹介お願いします!」
「はいどうも。デンジラスのスーパー猟師、山主ボタンです。今日はよろしくお願いします」
:きちゃ
:山主さんだ!
:きちゃ!
:二回目か
:また珍しい組み合わせ
:バ美肉期待の星
:きちゃぁ
:ばんわー
:これオフ? それともネット?
:女性ライバーとのオフコラボ強化期間中の山主さんが、チウちゃんとコラボ。……妙だな?
:コラボ助かる
というわけで、本日のコラボ相手はバ美肉系VTuberの根角チウさんである。ソナタの宮殿でご一緒して以来……いや、雷火さんとのコラボの時にコメントでいたか。アレを絡みにカウントするべきかは悩むが。
ちなみに今日はオンラインでのコラボだ。わりと突発的に決まったので、流石にオフでやるのは難しかった。根角さんの場合は機材の問題もあるし。
「いやー、ダメ元でコラボのお誘いをしてみたけど、受けてくれて良かったよー。やっぱりこういうのは言ってみるもんだねぇ」
「誘われれば普通に受けますよ?」
「でも山主君、今は女性ライバーとのオフコラボに力を入れてるんでしょう? 経緯を聞いたら本当に笑っちゃったけど、それなら私は無理かなって思ってたんだー」
「性別不詳枠でも、根角さんならガチ恋勢は焼けるんで大丈夫ですよ」
「不詳じゃなくておじさんなんだけどなー? あと相変わらず殺意高いねぇ」
これに関しては、割とガチで思ってる。この人、細かい所作もちゃんと女性的だから。女性ライバーより風呂用品とかに詳しくて、逆に間違いを指摘してたレベルで女子力高いんだぞ。
初見勢やVTuberに詳しくないお客さんなら、普通にダメージ与えられるって。多分だけど。
そういう意味では、今回の箸休め的なコラボでは最適なお相手なのよね。俺は男性コラボなので一息つけるし、ギリギリでオフコラボ強化期間の対象に入ってないとも言えないし。
「で、だよ。このタイミングでコラボを受けてくれるってことは……バ美肉に興味があるってことで良いんだよね?」
まあ、代わりに謎のデメリットが発生しているわけだが。やっぱり無茶を通そうとすると、何かしらのコストが必要になってくるのが世の理ってやつなのだろうか?
「ないです」
「えー!? なんでよぅ! やろうよバ美肉! 両声類なら絶対にやるべきだよ!」
「偏見が凄い」
:草
:草
:草
:草
:でも山主さんのバ美肉見てみたいよなぁ
:山主さん両声類なの?
:草
:あの配信は衝撃だった
:草
:七色の声の持ち主
:正直めっちゃ可愛かったんだよなぁ
女声はあくまで宴会芸なんですよ。定番ネタの一つに昇格することはあるかもだけど、わざわざバ美肉に転向するのはちょっと……。
てか、女声を出せたところで面白い配信になるわけでもないし。消えていった数多の萌え声系ライバーがそれを裏付けている。
「でもなぁ、絶対にバ美肉向いてると思うんだよなぁ。つまり料理上手な美少女だよ? 覇権取れるよ?」
「自分でこういうこと言うのもどうなのかって思うんですけど、既に配信者として覇権は取ってるんですわ」
「それは本当にそう。あ、遅ればせながらお祝いさせていただきます。チャンネル登録者数日本一位、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「あと、もうすぐ世界一位にも届きそうだね」
「……そうなんですか?」
「知らなかったの!?」
だってチャンネル登録者とか、もうずっと増えてるから数えてなくて……。えぇ、そんなことになってんの? 今で世界ランキング二位? マジ?
「いや本当、私もビックリしたもん。私とのコラボのあとに日本一位になってたから、次コラボできた時におめでとうしようかなって思ってたのにさー。山主君、全然勢い止まらないし」
「半分ぐらい事故ですけどね。主にアメリカ」
「あれはもう伝説だよ。絶対に歴史に残るもん」
「是非とも残ってほしいところではありますね。あれは『誇り』として、子々孫々に伝える価値がある」
「……これはおっぱいの付いたイケメンだぁ」
「付いてないんですが?」
胸筋しかない細マッチョなんですが?
ーーー
あとがき
燃え尽きたぜ…真っ白にな…。
真面目に忙しすぎて死ぬかと思いました。どうにか山は越えたけど。
これで当分はまた週二ペースを維持できそう。
それはそれとして、またしてもお知らせです。
コンプティーク様にて掲載されている本作のコミカライズ版なのですが、閲覧手段の確認が取れましたので、この場を借りてご報告させていただきます。
まず直近で読みたいという方は、電子版のコンプティーク九月号を購入していただければとのことです。
また、約一ヶ月 〜 一ヶ月半ぐらいには、カドコミとニコニコ漫画にWeb掲載する予定とのことですので、両サイトをご利用している方はそちらでお待ちいただくのもアリかと思われます。
そんなわけですので、早く読みたいという方は電子版の購入、ゆっくり待てるよという方はカドコミorニコニコ漫画の利用、新規登録をオススメさせていただきます。
それでは最後に、本作のコミカライズ及び、原作小説をどうかよろしくお願いいたします。
特に原作小説ね! 一巻二巻買って! いっぱい買って! もっと買って! プリーズ U・Ri・A・GE !!
ところで、あれだけあった配布石全部使ってエレちゃん一体しか来なかったんですが? 水着ガチャも徐福ちゃん二体しか来なかったんですが? は?
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