第139話 特別ゲストにご飯をあげよう その二
コネッコ。空からダイナミックエントリーしてきた挙句、結果的に俺のことを火達磨にしてくれやがったヘルキャット(死にかけてただけ)。なお性別はオス。
紆余曲折……というにはアレか。厄介な諸々のエピソードは飼ってからだし。とりあえず、あまりに衝撃的な出会いについつい手を伸ばしてしまい、我が家の飼い猫にクラスチェンジした元野良猫だ。
そこから非常に、非っっっっ常に濃い日々を過ごし、大体三ヶ月。
ミルクを飲むのに四苦八苦したり、名前を間違って憶えて辻褄合わせに苦労したり、定期的に実家や玉木さんの家に預けられていた彼も、今や立派なわんぱく小僧に成長した。……元からわんぱく小僧ではあったのだが。
「人間に換算すれば、新生児から二、三歳ぐらいになった感じでしょ? いやー、動物の成長って早いよねぇ」
「ミャミャミャ!」
:それな
:めっちゃ早い
:分かるマン
:すーぐ大きくなる
:寿命が違うからね
:コネッコ君ご機嫌だねぇ
:ホンマに大きくなるの一瞬
:動物は早いよなぁ
:分かりみが深い
:ホンマそれな
本当、飼い始めた頃が懐かしいよ。いや、マジで大変だったからさ。
赤ちゃんの頃は排泄の補助してくださいねー、と獣医さんに言われた時は『ファッ!?』ってなったし、その後もトイレの場所を覚えさせるのにも苦労した。
他にもミルクを高頻度であげなきゃだったから、外出とかもあんまりできなかったしなぁ。用事がある時は母さん呼んで代わりに世話してもらったり、場合によっては一緒に連れ回すことになったりとか。
最近はそれがなくなったわけよ。トイレもちゃんとできるようになったし、ご飯も離乳食を卒業した。特にドライフードを食べられるようになったのはデカイね。自動餌やり機で対応できるようになったから。
「まーじで大きくなったよなぁ、お前さん」
「ウニ?」
もうね、感慨もひとしおってやつよ。てか、今更だけど無茶したなって思う。ペット初心者なのに、ガチの赤ちゃん猫を飼うとか。無謀も無謀よ。
そもそも俺、動物とかそんな興味なかったしさ。嫌いとまではいかないが、飼う予定なんてこれっぽっちもなかったのよ。
だって探索者、モンスター殺すもん。動物型だろうが、例外なく殺すもん。見た目の可愛さとかマジで関係ないからね。それぐらい動物に関しては無関心だった。
だからよく投げ出さなかったなって、我ながら思うわけですよ。助けた以上は、って考えもあった。でもそれ以上に、ライバーやってたのが大きいかなと。投げ出したら燃えるし。
つまるところ、これもまた巡り合わせなのだろう。なるべくしてそうなった。そして未来もまた、なるべくしてそうなるのだろう。
「それでまあ、ちゃんとしたご飯も食べられるようになったからね? ちょーっと我が家の在庫処理に協力してもらえるか試してみうかなと」
てことで、我が家の一員になったからには、しっかりと自らの立場と向き合っていただければなと、飼い主としては思うわけですよ!
魚とか肉とかさ、マジでいっぱいあるの! だから是非ともたんと食べてほしい。子猫の食事量なんてタカが知れてるけど、それでも塵も積もればなんとやら、ですよ。
「俺は食材の在庫処理ができて幸せ。コネッコ君は美味しい物が食べれて幸せ。リスナーは可愛い猫の映像が見れて幸せ。これぞ三方良しのパーペキな計画ですよ」
「ミャ?」
:猫の癖に俺より良いもん食ってやがる……
:飼い猫相手に言うことでもないんだろうけど、それでも裏山
:大丈夫それ? 普通の餌食べれなくならない?
:その皿に載ってるの、飯屋とかなら数万はすると思うんですが
:人の飯の味を知ったら大変よ? ましてや、ダンジョンの食材となると……
:まあ、ペットの食費って人間より高い場合もあるから。多少はね?
:栄養面とか大丈夫なん? 普通の餌を食べなくなったら、健康維持とかかなり面倒なことになると思うけど
:ワイも山主さんのペットになりたい
ほうほうほう。予想はしていたが、杞憂民が湧いておるわ。……まあ、杞憂というには妥当な心配ではあるのだが。
実際、その手の話は良く聞く。人間の食事の味を覚えて、ペットフードを食べなくなってしまった犬猫は普通にいるらしい。
だが安心してほしい。俺もちゃんと調べたから。子猫に生魚とかあげて大丈夫かなーとか、しっかり検索してるから。
そうした事例もちゃんと把握して、その上で決断したからね。しっかり解決策も用意しているとも。
「HAHAHA。皆も分かってないなー。普通のご飯を食べなくなる? 普通のご飯をあげなければ問題ないね。……残飯だけで何キロあると思ってんだ。マジで困ってんのよ。塵も積もれば山となるけど、そもそも積もらせる必要があるんだって」
「ンニ?」
「あと健康面に関しても心配ご無用。我が家にはポーションがある。不健康ドンと来い。片っ端から治したる」
我が家は普通の家じゃねぇんだよ! 不可能を可能にするパゥワーがあるんだよ!
これからは毎日ダンジョン飯さ! 普通のご飯を卒業させれば問題ない! これぞ正に天才的な発想!
幸いなことに、俺には永久保存が可能な空間袋があるしね。一度に大量生産して、ジップロックあたりに詰めて小分けにしておけば手間も少ない。
そして健康面もね、気にする必要はないんだよ。病気なんてさせないからね! 兆候があれば、とりあえずで飲ませれば無問題! ああ、なんて医者要らず。医者より断然費用掛かってるけど!
「個人や家庭内で消費する分にはね、お咎めなしなんですよ! だからこそできる無法! ついでに言うと、ペットだからこそできることでもある! 人間にやったら、勘違いの馬鹿が誕生すること確定だからね。猫にのみ許された特権。これぞ本当の猫可愛がり」
「ニッ!」
:なにそれエッグ……
:その手があったか
:草
:流石は非常識に定評のあるボタンニキ
:まあ、お猫様だから仕方ないね
:最強探索者だからこそできるパワープレイ
:凄い羨ましい
:家族の健康を気にしなくて良いのはずっこいなぁ……
:山主さんには珍しい富豪ムーブ
:草
:ポーションって本当にズル
:もうそこらの富豪より良いもん食っとるやん
:天才じゃなくて馬鹿の所業だよそれは
良いかい諸君。相手は動物なんだ。だから好きな物を食べさせてあげるんだ。アレコレ細かいことを考えるのは人間だけ。彼らは本能に生きているのだから。
もちろん、飼い主である以上は投げっぱなしとはいかない。それは義務の放棄だ。だからペットには伸び伸び生きてもらって、飼い主がひっそりケアするんだ。
俺はそれを第一に考えて、コネッコ君のことを世話しているんだよ。
「と言っても、ポーションは流石に最終手段だけどね。一応、俺の方でもバランスとか考えるよ。このマグロだって、そのままぽんとあげはしないよ。カリカリと混ぜる予定」
「ンニャァ!!」
おっと。カリカリと聞いてテンションぶち上がったな。カリカリって単語をちゃんと理解してるっぽいのよなぁ。本当にこの子って食いしん坊。
んじゃ、コネッコ君も暴れ出したし、そろそろ実食タイムといきますか。カメラもコネッコ君に合わせてセットしなきゃだ。
ーーー
あとがき
意外と長なってしまった。二話ぐらいで終わる予定だったのに。
なお、零時ジャストに投稿したのは狙ってやってます。遅れたわけじゃないです。
というのもね、コンプティークの発売日が九日。つまり明日、コミカライズ第一話が掲載されるわけですよ。
本当なら当日に最新話を投稿して宣伝をするところなのですが、生憎と私にそんな余裕がなくてですね。
いや本当に。マジでない。ガチでキツイ。なのでギリギリ前日と言えるタイミングで投稿しました。
そんなわけで皆様、本作のコミカライズ第一話をよろしくお願いします。面白かったら感想をXに投稿したり、拡散の方をよろしく。アンケート……はあるのか知らないんですけど、そういうのもよろしくオナシャス!
もちろん、コミカライズから原作の書籍版を買ってくれても良いのよ!? てか買って! いっぱい買って! もっと買って!
そんなわけで、よろしくお願いします!!!!!!
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