第138話 特別ゲストにご飯をあげよう その一

「──はい皆さんこんばんは。デンジラスのスーパー猟師、山主ボタンです」


 さて、今日も今日とて配信である。ちなみに、久しぶりのソロ配信だ。

 オフコラボ強化月間とは言ったものの、全ての配信をコラボで埋めることはできないからね。当たり前だが。

 スケジュールとの兼ね合いもあるし、コラボばっかりだと胃もたれするリスナーも出てくるであろうことを考えると、こうしてまったりソロ配信を挟むのも悪くはなかろうて。


「本日の配信ですが、いつも通りの料理配信を行うつもりです。ただ、今日は少しだけ趣向を変えてみようかなとも思っておりまして。そこは楽しんでいただけたらなと」


:料理助かる

:なにやんの?

:趣向を変えるとな?

:また飯テロかぁ

:待ってた

:飯テロの時間だぁぁぁ!

:今日はどんな食材が出てくるんだろ?

:ほーん?

:また何かやらかすの?

:楽しみ


 反応は悪くない。まあ、いつも通りと言ってしまえばそれまでだが。

 とりあえず、サクッと準備をするべ。今回はそこまで大層なことをやるつもりはないので、チャッチャカ進めていきましょう。


「えーと、今日の食材なんですが、既出の物を使っていこうと思います。……あー、あったあった。いつぞやで使った砲弾マグロの切り身。その切れ端部分ですね」


 コレを使ったのは、雷火さんとの初コラボの時だったかな? そう考えると結構前だな。……いや、鮮度的には新鮮そのものなんだけどさ。


「まあ、ぶっちゃけてしまいますと、今回はお試しの残飯処理みたいな感じです。ダンジョンの食材って大半が量あるからさ、一度の配信じゃ消費しきれんのよね。特に俺の場合、空間袋のおかげで新鮮なまま永久保存が可能だから」


:あー

:確かに

:配信に出てきた食材、大体デカイ

:永久保存とかチートすぎるのよ

:残飯処理か……

:いっそのこと俺たちにくれ

:なんて贅沢な悩みなんだ……

:改めて実感するリアルアイテムボックスのヤバさ

:高級食材の残飯処理とか頭おかしなるで

:もったいないと感じてしまう


 わりと切実だったりするのよね、この問題。別に放置したところで、だからどうしたって感じではあるのだけども。

 やはり俺も日本人だからか、食べ物を粗末にしているようで絶妙に据わりが悪くてなー。特に一度使った食材は、可能な限り使い切ってしまいたいのよね。未使用だったら気にしないんだけど。

 だが同時に、普段使いするにはなって感じではあるのよね。ダンジョン食材って。そもそも俺、配信以外ではそんな自炊しないし。

 近所の外食チェーン店からテイクアウトか、コンビニ飯か、はたまたカップ麺とか。わりとその辺りで済ませがち。自炊するにしても、パスタみたいなのをサッと作って終わらせちゃうし。

 わざわざ凝った料理を作らんのよね。それをやるなら配信でやるってなるし。……だから消費が少なくなる悪循環に陥っているわけだが。


「そんなわけで、今回はかなりユルッとした空気で進行していきたく思います。本当にお試しだからね。使う量も少量で。上手くいけば良いかなー、ぐらいの感じでやってきます」


 ま、それはともかく。じゃあ、調理の方に入っていきましょうかね。と言っても、今回に限っては調理もクソもないのだけど。


「まず用意した切れ端を刻みます。普段なら筋目とかを考慮して切るんですけど、今回はそういうのもなしで。ただただ刻みます」


 イメージとしてはなめろうが近いかな? ただし、なめろうほど包丁で叩かない感じで。ちゃんと食感が残るぐらい……あらみじんぐらいだろうか?


「んで、刻み終わった物を、こちらの浅めの皿に移しまして──はい、完成です」


:え、終わり?

:早ない?

:草

:今日はやけにシンプルやね

:速攻で終わってて草

:まあ、美味そうではあるけど……

:ミンチにしただけでは?

:お、おう……

:雑ぅ!

:でも多分、いや間違いなく美味いんだよな。あと高い

:草

:えぇ……

:今日どうしたん?


 うーん、案の定リスナーが困惑しておる。草ですわよ。

 いやまあ、ね? 実際のところ、そういう反応になるのも当然ではある。なにせこれまでの料理配信では、かなり手の込んだor見栄えの良い料理を作ってきたわけで。自画自賛するようでアレだが。

 そんな中で、いきなり手抜きレベルMAXみたいな料理を出されたら、そりゃ頭の上に疑問符が浮かぶことだろうさ。

 しかし、今回はこれで良いのである。てか、これ以上の調理は望ましくないのである。


「えー、不思議に思ってる方も多いと思いますので、何故これで完成なのかを説明させていただきます。ついでに言うと、コレが趣向を変える部分にも絡んできたりします。……ま、その前に移動しますか」


 一旦画面を切り替えまして。そんでマグロを持ってキッチンを出る。ここで長々と話す必要もないからね。腰を落ち着けて説明に入りましょう。


「さて、と。それでは話を戻しまして、皆さんの疑問に答えましょう。今回の料理ですが、実は私が食べる訳ではありません。この料理は、これから呼ぶ特別ゲストに振る舞うためのものです」


:特別ゲスト?

:今日ソロ配信だよね?

:コラボなん?

:急に流れが変わったな

:あ、まさかそういう?

:コラボ相手に向けての料理にしては、かなり酷くない?

:察した

:分かった(分かってない)

:誰よ特別ゲストって

:あー。言われてみれば、確かにもうそういう時期ですね

:誰なの? 怖いよぉッ!!


 ふむ。察しの良いリスナーもちょくちょくいるようだな。ただ分かっていない側の方が比率的に多そうなので、早めにネタばらしといきますか。

 それでは、リスナーに一言断りを入れてから、特別ゲストを迎えにいくとしますか。


「──では、ご紹介しましょう。本日の特別ゲスト。順調にスクスク育ち、最近離乳食を卒業した我が家の小さい怪獣。コネッコ君です」

「ニャッ」

「てことで、本日の真の企画はこちら! チビ猫に超高級食材あげてみた。産まれて初めてダンジョン食材デビュー! わー、パチパチパチ」

「ウニャァァ!」


 あ、コラ。連れてきた途端に暴れないの。構ってもらってテンション上がってるのは分かるけど、もう少し大人しくしんしゃい。









ーーー

あとがき


てことで、久しぶりのコネッコ君登場。コメントでも、ちょくちょく気にされてた人もいたのでね。


それはそうと、ばっかお前ホンマ……。衝撃のお知らせ連発するんじゃないよ。福袋しか課金しない民には、この鯖ラッシュはキツイぜ。ちなみに私はパイセンのことは名前ぐらいしか知りません。にわかです。


あ、あともう一点。大事なお知らせ。今月の九日に発売するコンプティーク9月号にて、本作のコミカライズ版が連載開始となります! わー、パチパチパチ!!


てことで、皆さん是非ともお読みいただければなと思います! ……まあ、私が気付いた時にはとっく予約終了してたんですけどね!! 

マジでビックリした。月刊誌が発売前に売り切れって本当にあるん? Amazonとか主要サイトも在庫全滅してるっぽいし。……やっぱりあの方スゲェわ。

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