第131話 長女コンビと末っ子長男コラボ(なお次男) その三

「まさか掴み用のアイテムでこんなことになるとは……」

「山主君はアレだね。何故この世に美容品なんて物が売られているか、一回ちゃんと考えた方が良いね」

「もの凄い恩恵に預かってしまった側としてこんなこと言うのは申し訳ないんだけど、本当に山主君そういうところだと思う」


:マジでそういうとこやぞ山主

:ダンジョンの美容品ってそんな凄いのな……

:厄介ファンではないけど嫉妬に狂いそう

:同じ事務所ってだけでズルい

:草

:そんなお手軽最強スキンケアアイテムがあるんか……

:これだけで女性ライバーからのコラボ申し込み殺到するレベルだろ

:山主さんは刺されないけど、デンジラスのライバーは刺されそう

:草

:シンプルにエグい

:ヤバすんぎ


 そんなになの? いや、女性が化粧品とかに気を遣っているのは知っているけどさ。だからこそ、サプライズ的な意味も込めてお渡ししたわけだし?

 でも、ここまでとは思わんやん? 常夏先輩はともかく、あの天目先輩まで配信放り出して確認しに行くレベルとは思わんやん? ……一応、二人揃って離席しないようにする程度の理性は残ってたっぽいけど。

 それでも過剰反応しすぎなんじゃねぇかなと感じてしまうのは、俺が男だからなのだろうか? それとも性別とか関係なくガサツだからか?

 個人的には、驚きと感謝が半々ぐらいで済むかなぁと思ってたんだけどなー。それで次の話題に進むための取っ掛りにするつもりだったんだけど……。


「いやでも、本当に凄いよコレ……! 見えるところだけでも!マジで染み一つなかった! 全身艶々スベスベだもん! さっきまでとは大違い!」

「うん。流石にお化粧までは落とせなかったから、確認はできてないけど、ファンデーションの下とかも身体と同じになってるってことだよね? ちょっと帰るのが楽しみかも」

「そうそれ! 腕だけで分かるもん! 肌年齢、絶対に十代前半ぐらいまで戻ってるって!」


 本当にエグい喜びようである。もう雰囲気が終盤に差し掛かってる。大トリを堪能したかのような


「なんか方針転換して、ダンジョン産の美容品レビュー回にした方が良い気がしてきたな」

「なぬっ!? ……つかぬことお訊きしますが、どんなアイテムがあるのでしょうか?」

「女性受けしそうなのだと……髪が一生痛まず艶々のままになる洗髪料とか?」

「なにそれ欲しい!」

「他には、飲むと余分な贅肉が汗になって流れ落ちる薬」

「そんなのあるの!?」

「揉むと胸が大きくなるグローブ」

「なにその素敵グッズ!?」

「使うとこんな感じで髪が伸びる櫛」

「うっそ本当に伸びた!?」

「パッと出せるやつだとこれぐらいでしょうか」


 あとは何があったかなぁ……? 適当に空間袋の中にぶち込んでるから、探せばもっといろいろあるとは思うのだが。

 てか、髪邪魔だな。見せた方が早いから実演したけど、流石に背中まで伸ばす必要はなかったか。襟足ぐらいからバッサリ落とそ。んで、切った髪はゴミ袋にポイ。


「うわっ。え、すっご……。マジで本物の髪じゃん。しかも超綺麗」

「こんな漫画みたいな道具あるんだね……」

「興味あるなら使ってみますか? その櫛なら好きなだけ試しても構いませんよ」

「本当に!?」

「良いの山主君!?」

「ええ。ただ伸ばしたあとの手入れに関しては、自己責任でおなしゃす」


:夢みたいなアイテムばっかで草

:キミ未来から来たロボットだったりしない?

:待って聞き捨てならないアイテムがあった

:また髪の話してる

:草

:おっぱいって揉むと大きくなるんですか!?

:あまりにも女性特攻のアイテムが多すぎる

:草

:飲むだけで痩せる薬って本当にあるの!?

:その櫛欲しい! ヘアアレンジめっちゃできるじゃん!

:なにそのエクストリームシャンプー

:おい最強のバストアップアイテムあったぞ今


 うーん。許可出した途端、めっちゃ楽しそうに櫛通して遊んでら。一瞬で好きな長さまで髪を伸ばせるってのは、やはり女性としてはテンションを上げざるを得ないのだろう。

 まあ、やってることは超高性能エクステだしね。わざわざ美容院に行って、お金と時間を掛けてやることが一瞬で、それも地毛でできるのだから、お得なんてものじゃないか。


「えー、これ本当に凄い。もう山主君がいれば、その日の気分でベリショもロングも選び放題じゃん!」

「常夏先輩。テンション上げるのは結構なんですが、流石に髪伸ばしすぎでは?」

「こんなに伸ばせることなんかないからね! 思い切って足元まで伸ばしてみた! どうかな!?」

「そんな感じの妖怪いましたよね。毛羽毛現でしたっけ?」

「けうけげん!?」


 つまるところ毛玉である。だって前髪までガッツリ伸ばしてんだもん。それ許されるのホラー映画の怨霊ぐらいでは?


「えっと、私はどうかな……?」

「天目先輩は似合ってますね。元が長いんでアレですけど、ボリューム増やしつつも上手い具合にまとめてますし。……てか、よくこんな短時間でそんな編み込みできますね?」

「緩くまとめただけだよ? ……えへへ、でも嬉しいな。似合ってるって言ってくれて」

「ちょっと山主君!? 私の時とリアクションに差がありすぎない!?」

「暖簾みたいに髪掻き分けて顔出してる人が何か言ってる」


:草

:草

:なにそれ見たい

:それよりおっぱいが大きくなるグローブについて詳しく!

:イチカちゃん可愛い

:そんなことになってるんか

:それはもう似合ってるって言われる方が侮辱やろ

:草

:サンちゃん……

:イチカちゃんがメスになってる……

:草

:毛羽毛現モードのファンアートができるなきっと

:草

:絵面がギャグなんよ


 別に俺も、人を選んで態度変えてるわけじゃないんですよ。見た目が毛羽毛現だから、毛羽毛現って言ってんすよこっちは。

 あと、その髪で動き回らないでください。シンプルに危ない。長さ的に床を擦ることはギリなさそうですけど、下手したら髪踏んで転びますよ?


「ほら常夏先輩。そこ座ってください。長すぎて危ないですから。半分ぐらい切りますよ」

「そんな!? 山主君知らないの!? 髪は女の命なんだよ!?」

「この場においては無限残機制なんすよ。あとで好きなだけ遊ばせてあげますから、とりあえず配信に支障が出ない長さにまで戻させてもらいます」

「待ってせめて鋏でやって!? いつの間にか持ってたそのゴッツイやつは止めて! コワイんだけどなにそれナイフ!?」

「スクラマサクスって種類の短剣っすよ。銘はカリバーン。ダンジョンで手に入れました」

「待って今聞き捨てならない名前聞こえたよ!?」


 聞き間違いでしょ。


「ほらバッサリ行きますよー。マジで遊びすぎですよ」

「いやアレは遊ぶって! 仕方ないって! ……ところでなんですけど、コレは私がどうこうではなく、リスナーの人たちのためにも訊いておくべきかなと思ってるんですけど」

「はあ」

「揉むとおっぱいが成長するグローブって、実際に効果を確認することってできませんかね……?」

「肌ぐらいならともかく、バストアップはわりとガチめな肉体改造なんすよねー。薬とは違うんで法的にはセーフだとは思うんですけど、身体のバランスとかが変わるんでシンプルに危ないかなと。物理的に手を加えない限りは、変化も不可逆寄りですし」

「ぐぬぬっ。ごもっともです……!」

「サンちゃんそこじゃない! それも気になりはするけどそこじゃない! カリバーンって言った! 山主君、絶対に今カリバーンって言った!!」


:カリバーン!? 本当にあのカリバーン!?

:それガチなやつか!? それマジのガチであのカリバーンか!?

:イギリス王室が動いちゃうぅぅぅ!

:おっぱいは気になるんだけど! それ以上に伝説の剣が出てきてそれどころじゃない!

:サンちゃん! オタク文化に疎いのは知ってるけど、せめてアーサー王伝説の固有名詞ぐらいは分かって! ゲームとかでも常連のアイテムだからそれ!

:形状がスクラマサクスなのが余計に怖い

:頼むからおっぱいに反応させてくれ!

:えぇ……

:選定の剣を散髪に使うな!

:山主さんのダンジョン論的に、ワンチャン本物でありそうなのが本当に駄目


 半分狙ってやったとは言え、思ってた以上の反応に草生えますわよ。皆、アーサー王伝説好きね。ちなみに本物ではないよ。

 あくまで伝説、偶像としての『カリバーン』が、ドロップ品として形になっただけだから。なのでそんな大層な物でもない。聖剣ではあるけど、特段固有の能力とかも宿ってないし。切れ味良くてめっちゃ頑丈なだけ。そんでエグい使い方すると折れる。悲しいことにビームは出ない。

 てか、原典でも折れてるしな。一応、打ち直した説もあるっぽいけど、その場合はエクスカリバーにクラスチェンジしてるんでしょ? あんま詳しくないからアレだけど。

 つまりオリジナルなわけがないのよね。天目先輩の反応が面白いから、まだ答え合わせはしないけど。こういうの超楽しい。







ーーー

あとがき


明日は大一番があります。私は頑張ってお姉ちゃんをお迎えします。


どうか皆さん応援してください。具体的には資金援助をしてください。やり方は各種販売サイトで、本作の一巻と二巻を買うだけです。紙も電子も問いません。


皆の元気を分けてくれ。ロジックタイプやる気型の広Pより。

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