第132話 長女コンビと末っ子長男コラボ(なお次男) その四
「……ビックリした。本当にビックリした。本物の選定の剣が、いきなり目の前に出てきたのかと思った」
「あの剣、そんな有名なの?」
「……サンちゃん、アーサー王伝説知らないの?」
「外国の童話?」
「……これがオタクと非オタの断絶」
:草
:草
:童話ではないですね……
:伝説って言ってるやろ
:イチカちゃんに大ダメージ
:草
:サンちゃんはサンちゃんで、何でVTuberやってるのか分からんのよな
:草
:ガチ目な非オタ。それがサンちゃん
:全編読めとは言わんけど、名前ぐらいは知っといた方がええで
:まあ、オタク以外は外国の物語とか、あんま詳しくないもんな
:草
カリバーンのネタばらしをしたら、思ってもない方向で天目先輩がダメージを負ったでござる。
んー、知識の差って人それぞれだし。あんまり気にする必要はないと個人的には思うのだが。……いや、これは知ってる側がダメージを受けてるから違うか?
「でもそっかぁ。山主君も凄い剣を持ってるんだねー。てことは、そのカリバーンが山主君の相棒ってやつなの?」
「いえ。アレはネタ用に引っ張り出したやつなんで、普段使いはしてないっすね。基本は量産品の数打ち物を使ってて、強敵用は……今はコレ使ってます。天叢雲剣」
「あまのむらくも!?」
「それは流石に私でも知ってるよ!? え、それってカリバーンってのと同じだよね? レプリカ的なのだよね? だって本物、熱田神宮の御神体だし……」
「いや、一応コレは本物カテゴリーだとは思いますよ? 須佐ノ男から直接奪ったやつなんで。ただダンジョン産なんで、歴史的価値は皆無っすけど」
:天叢雲剣!?
:我が国の三種の神器やんけ!!
:てか神様から直接ぶんどったとか無法かお前!
:山主さんアンタ、須佐之男とも戦ってんの!?
:ある意味そっちのが本物じゃねえか!
:えぇ……
:見してくださいお願いします!
:自分の国の神様ですらお構いなしか!
:御神体の方は形代だから、むしろそっちがオリジナルなのでは……
:写真ください!
:シンプルに国宝で草
:それ普通に国に献上すべきでは……?
大袈裟だなぁ。まあ、凄い剣であることは否定しないが、リスナーたちが反応している意味での価値は特にないってのに。……似たようなコメントも多かったので、写真はあげるけど。美術品ではないのよ?
前にも言ったが、人が信じるものが神なの。ダンジョンの神々=神話の神々とは断定できない以上、本物か偽物かは各自の判断でしかないわけで。
かつての不動明王然り、須佐之男然り。アレらを本物と信じる人にとっては本物で、名を騙ってるだけの偽物と判断してる人にとっては偽物なのだ。
現存する御神体だって、そう扱われるに足る背景があるからそうなっている。御神体に宿る歴史が価値を保証している。
逆に言えば、歴史的価値が皆無な時点で、俺の天叢雲剣は『そういう名前の剣』でしかない。そこに積み重ねた歴史の重みはなく、あるのは道具としての価値だけだ。
「あ、頭が……頭が痛いよ。こんなところで、本物の三種の神器が出てくるなんて……」
「サンちゃん、しっかりして。気持ちは痛いほど分かるけど、ね?」
「なんか意外な反応っすね。天目先輩がダメージ受けるのなら分かりますけど、常夏先輩がそんな感じになるなんて。カリバーンの時は反応薄かったのに」
「ワタシ、シュミ、カンコウ。ジンジャブッカク、メグル、スキ」
「あーね?」
カタコトなのは脇に置くとして。なるほど、そういう系か。常夏先輩、ガチ陽キャだしな。旅行が好きなのはイメージ通り。
んで、その一環で観光地の神社仏閣を巡っていると。サラッと熱田神宮とか、御神体とか出てきてるし、意外と歴女みたいな面もあるのかもな。
「歴史的価値がない時点で、ただの性能が良い剣でしかないと思いますがね」
「そう感じるのは山主君だけだからね?」
「あと、サラッと性能って言ってるの怖いんだけど。本物の天叢雲剣って、何ができるの?」
「性能っすか? 単純に剣として優れているのと、須佐之男が持つ嵐の神としての権能を一時的に発揮できます」
「……と言うと?」
「風を操ったり、雷を降らしたりとかですね。あと天候の悪化。全力で使うと、一瞬で超大型台風を生み出したりとかできますよ」
「それ端的に言って大量破壊兵器だよね!?」
「どう考えても個人が所有して良いものじゃないよ山主君!?」
:ゴリッゴリの気象兵器じゃねぇか!
:ナニソレ怖い
:アカンアカンアカン
:国宝とか関係なく回収案件だろそれ
:草。いや草じゃないが
:それ核ミサイルのスイッチと大差なくない?
:えぇ……
:日本滅んじゃう
:流石は本物の天叢雲剣だぁ……
:何で没収されてないの……?
:つまり山主さんがその気になれば、今この瞬間に台風を発生させられるってこと?
:気象操作とか個人が手にして良い力じゃないのよ
まあ、言いたいことは分かるのだが。仮にも日本神話のビックネームが使ってた神剣だし、これぐらいの力は持ってなきゃガッカリじゃん?
そもそも、地上でフルパワーを発揮させることなんてないけどね。てか、獲物を抜くことがない。なので危ない云々の心配は杞憂よ。……そういう問題じゃない? それはそう。
「山主君。私の記憶違いじゃなければ、ダンジョンのアイテムって、本当に駄目なやつは回収されるって言ってなかった?」
「されますよ。実際、これも回収されかけましたし」
「じゃあ何で持ってるの……?」
「これも空間袋と同じで、半分ぐらいユニークアイテム化してるんですよね。俺が許可を出せば一時的に貸し出すことはできるんですけど、一定期間が経つといつの間にか手元に戻ってくるという」
「何その呪いのアイテム」
「あながち間違いじゃないのが困るんですよねー。実際コレ、俺以外の人間が粗雑に扱うと祟るんで」
「え」
「……コイツを手に入れた時、無理矢理にでも回収しようとした偉い人らが、正体不明の体調不良でバッタバッタと倒れまして」
「ヒェッ……」
「もうガチなやつじゃんそれ……」
ガチなやつなんすよ。そもそも須佐之男って、黄泉である根の国とも縁深い神ですし。そら得物である天叢雲剣もそれぐらいできるよなって話でして。
それを分からなかった残念な人らが、一瞬で『分からされた』んですよね……。嫌な事件だった。
「そんなこともあって、回収の話は見事に流れたわけです」
「まあ、歴史でも天叢雲剣による祟りってあるもんね……」
「ちなみに大量破壊兵器的な側面に関しては、過程の差はあれど俺自身が独力で似た結果を実現できるので、どっちにしろじゃねというのが関係者の見解だったりします」
「ああ、うん……」
:言われてみればその通りやな
:草
:そういやそうだな
:ナチュラル大量破壊兵器でしたねあなた
:草
:それはそうなんだろうけども
:えぇ……
:草
:それでええんか?
:雑ゥ!
:ぐうの音も出ない
:ちょっと納得してしまった自分が嫌だ
まあ、政府が回収しようとした理由は別にあんだけどね。天候を操れるってことは、異常気象に対応できるってことだから。
嵐が来たら嵐を鎮め、日照りが続けば雨雲を呼ぶ。それができるだけで、政府としては喉から手が出るほどほしいのだ。国内の生産を安定させられるし、場合によっては外交にだって活用できる。
俺にしか使えんから、その企みも立ち消えになったけど。代わりに、お偉いさんが俺に頭を下げる回数が増えました。
国家規模の超戦力だから、恭しく扱われてると思った? 残念ガッツリ国に恩恵をもたらせる立場だからです!
ダンジョン産アイテムを仕入れてくる業者兼、特殊財源であるのと同時に、俺にはこんな感じの便利機能が多数搭載されているのです! だから国も涙を飲んで、活用する方向に舵を切っているのですよ。
「ちなみに今日のメインとして、天叢雲剣で遊んで貰おうかなと思ってました」
「できるかぁ!! もしかして私たちに台風を発生させようとしてる!?」
「いや、風を操れる貴重な経験をして貰おうかなと。物が物ですし、日本人としては外せないかなって」
「日本人だから畏れ多いんだよ!? そういう感情をキミは持ち得てないのかな!? 三種の神器を使わそうとする発想はヤバいからね!?」
「あと山主君。下手すると祟られるような物は、あんまり触りたくないかな……」
「それはそう」
:コイツほんま……
:畏れを持ち合わせてる人間は、神様なんかと戦わないから……
:良い経験ではあるんだろうけど
:同じ事務所の先輩を、ジェネリック日本武尊にしないでもろて
:そんな特級呪物みたいなの触らせんな
:楽しいという理由でやって良いことではない
:シンプルに頭がおかしい
:核ミサイルのスイッチ級の代物を、ホイホイ他人に握らせないでもろて
:サンちゃんたちも怖いだろ
うーん残念。……ああでも、良く考えたらアレだ。天目先輩、スカートだ。これだと風で遊ぶのは危険だな。パンチラ云々は普通に燃える。俺が燃える。
「今度皆で、山主君に常識を教える配信をした方が良いかもね」
「……エアリード、やってみる? あのゲーム、確か複数プレイに対応した新作出たよね?」
「ああ、うん。良いかもね」
「俺、配信で見たりしてるんで初見じゃないっすよ?」
「そうだった……。山主君はそういうタイプだった」
「クッソこのVオタめ……!」
「扱い」
仕方ないじゃん。沙界さんが配信でやってたんだから。そりゃ見るよ。俺、ゲーム配信基本しないし。
「もう疲れた。疲れたよぉイチカ……」
「うんうん。分かるよサンちゃん。私も結構疲れた」
「そんな時に最適なのが──」
「「もうアイテムは良いから!」」
「ア、ハイ」
ーーー
あとがき
お姉ちゃんはゲットしました。実弾一万。Googleポイント三千でどうにか。ギリ致命傷。……水着清夏で三万使ってるからね。クソがよ。
今後はおはガチャと、単発をせこせこ回しながら凸とアナザーのお祈りかなぁ。
どうも私、学マスの十連と相性悪いのよな。アプリごとのガチャの相性って、絶対に存在すると思ってる私です。
ゲームそのもののガチャと相性が良かったり、悪かったり。単発と十連で体感明らかに結果で差があったりとか。これに関して宗教じゃないと思ってる。
ちなみに今回の水着ガチャ全体のリザルトとしては、星5サポカ複数。通常清夏と手毬がすり抜け。アナザー咲季がこんにちは。そんでピックアップの二キャラです。通常清夏だけは本当に許されない。
それはそうと、サマーでジャンボな季節ですね。私も経済活動から解脱する準備を始めています。
ただそれはそれとして、やはり保険は大事だと思っておりますので、皆様にはどうか本作の一巻と二巻をご購入いただき、私の支援をしていただければなと思います。
今、お財布が軽いの。しかもこのあと、運命のアニバもあるから怖いの。ウマとアイドルと運命の夏の大三角形ホンマ止めて。
だから助けて。お願い。
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