第129話 長女コンビと末っ子長男コラボ(なお次男) その一
「──そういえば、結局オフコラボの申し込みってどれぐらいあったの?」
「あ、それ私も気になるかも」
「意外なことに、メタクソありました」
「それは予想できるけど。むしろ意外でもなんでもないでしょ」
そんなもんすかね? ……何でそんなジト目を向けてくるんすか? 何か言いたそうですけど、常夏先輩。そんで天目先輩も慈愛の目を向けんでください。意味が分からない。
本日は天目先輩と常夏先輩のオフコラボ。強化月間の記念すべき第一回目は、デンジラスの第一期生コンビと相成りました。
本当なら雷火さんの予定だったんだけど、一期生のお二人から『この日は空いてるけど』と連絡をいただいたので、飛び入りでセッティングした次第。
ちなみに、今は開始予定時刻までの待ち時間。直前の打ち合わせも終わったので、ちょっとした雑談タイムである。
「山主君は、結構な鈍感さんだからねー」
「数キロ先からの敵意にも反応できるんですが」
「そういうこと言ってるんじゃないから」
「知ってますけど」
多分、いや間違いなく恋愛とかそっち系の意味で言ってるんだろうけども。
でも仕方ねぇじゃん。予想通りとか言ったら、ナルシストっぽくてちょっと嫌だしさ。謙遜みたいなもんですよ。……なので思春期の子供を見るような視線は止めてくれませんかね、天目先輩。
「何でそんな微笑ましげなんですか?」
「んー? だって山主君、ちょっと前まで女性ライバーとのコラボには消極的だったでしょ? それが積極的になったんだから、変わったなぁって」
「あー、分かる。弟の成長を見守ってる姉の気分」
「そこは素直に、後輩の成長を見守る先輩でお願いします」
何故そこで姉になろうとしてくるのか。それが分からない。いや確かに俺は年下だけども。それでも普通に先輩後輩でええでしょうに。
「てか、先輩たちも普通に受け入れてますよね。今日のコラボもそっちからのオファーですし。女性ライバーと積極的にオフコラボするとか、正直引かれると思ってたんですが」
「いやだって、山主君だし」
「そうだね。山主君だもんね」
「それ絶妙に判断迷うんですけど……」
下心がないと信じられてるのか、それとも変なことをしても違和感がないという意味なのか。他にも複数の含みが感じられるので、マジで判断が付かないという。日頃の行いと言われたらそれはそう。
「もちろん、同じ事務所の仲間としての信頼もあるけどね? ただ現実的に考えてさ、わざわざライバーの子を狙う必要ないでしょ。山主君レベルだと、その気になれば人気アイドルだって普通に食い散らかせるじゃん」
「食い散らかすてあーた……」
「あはは……。私はサンちゃんとは別の理由かな。山主君、そもそも女の子に興味なさそうだし」
「それはそれで語弊がある言い方」
お二人とも俺のことを何だと思っているのだろうか? まあ、女性関係にだらしがないと思われてるよりはマシだけども。デンジラス、ライバー側はガッツリ女所帯だし。
「そもそも、アレだけ滅茶苦茶やって浮いた話が皆無な時点でねぇ? ……ネットではいろいろ言われてるけど、ライバー側だとそんなことないって普通に分かるし」
「むしろ私としては、もう少しそういう雰囲気を出してくれた方が……」
「なんすかそれ」
「ああいやっ! 変な意味じゃ……ごめん、やっぱり変な意味かも」
「え、一花? ……まさかそういう?」
「ち、違うよ!? そうじゃなくてさ、ちょっと不安にならない? だって、山主君ってただでさえ人間離れしてるのに、その手の本能的な部分すら感じられないとなるとさ……」
「あー。それは分かるかも。本格的に人間なのか疑わしくなってくるよね。年齢的に考えると、そういう気配を見せないことの方がおかしいし」
「アイ・アム・覚者。ノット・イズ・人類」
「それ、普通に反応に困るからやめてね?」
「あと山主君。それ、英文法的にはかなりおかしいと思う」
「うっす……」
天目先輩の指摘が一番堪えるな。ネタで言ったのは間違いないのだが、ちゃんと馬鹿が露呈した気分になる。……元から頭は良くないのだけど。
「で、実際のところどうなの? ぶっちゃけアレでしょ? オフコラボの募集したら、その手のお誘いもあったんじゃないの? 匂わせとかも込みで」
「凄いニコニコしてますね……」
「こういう話は大好きだからね!」
「えっと、どうなのかな山主君?」
「天目先輩は逆になんか不安そうですね」
「私は、ほら……あの子のこともあるし」
これ、どう答えても絶対に何処かに被弾するよな。凄い反応に困る。
あと、女の人って本当にそういう話が好きよね。ウタちゃんさんの時も、似たような話題になった記憶あるんだけど。
「……まあ、配信終わったあとに一杯どうすか、みたいなのは結構ありましたね」
「それは普通じゃない?」
「……初対面の男女っすよ?」
「サンちゃん、お酒かなり好きだから……」
そういやそうでしたね。デンジラスの酒カスの一人ですもんね、常夏先輩。
「いや、私だってガチ初対面の男の人が相手なら警戒するけどさ。山主君は違うじゃん。有名だし、そもそも向こうからオフコラボを立候補してるわけでしょ? 会っても良いって思ってるんだから、飲みに誘うぐらいは普通にするでしょ」
「あー……」
言われてみればごもっともである。……ごもっともではあるのだが、中々どうして素直に飲み込めない部分がある。
いや本当、俺がリスナーだった頃の認識を引きずってるからか、結構驚くのよね。VTuber、特に知名度ある人らのフットワークが意外と軽いの。
オフコラボとか、わりと気軽にオーケーされるもん。もちろん、俺の知名度とかの影響はあるんだろうけどさ。それでもレスポンスの速さに驚く部分がある。有名なライバーさんほど、その手の警戒心は強いのかなって思ってたんだけど。全然違うのよね。
だから実のところ、オフコラボの立候補の多さにはガチ目に驚いてたりする。そりゃ話題性とか諸々を考えれば、俺とのオフコラボは魅力的だろうけどさ。
でもそれ以上に、画面越しでしか絡みのない、場合によっては完全初対面の男と会うのって怖くないの? 俺だったら怖いと思うけど。
「……ふと思ったんだけどさ。山主君、実は結構ウブなところあるよね」
「……そうすか?」
「うん。男女観とかもなんか、わりと真面目な考え方してる気がする。じゃなきゃ女の子側の視点でそんな考えないって」
「いやあの、単にアレです。ネットの相手と、リアルで無闇に会っちゃいけませんって叩き込まれて育った世代なんで……」
「そこでろくろを回し出したのが、なによりの答えだと思うんだけど?」
「……すぅー」
ヤバいちょっと反論が思い付かない。いや、別にウブと思われたところで構いやしないんだけど。なんだろうな、この居心地の悪さ。
「……そろそろ時間なんで、この話題終わらせて良いですか?」
「あ、もうそんな時間か。じゃ終わりにしよっか。……最後に正直な感想言って良い?」
「……なんすか?」
「今の反応、ちょっとキュンとした。キミ、意外と可愛いところあるね」
「何故に!?」
「山主君、本当にそういうところだと思う……」
「天目先輩まで!?」
待って止めて!? その生暖かい視線は本当に止めて!? 超居心地悪いんですけど! 場合によっては反撃も辞さないぐらいには効くんですけど!
ーーー
あとがき
【重要】
近況ノートにてお知らせしましたが、特典SSのサイトが復活……復活? しました。リンクに変更ありませんので、お手元のリンクからお読みいただければなと思います。
以上
それはそうと、本当なら木金には投稿する予定だったんだけど、無理でした。だから今です。……そして日曜の更新は多分無理です。ゴメンね。
だって仕方ないじゃん。大変だったんだよ。水曜の夜に家の冷蔵庫が壊れやがりましてね。
処理できる食品を処理したり、冷蔵庫を買いにいったり、搬入するためにアレコレ片付けたりしてたら……ね?
サーバー攻撃といい、ネズミといい、最近なんやねんホンマ。呪われとるんかワシ。
でも大丈夫。明日選挙行ったら、そのまま美味しいもの食べてリフレッシュするんや。皆は選挙行っとるか? 行ける人は行くんやで。Xで調べれば大体分かるからな。
まあ、投票率にまつわる一般論はさておき。ですよ。ここ最近の不幸は、これでお終いになると思う。なるはずなんだ。
だってここで皆様に拡散したからね! さあ、不幸になりたくなかったら! 書籍版の一巻と二巻を買った上で周りにもオススメするんだなぁ!
ランサムウェアがなんぼのもんじゃい! そんな歴史のないチャラチャラしたウイルスがなんだってんだ! だったらこっちは歴史と伝統のある不幸の手紙だ! チェーンメールだ!
こういうのを何て言うか知ってるか!? ルネッサンスって言うんだよ!!!!!!
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