第128話 スラム街に火を放て

「──はいどうも。デンジラスのスーパー猟師、山主ボタンです。今日は皆さんに大切なお知らせがあって、配信させていただきました」


:ばんわー

:待ってた

:大切なお知らせとな?

:今度はなんぞ?

:お知らせって聞くと不安になる

:こんばんは!

:なになに

:お知らせとか怖すぎるんだけど

:また爆弾炸裂させんのか?

:やめてくれよな。山主さんのお知らせ、大概碌なことねぇんだもん


 コメント欄身構えすぎだろ。そんなに怖いか、俺が『お知らせ』と言うことが。……日頃の行いと言われたら頷くしかないが。

 とは言え、今回はそんなヘビーな内容ではない。雷火さんに指摘された件を、早速実行しようってだけの話である。

 なのでサクッと釘だけ刺して、サクッと終わらせる予定。雑談もなし……にできるかどうかは置いておいて、控える方針で。


「あー、そして今回のお知らせなんですが、できれば各種言語に対応した字幕を挿入した上で、切り抜きとして拡散していただければなと思います。特別な事情がない限り、アメリカの時のような言語の強制理解とかはやらないんで。あれ、戦闘モードだし」


 日本語以外のコメントは意識から外してるけど、まーじで多言語が飛び交ってるからな、俺のチャンネル。特にアメリカの一件以降からヤバい。

 チャンネル登録者も、メインとサブを分けた意味がなくなったレベルで爆増したし。はっきり言って、日本語のコメを探すのが難しいレベル。

 まあ、ライバーとしては有難いことではあるんだけどね。ただ注目度がワールドワイドになると、こういうお知らせとかも多言語対応させなきゃいけないのが……。そこは痛し痒しよな。


「んで、本題ね。この前さ、四谷先輩とオフコラボしたじゃん。それでご飯とお酒を提供したんだけど、結果的に四谷先輩がベロンベロンに酔っちゃたのよ。その時に失言とかもして、今ちょっと燃えてんのね。プチ炎上だけど」


:あれな

:何で燃えてんのか分かんないやつ

:唐突に求婚したのはマジ笑った

:四谷可愛いかった

:ガッツリ酔ってたよな

:あれかー

:やらかしたと言えばやらかしたか

:一部が騒いでるだけだろ

:別に燃えるほどでもないのにな

:VTuber、とりあえずで燃えがち

:正直、いきなり結婚しよは結構アウト寄りだと思う

:まあ、いつものと言えばいつもの


 ふむ。流石に外国語コメントの方は判断付かないが、日本語コメントの方はアレだな。賛否両論はありつつも、概ね『過剰反応しすぎじゃね?』って感じの空気だな。

 まあ、VTuber好きなら恒例行事みたいなもんだしな。大体慣れてるか。むしろ辟易としてるまである。


「一応ね? コラボしてた側としては、四谷先輩に思うところはないのよ。ごめんなさいって頭下げられて、俺も笑って謝罪を受け入れた。それで話は終わり。……とはいかなかったみたいでねぇ」


 いやー、本当に何で外野って無駄に騒ぐんだろうね? 雷火さんに言われて調べてみたけど、まあ酷いのなんの。

 ユニコーンで慣れてたつもりではあったけど、ガチ恋される側になるとまた印象が違うわ。俺が標的になるんだったら笑って返り討ちにするけど、俺の名前掲げながら標的に突っ込んでいく姿みるとクソ焦る。

 マジで止めろって思った。相手に申し訳なさすぎる。これを女性ライバーはその都度経験してるってんだから、割と真面目に凄いと思う。そりゃ精神も病むわ。


「軽く調べてみたところ、俺のファンを名乗ってる連中が、四谷先輩に対してアレコレ文句を言ってました。まあ、個人の好き嫌いにまではとやかく言わんから、感想程度なら無視するけど。……流石に限度はあるからな? わざわざ凸ったり、ライン越えの発言してる奴らは普通に〆る」


:あー……

:ヒエッ

:oh......

:それはそう

:山主さんは仁義に厳しい

:他人に迷惑かける奴に慈悲はない

:まーたキレとるよ

:怖い

:マジで自重せなアカンよ

:山主さんを他のVTuberと同じ扱いをしてはいけない

:やると言ったら本当にやるからなこの人

:厄介ファンたちホンマさぁ……


 とりあえず、理解はしてくれたようでなにより。……問題なのは、これでちゃんと理解してくれるような一般人と違って、本物には一切響いてないであろうことだろうか。


「俺はデビューしてからずっと、それはもうずーっとアンチや厄介コーンたちを相手にしてきた。だから俺も自分のファンには目を向けてなかったし、それで勘違いさせた部分もあるんだろう。だから改めて表明しておく。──俺に対してアレコレ言う連中よりも、俺の名前を掲げて相手のライバーさんに迷惑掛ける奴の方がムカつく。なので見つけたら優先的に法で殴るんで、覚悟するように」


 こちとら弁護士千人雇ってもビクともしない資産があるんじゃい。それに加えて、警察にもぶっといコネがあるんだからな。一週間で書類送検までやってやんよ。


「ちなみに示談はしません。アンチの時とかもそうでしたが、赤字とか関係なくやります。徹底的にやります。こちらが敗訴しても上告とか普通にします。なので俺のファンを名乗る人は、お行儀よくお願いします。日常のタスクの中に『裁判』を生やしたくはないでしょう? 海外勢もだぞ? 場合によってはサムにも頼るからな俺」


:うっす

:ガチなやつ

:資産家は敵に回したらアカンよ……

:アカン

:アメリカ大統領まで敵に回るの怖くない?

:マジで喧嘩売っちゃ駄目なやつ

:ヒェッ……

:ツテの中に大統領あるの怖すぎんだろ……

:冗談抜きで人生終わる

:ツテが最強すぎる

:訴訟大国アメリカが全面バックアップします


 これで怖いって言われるのも心外なんだけどね。これで被害被るの、アウト行為してる奴らだけだし。一般人に対しては基本無害よ? ……別に無害ではないか。


「まあ、経験則で語らせてもらうと、これだけ言っても馬鹿は動きます。動くから馬鹿なんです。……なので、健全なガチ恋勢を選別したいと思います」


 はい、ここでテロップ。口頭だけじゃ足りないと思って、ちゃんと作ったんだぞ。偉くない?


「てことで、今月を女性ライバーさんとのオフコラボ強化月間とします。現状だと、うちの事務所のメンバーからは既に了承済み。さらに絡みのある人たちの中で、俺とオフコラボしても良いって人は連絡ください。紹介してくれるのも可です」


:草

:草

:えぇ……

:それ大丈夫?

:また燃えそうなことしてる……

:ガチ恋勢を積極的に焼き払いにいくな

:草

:草

:怖いものなしがすぎるだろ

:草

:山主さんさぁ……


 仕方ないだろ。こういうのは被害が出てから行動するより、意図的に釣り出した方が早くて確実なんだから。害虫にしろ害獣にしろ、早めの対策と駆除が大事なんだよ。


「もちろん、これは下心あっての行動ではないです。あるのは厄介勢に対する殺意だけです。なので出会い目的とか、そういうのは気にしないで大丈夫です。ただ代わりに、ちょっと面倒な人たちがそちらにお邪魔するかもしれないので、それでも構わないというライバーさんだけ立候補をお願いします」


 俺の厄介ガチ恋勢が燃やしに来るかもしれないので、そこだけは要注意です。もちろん、直ぐに仕留めるつもりではいるけど、やっぱり多少はね?


「一応、オフコラボ云々はこちらの都合ではあるので、対価のようなものはいくつか考えてあります。まず大前提として、コラボの内容は先方の要望にできるだけ応えさせていただきます。またそれとは別に、俺の代名詞であるダンジョン食材もご提供させていただきます。配信に載せるかはお任せしますが」


 いつものように食レポ配信でも良いし、違う企画をやった後に裏でご馳走する形でも構わない。俺としては何でも良い。厄介勢を炙り出せさえすれば。


「あと、もう一つ。私も厄介ファンを抱えて困ってるって方は、俺に押し付けてしまっても構いません。事前に申し出ていただければ、それ相応の備えはします。コラボに対してアウト発言をしていた者がいたら、容赦なく刈り取ります。一緒に厄介者を駆逐しましょう。もちろん、後々に厄介勢が生えてきても付き合います。その都度コラボして仕留めましょう」


:草

:物騒すぎる

:抑止力になろうとしている

:草

:なんて物騒なお誘いなんだ

:こんなオフコラボの誘い文句があって堪るか

:草

:草

:絶対に誹謗中傷は許さないスタイル

:草

:俺の推しも是非コラボしてほしい

:やってることがバックヤードの怖いお兄さん

:これもう新手の治安維持機関だろ


 いやいやいや。これぐらい当然だろ。自分の厄介勢を処理するのに付き合ってもらうんだ。なら相手の厄介勢を請け負うぐらいはするさ。それも長期保証付きでね。人、それをコネと言う。

 あと表には出さないけど、裁判などを起こす場合はカンパも請け負うよ。お金なんて有り余ってるからね。ビバ、快適な配信ライフ。


「んじゃ、お誘いお待ちしております。以上で配信を終わります。お疲れ様でした。……マジでネットで他人に迷惑掛けてる奴ら、身の振り方を考えておけよ」









ーーー

あとがき


導入としてはこんな感じかなー。



それはそうと、二巻が発売されてもうすぐ一週間です。購入報告なども嬉しい限りです。そして皆さんが買っていただいた結果……なにも! 分かりませんでした!!


マジでサーバー死んでるせいで初動の売上げすら不明なんよ。一喜一憂すらできない悲しみと苦しみ。



あとなんか、ニコニコから抜かれた情報がダークウェブに落とされたとか話題ですね。ニコニコ超開示なんて言ってキャッキャしてる人らも見かけます。


分かってはいると思いますが、情報を拾いにいくのは普通に犯罪です。利敵行為です。そして広めるのも同様です。

冗談抜きでKADOKAWAクラスの大企業の法務部がこんにちはしてくる可能性があるので、マトモな倫理観をお持ちの方は静観一択です。


また、ダークウェブに拾いにいく=ハッカー側に生殺与奪の権を与えるのと同義と思っていた方が良いです。下手にアクセスしたら、ウイルスに感染させられる可能性もありますし。

そんなことは不可能なんて嘯いてる人もいますが、相手はKADOKAWAという大企業に攻撃を仕掛けたスーパーハカーです。自分が同レベルのことをできると確信がない限りは、下手な楽観論はやめましょう。それがリスクヘッジって奴です。


健全なユーザーの皆様にできることは二つだけ。公式からの発表が来るまで静観。そしてKADOKAWAの商品を購入して応援すること。



てことで、引き続き私の二巻を買ってください。一巻も含めて買ってください。

そうすれば私は嬉しい。皆様は続きが見れて嬉しい。KADOKAWAは売上げが上がって嬉しいの三方良しです。


買うのです。良いですか、買うのです。買うのです、買うのです……買うのです…………買うのです。

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