第125話 ……進む前の飲みコラボ その三

 えーと、まずスキレットを準備して、その他の具材も並べまして。んで、そのついでにチラリと四谷先輩を確認。


「わぁぁ……」


 語彙力死んでら。完全トリップしてて草ですわよ。ダンジョン食材食った人、大体こんな感じになるよなぁ。

 てか、あんだけ酒カス発言してたのに、今のところシャンパンに口つけてないのよね。どんだけ衝撃だったんだか。

 ふむ。一旦準備を中断。自分用に少量取り分けておいたカプレーゼがあるので、ちょっと確認してみましょうか。


「……ほほほ」


 うわっ、んまコレ。我ながら感心するわ。これ相当やってるわ。

 爽やかなオリーブの風味が鼻を抜け、そこにバジルの香りが遅れてやってきて凄い。マジでイタリアン。地中海を感じる。

 そして味もまた素晴らしいね。トマトの甘みと、それを包み込むプリズムソルトの塩味。しかし、塩分過多に感じない不思議。純粋に美味いんだ。塩なのに美味いんだ。見事な相乗効果が生まれてる。

 モッツァレラも最高だ。元々味は控えめだけど、だからこそアクセントとして素晴らしい。しかも黒胡椒やオリーブオイルと相性が良すぎる。それぞれの風味を弾力で綺麗に包み込んでいる。

 うん。これはナイスだ。全てが美味く調和している。これだけでも浸ってられる。


「……はぁぁぁぁ。ふぅ」


:これはエッ……!

:うわエッロ

:めっちゃ色気ある吐息してて草

:助かる

:草

:草

:そんな美味いのか

:うわぁ……

:マジで裏山

:四谷の写真見てきたけどマジで美味そう

:一回ガチで体験してみたいよなぁ

:これはエッチです


 あ、ワイン飲んだみたいですね。予想通りのリアクションしてら。

 だってこれ美味いもん。自画自賛になるけど、めっちゃ酒が進むもん。最初の衝撃から抜け出したら、そりゃクイッていきたくなるよ。

 やっぱりあっちの料理ってワインに合うよねぇ。まあ欧州だし、地形を考えれば当然なんだけどさ。……俺もちょっと飲みたくなってくるわ。料理全部作るまでお預けなんだけども。


「んま、はよ作っちゃいますか。……四谷先輩。一点お訊ねしたいことが」

「んー? なーにー?」

「今からアヒージョ作るんですけど、ニンニクどうします? 一応、無臭ニンニクではあるんですが、それでも気になります?」

「気遣いありがと。気にしないで入れて。明日は出掛ける予定ないし。それより重要なのは味だよ」

「わぁノータイム」


:草

:草

:草

:それでええんかお前

:女子力ぅ……

:草

:いやまあ、せっかく高級飯だし……

:ニンニクは重要。仕方ないね

:草

:無臭ニンニクなら大丈夫やろ

:最高クオリティを味わいたいのは分かる


 まあ、うん。本人が気にしないと言うのなら、こっちはそれに合わせるまでである。

 えーと、まずニンニクを一粒潰して。それから軽くスライス。んで、スキレットにオリーブオイルをドバーと入れて、そこに潰したニンニクをポイ。あとは弱火でじっくり熱して、香りを移す。

 さらにそれとは別に、ニンニクを数粒丸でいれる。これは具としてだね。じっくり火を入れてホクホクにしたら美味いんだ。

 おっと、香り付けにローズマリーも入れなきゃだな。あとアクセントとして唐辛子。これでベースは完成。


「待って凄い良い匂いしてきた」

「あ、四谷先輩。こっち来ちゃったんですか?」

「これでテーブル待機は無理だって。……もしかして邪魔?」

「いえ、別に。見てて楽しいなら」


 ここ、料理スタジオだけあって広いしね。後ろで覗かれるぐらいなら全然。

 さて、続きだ。まずはスライスしたニンニクを引き上げる。焦げたら困るからね。最後にまた入れます。

 んで、エリンギ、ベーコンを一口大にカット。そんでスキレットにポイ。さらにアンチョビも投入。軽く解して全体に馴染ませる。


「ふわぁ……」

「良い匂いしてきたでしょう?」

「これは……ヤバいね」


 ヤバいですよねぇ。やっぱりアヒージョって最高だよ。俺この料理かなり好き。考えた人は天才だよ。

 おっと、塩胡椒を忘れるところだった。なくても多分美味いけど、この二つで味を整えた方がもっと美味いからね。やらねば。

 で、全体的に煮たってくるまで暫し待つ。その間にバゲットをスライスして、皿に盛り付けておきましょう。

 それが終わったらメインイベント。卵です。ここに卵を三個ほど落とします。


「卵!? アヒージョに卵!?」

「これ美味いらしいんですよ。動画で見てやってみたくて」

「もう犯罪でしょこんなの! 絵面がヤバすぎるよ!?」

「写真撮ります?」

「取る! これは絶対に共有しなきゃだよ!」

「じゃあ、俺はその間にもう一品、簡単なの作っちゃいますねー」


:見てきたけどヤバい

:カップルチャンネルみたいなやり取りしてらと思ってたら、レベチな飯テロ食らったんだけど

:何あれ美味そすぎる

:今度作るわ

:ヤバくない?

:絶対美味いじゃん……

:何でそんな酷いことするの?

:アカンてあれ

:やっぱりアヒージョって罪だわ


 好評なようでなにより。それじゃあ、卵に火が入りすぎないよう、パパっと作っちゃいましょうか。

 次はデザート寄りのおつまみだ。これは本当に簡単だし、見栄えも良い。それでいて意外性も抜群……てか美味いのか分からんので、ちょっとした実験も兼ねてたり。


「まずぶどうを出します。今回は巨峰。今が旬らしいですね」

「巨峰。……デザート?」

「どうなんでしょうね? 数粒取って、軽く洗う。そして包丁で切れ目を入れて、皮を剥きます」

「ふんふん」

「で、これをお皿に盛り付けて、上から黒胡椒」

「ストーップ!! ……え、ぶどうだよね?」

「美味いらしいですよ? ぶどうに胡椒」

「……マジ?」

「マジ」


 ぶどうを紹介してるサイトとか調べたら、普通に出てくるんですよねコレ。まあ、サイトによっては生ハムとか添えたりしてますけど。

 俺も半信半疑ではあるのだが、農家の公式サイトとかで美味いと謳われているのなら、多分間違いではないんじゃないかなと。


「さて、卵も良い感じですね。んじゃ、これでひとまず完成にしましょう。とりあえず、この三品で。足りなかったら適当に追加します」

「あ、うん。……ぶどうに胡椒かぁ」


 凄い首傾げてる。そんな衝撃的だったんか。






ーーー

あとがき


はい、というわけで! 本日、本作の書籍版第二巻が発売でございます! 皆さん、紙でも電子でも良いので、是非とも買ってください! もちろん一巻と合わせてね!


今回の反響と、シリーズの売上げで続刊が決まります! なので超大事です! めっちゃ大事です!


まあ初動とか全然分かんないんだけどね! サーバーまだ死んでるから! クソがよ!!

……おかしくない? いや、別に私だけが被害が合ってるわけじゃないんだけどさ。それでもひでぇべこんなの。

予約まだできませんとか、何度聞いたよ。機会損失どんだけよ。私は悲しいよ。

しかもさ、近況報告でも書いたんだけど、特典小説とか載せてるサイトも死んでるんだって。だから特典見れないの。



以下、担当編集から皆様宛のメッセージです。


ーーー

現在、KADOKAWAで発生しているシステム障害のため

SSが閲覧できない状態となっております。

復旧の連絡が入りましたら近況ノートにて後日報告をさせていただきます。

ーーー


だそうです。本当、申し訳なさでいっぱいですよ。折角ご購入いただいたのに。購入者様が持つ正当な権利なのに、それを行使できないとか……。


正直、こんな状態で宣伝することに思うところもあるのですが。

それでも買っていただくためにも、このシリーズを続けるためにも、どうか皆様に頭を下げさせてください。


現在、私を含めた多くの作家が苦しい立場にあります。

宣伝はできず、販路は潰れ、特典なども満足に提供できない。機会損失はとても大きい。間違いなく売上げに影響が出るでしょう。

また、KADOKAWA様に対する風評被害も出ています。やれ身代金を払ったとか、データが抜かれたとかね。

公式からの情報を待たずに、憶測でアレコレ言っている人も多い。

あれ、困るんですよ。取引相手である我々も不安になりますし、KADOKAWA様にマイナスイメージがついたら、そのまま本の売上げにも繋がりかねない。

逆風です。状況的にはとても苦しい。その苦しい状況が、身勝手な悪意によって形成されたことが本当に悔しい。

だからお願いです。どうか本を買ってください。本作はもちろんですが、それ以外の本も買ってください。

私は新米作家です。ヒット作だって出したこともない木っ端です。だから、こういうことを言うのは身の程知らずみたいで気恥しい部分もあります。まるで代表面してるみたいじゃないですか。


それでもです。それでも、恥を忍んでお願いいたします。


私を、私たち作家を、そしてKADOKAWA様を助けてください。本を買って、応援してください。

この逆境を跳ね除ける勢いで。逆に良い宣伝の機会だったと、私たちがほくそ笑むことができるように。

このクソみたいな悪意に負けないためにも! 私たちが好きな作品を、文化を絶やさないためにも! どうか皆様の力をお貸しいただけないでしょうか!


よろしくお願いします。よろしくお願いします!!!!


長文、失礼いたしました。



PS.ネズミはまだ捕まりません。粘着シートいっぱい置いて、真ん中にデスモアもセットしてるんですけどね。そろそろ業者にお願いしたほうが良いのかしら……?

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