第124話 ……進む前の飲みコラボ その二
「ちなみに今回の料理ですが、メインの食材は市販品で賄う予定です。まあ、できるだけお高いのを用意しましたが。カプレーゼの場合だと、トマトとチーズですね」
「そうなの?」
「はい。その代わり、調味料をダンジョン産にしました。そうすれば数も作れますからね」
「なるほどー」
:なるほど
:調味料かー
:賢い
:確かにそれならギリギリを攻められるな
:ええやん
:ダンジョン産の調味料。気になる
:調べれば出てくるかな?
:楽しみ
:はえー
:ええなぁ
メイン食材は市販品でコストを抑え、全ての料理に流用できる調味料をダンジョン産の高級品に。
そうすれば、トータルの費用を天井いっぱいまで抑えながら、大量の料理を提供できるという寸法だ。我ながら頭良いと思う。
「ちなみになんですけど、シャンパン以外に飲みたいやつってあります?」
「えー。そりゃ飲めるのなら全部飲んでみたいけど、どうして?」
「お酒に合わせて料理も変わるじゃないですか。当然、調味料も。なので、流用できるかどうか的な話です。流用できれば、その分天井も遠のきますしね」
「あー。じゃあ、こっちのワインにしよっかな。とりあえず、今日はこの二本で」
「了解しましたー。……二本って結構飲みますね?」
「え、普通じゃない?」
普通……なのかなぁ。俺、あんまその辺の常識とか知らないんだよな。普通に飲む方ではあれけど、肉体が肉体だから一般人のそれとは比較対象にならんし。
初めて手を出した時からそんな感じなので、普通の人間のキャパってのがイマイチ分からんのよね。その上で言わせてもらうと、二本って多くないって思う。え、多くないの?
「まあ、同系統の品を選んでくれたのは助かりました。それじゃあ、今日はイタリアンとかそっち系で進めましょうか」
「はーい。お願いします」
「それじゃあ、まずは食材紹介から」
用意するのはこちら。まずトマト、バジル、モッツァレラチーズ。この三つは市販品。
次にダンジョン食材。塩、オリーブオイル、ブラックペッパーでございます。
材料これだけ。カプレーゼがどれだけお手軽なメニューなのかが分かりますね。
「……はい、山主君」
「なんです?」
「それ、何?」
「それ……あー、塩ですけど?」
「……光ってない?」
「そういう塩なんですよ。ちなみに百グラムで三万ぐらいします」
「塩なのに!?」
:塩光ってるの!?
:草
:光る塩isナニ
:光る塩……あー、もしかしてプリズムソルトか?
:塩って光るんですか……?
:またけったいな代物を持ってきたな
:百グラム三万!? 塩で!?
:草
:たまに分かってそうなコメントあって草ですわよ
:当たり前のように言うな
:たっか……!?
:なにそれ怖い
:草
:草
正確には、光ってるように見える塩なのだが。もっと言うと岩塩。
コメントでも既に書かれているが、名前はプリズムソルト。食料系ダンジョンの中層に出てくる、ゴーレムみたいな岩石系のモンスターからドロップする岩塩だ。
塊の段階ではまんまプリズムのような見た目をしており、細かく砕くと小さな光を乱反射して独特の輝きを放っているように見える特徴がある。
ちなみに味はバカ美味い。塩なのにちゃんと違いが分かるレベルで美味い。謎すぎて脳がバグるよ。
「こ、この際だから、他のやつの説明もお願いして良いかな……?」
「あ、はい。こっちがマンイーターからドロップしたオリーブオイルです。で、こっちがマンイーターからドロップした黒胡椒です」
「マンイーター!? 何かすっごい物騒なんだけど! あとどっちも同じモンスターなの!? オリーブと黒胡椒なのに!?」
「植物系って、ドロップがわりと節操ないんですよねー」
特にマンイーターな。アイツ、色んな木の実くっ付けてるから、それによってドロップの内容が左右されるのよ。
中層のモンスターってことで比較的簡単に遭遇できるし、ドロップする食材のレパートリーが増えるから、わりとお得なモンスターではあるんだが……。
場合によっては、マラソンが発生するのがね。なお、現実なのでゲームのそれとは全然違う模様。グルメ系の探索者がたまに死んだ目をしてたりする。
「値段的には、こっちのオリーブオイルが一瓶で五万ぐらい。黒胡椒は百グラムで二万ぐらいだったかな?」
「たっか!? どっちもたっか!? 待って待って! じゃあこの調味料三種だけで十万円ぐらいするの!?」
「そうなりますね」
「ヒェッ……」
:相変わらずエッグ!
:ダンジョン食材高い
:調味料でそんなすんのか……
:草
:ウン百万よりかはマシだけど、それでも高いよぉ
:ひゃー
:ちゃんとした食材とはまた違った衝撃があるな
:これでも普段より抑えなの怖い
:マジで金持ちの道楽
:高級酒と調味料がほぼ同じ値段帯ってこれもう分かんねぇな
:草生えるわ
ちなみにですけど、これ数字のマジックが使われてます。四谷先輩も気付いてないけど。
塩と黒胡椒に関しては、あくまで百グラム当たりの値段だからね。つまり使用する量によって増減します。なので値段云々は正直飾りです。
天井をオーバーしそうになった時のために、こっそり仕込んでおきました。やっぱり俺って頭良い。こすっからいとも言う。
あと、もう一点補足するとですね。これら値段は、あくまで仕入れ値に当たるものです。実際にお店とかで、これらの材料を使って提供された品は、多分もっと値段が跳ね上がります。これもまた数字のマジックですね。
「んじゃ、ちゃちゃっとカプレーゼを作っちゃいますね」
「ア、ハイ」
えーと、まずはトマトのヘタの部分を切り取って。んで、サクサクとスライス。形は今回アレ。分厚めのくし形。輪切りと悩んだんだけど、プロがこっちの方が美味しいって言ってたから。
そしたらプリズムソルトをパラパラと。さらにたっぷりのオリーブオイルと、ちぎったバジルをポイポイポイってね。あとはこれを軽く馴染ませる。
そんで次。モッツァレラ。こっちは一口サイズに刻んで、キッチンペーパーで水気を軽く取る。
そしたら気持ち少なめにプリズムソルト。そしてミルで粗めに砕いた黒胡椒。さらにオリーブオイル。こっちもちょこっと。
あとは二つを合わせて、映えを意識して綺麗に盛り付ける。そんで仕上げに追いオリーブオイル。
「はい、カプレーゼ完成です」
「めっちゃ美味しそうなんだけど!? こうして生で見ると分かるわ! 山主君、超料理上手いね!?」
「そりゃまあ、これメインでやってますからね。上達もしますよ。──んじゃ、ぼなぺてぃ」
その間に次の料理作っちゃいますか。んー、卵とエリンギ、アンチョビのアヒージョとか良いかな? バケットも添える感じで。
ーーー
あとがき
二巻の発売が明後日となりましたね。一部サイトでは、まだ予約できなかったりとかあるそうで。いろいろとご不便をおかけします。
でもご安心ください! 発売当日にも更新する予定なんで! そうでなくても、翌日には絶対更新するんで! それをアナウンス代わりに購入していただければなと!
あと、キミラノ様にてレビュー記事が掲載されておりますので、購入を悩んでいるという方は参考までにどうぞ! ……そんな人いないと思いますけど! 最新話まで読んでくれてる方なら、一巻も二巻も買ってくださると信じてますけど!
あと私的な報告で恐縮なのですが、粘着シートに家族が掛かりました。ネズミは未だに姿を見せません。
ネ ズ ミ は 未 だ に 姿 を 見 せ ま せ ん
タスケテ
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