第三部……かな?

第122話 新たなステージへ

──無駄にイベントが盛り沢山だった七月が終わり、現在八月。つまるところ、夏である。


「VTuberで夏と言えば、夏休みに入った学生をメインとした、新規層の取り込みとかですかね?」

「間違ってはないけど、ライバー側の台詞じゃないねー」


:草

:草

:それは運営側の台詞なのよ

:これは四谷が正しい

:草

:もっと他にあるやろ

:新規取り込みは大事だけども

:相変わらずちょっとズレてる山主さん

:草なのよ

:普通、祭りとかそういうのでは?


 率直に思ったことを述べただけなのに、何故か反応が芳しくない悲しみ。コラボ中の四谷先輩からも苦笑を送られてしまった。

 にしても、相変わらず苦笑が似合う人である。四谷先輩、ガワは古本屋にいるお下げ髪のお姉さんだし、リアルも似たような雰囲気の人だからか、そういう表情が妙にマッチしてるのよな。性格は創作方面に熱いオタクだけど。

 ちなみに今回のコラボ内容だが、俺の初ボイス収録を終えてのお疲れ様会である。ちなみに俺が持て成す側でのオフコラボ。四谷先輩には色々と苦労を掛けたから仕方ないね。


「てか、そもそもの話としてさ。今のデンジラス、どっかの誰かさんの影響で新規層取り込みとかやってないからね? それどころじゃないし、そんな必要もなくなったし」

「誰がそんな迷惑なことを」

「お前じゃい! うちの事務所、キミの影響で業界トップの仲間入りしちゃったんだけど。本当にこれどうすんの?」

「マジすんませんした」


 わりとガチ目に謝罪する。どうしてこうなったんだろね本当に……。

 いやまあ、分かるよ? アメリカの一件でさ、俺が人気になるのはね? 一応、大統領(Vの姿)の要請を受けてアメリカ救ってるし。……代わりに広範囲の土地が死んだけど。あと敵が最終形態に移行する際の影響で、地盤が崩れてエラいことになった。死者も出た。

 それでもマイナス評を覆すほどの人気は出るだろうし、実際出ている。特にチャンネル登録者とかが分かりやすい。エグい勢いで爆増したし、もう面倒だし数えてねぇ。

 問題なのは、それが俺だけに留まらなかったことでね……。アメリカの人ら、ノリが良いのか知らんけど、他のデンジラスメンバーも一緒にチャンネル登録しまくりやがりまして。

 なんと全員、チャンネル登録者数が百万を越えました。俺の同期で、猪マスクの贈り主である雷火さんはもう直ぐ三百万に届きそうです。……あと直近でコラボしてたからか、何故かクラゲさんのところにもアメリカ勢が辿り着いていた。四十万越えてて悲鳴上げてた。


「アメリカン・ドリームってこういうこと言うんでしょうね」

「絶対違うと思う。……いや、チャンネル登録者が増えるのは良いことなんだけどさ。シンプルに反応に困るんだよね。私ら、本当に何もしてないし」

「俺とコラボはしてますよ?」

「それつまり、山主君人気に肖ってるだけじゃーん。活動してる側だとすっごい複雑ー!」


:それはなー

:言いたいことは分かる

:割り切れれば良いんだけどな

:別に悪いことではないんだけどね……

:登録した側も善意なんだろうけども

:反応に困るのよね

:活動が評価されるのとはまた違うもんなぁ

:口が悪い奴らからは寄生なんて言われてるしな

:確かにもにょる

:贅沢な悩みでもあるんだろうけども


 んー、それを言われると弱いなぁ。完全に正論だし、人によっては受け付けないよね。俺は『貰えるものは〜』の精神で、草生やしながら受け入れるタイプだけど。

 いや、本当。アメリカ国民は面倒なことをやってくれましたよ。善し悪しではなく『面倒』なのがキモ。対外的にはメリットしかないのが本当に厄介。


「まあ、四谷先輩は良いじゃないですか。俺の先輩ですし、ボイス制作の主要メンバーですし。クラゲさんとか見てくださいよ。あの人、完全無関係なのにまた十倍近く登録者数が増えましたからね?」

「山主君は、一回あの子にちゃんと謝った方が良いと思う」

「トータルで百倍ぐらい増えてますし、それでチャラでしょきっと」

「んなわけ」


:草

:草

:草

:クラゲのとばっちりは本当に笑った

:草

海月ジェリー:良いわけないんですけど!?

:草

:草

:扱い雑で草

:本人おるやんけ!


 え、本人いる? あ、マジだ。草。


「え、海月さんいる!? うちの後輩が本当にご迷惑をお掛けしました! 今スパナ渡します!」

「差し障りないなら、オフコラボでお詫びの品を振る舞わせていただきますけど? めっちゃ高いの」

「山主君それ逆効果! 余計に迷惑掛かるからちょっと黙ろう!?」

「冗談に決まってるじゃないですかー。HAHAHA」

「海月さんに対してだけ対応ちょっと雑じゃない!?」


 そんなことはないですよ? ただそっちの方が、あの人は光ると思ってやってます。悪ノリと言われたら否定はしない。

 ちなみに誘いに関しては断られました。まあ残当よね。多少残念に思わなくもないが、機会があればいつか顔を合わせることもあるでしょう。


「でも、本当にどうしようかなぁって思うよね。ありがたいけど、ハリボテ感が凄いんだよねぇ……」

「そこはほら。活動を重ねてカバーしていく感じでですね?」

「簡単に言いおる」

「でもそれっきゃないですよ? 地道な積み重ねが結局一番なんですから」

「爆速でチャンネル登録者を増やしてる人間の台詞じゃないなー」

「俺はダンジョンでの積み重ねがあるので」

「そのスキルツリー、配信者のジョブだと基本的に適用されないんだよ?」

「まるでバグで無理矢理活用してるかのような言い方」

「存在自体がバグじゃんキミ」


:草

:草

:人類が生んだバグ

:草

:実際そう

:ダンジョンネタもありふれてるし、普通は埋もれるはずなんだよなぁ……

:草

:これは四谷が正解

:草生える

:バグ以外の何者でもない


 ハハッ、こやつらめ。抜かしおるではないか。……別に頑張れば誰でもいけるのになぁ。


「いや、実際その通りではあるんだけどねぇ。ただそのためには、山主君を擦り倒さないといけない悲しみよ。キミがいないと、チャンネル登録してくれた人も見にきてくれないし」

「存分に使い倒してくださっても構いませんよ?」

「そうだけどさー。それで既存のファンを蔑ろにするのも違うじゃん? 単にこっちが収まりが悪いってだけだし。こう、チャンネル登録者と同接の差にもにょる的なね?」

「まあ、そっすね」

「何か上手いことできないかなー……」

「とりあえず、そろそろメインのお酒いきます? 飲みます?」

「……飲もっかー」


 はーい。オーダー入りまーす。











ーーー

あとがき


そんなわけで始まりました新章。どっかの馬鹿のせいで、デンジラス全体にアメリカブーストが入りました! 数字はわりと適当だよ! フィーリングで流して!


なお、以降の内容は考えてません! だって初期構想がアメリカ編までだったからね! アメリカ編もアイウォンチューやりたかっただけだし!


ただまあ、そろそろデンジラスメンバーの掘り下げはやろうかなって感じ。キャラ増えんの面倒&把握大変でやってなかったけど。

なんなら時系列も若干怪しいからね作者。確か夏前〜夏序盤だった気がしたから、八月頭にしたけど。ぶっちゃけこれ合ってるのか……?


それはそうと、二巻発売がもう直ぐです。一応、更新頻度のブーストはもうちょい続きます。

ただ今回の更新は、日曜の内容を前倒し(書き終わっちゃったから)にしたので、明日は難しい……かも?

ちょっと予定あるんですよね。ドリームをランニングしてくるんで。なのでそこはご了承ください。あったら幸運程度でおなしゃす。





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