第103話 浜辺に打ち上げられたクラゲをツンツンするコラボ その四

「……ま、まさかいきなり放送禁止レベルのネタをぶっ込まれるとは……」

「焦りすぎでは?」

「焦るよ! それ最悪リアルアサシンが飛んでくるやつじゃん! ボクそんな世界の闇とか聞きたくない!!」

「まあ俺も話す相手は選んでますしね。個人勢のクラゲさんじゃなきゃこんなこと話しませんよ」

「個人勢には何しても良いと思ってます!?」

「人聞きが悪すぎる」


:草

:草

:アカンアカン

:あの宗教はマジでアカンのよ……

:リアルアサシン(ガチ)

:実際その通りなんだよなぁ

:草

:企業勢の方がコンプラ厳しいってのはそうなんだろうけども

:そりゃ焦るわい

:個人勢選んで話してる時点でタチ悪いのよ

:そういうのはVTuberじゃなくて暴露系の配信者に持ってってもろて

:個人勢だからって何でも話して良いわけではないんだわ

:草


 それだと俺が個人勢を下に見ているみたいじゃないですかやだー。そんな他意はないから。怒られが発生するラインが企業勢より広いから話しただけだから。

 ただ宗教関係の話題がNGと言われたら、それはそうとしか。政治と宗教と野球の話題は荒れるからね。仕方ないネ。


「てか山主さん。凄いフランクに犯罪予告とか扱ってますけど、そういうの怖くはないんですか? 犯罪者に狙われるとか、モンスターとは別種の恐怖を感じると思うんですけど……」

「いえ別に。ダンジョン内で殺されそうになったことも何度かありますし」

「……え?」

「探索者は敷居が低いですからねー。犯罪歴さえなければ、性根の腐った輩もなれちゃうんですよ。で、ダンジョン内は目撃者さえいなければ完全犯罪が可能。だから堪え性のない阿呆が定期的に湧くんですよねぇ」

「えぇ……」


 モンスターに殺されたってことにすれば、装備やら戦利品やらが取り放題だからね。文明を逆行する野盗崩れも普通にいる。それがダンジョン。……まあ、これでも一昔前より治安はマシになっているそうだが。


「山主さんでも狙われるんですか……?」

「そりゃまあ。こうしてデビューするまでは、探索者としても無名でしたし? 外見的には普通の探索者と変わらないんで、浅いところを移動してる時は狙われたりしますね」

「……それ、狙われた時はどうしてるんです?」

「仕方ないので無力化して地上に引き摺り出してますよ。気絶させて放置だと普通に相手死にますし、かと言って無視したら被害者増えますし」


:えぇ……

:まさかの対人経験ありなのかよ……

:犯罪者がクソなのは間違いないんだけど、それはそれとしてデストラップがすぎるだろ

:探索者ってやっぱりクソな職業なのでは?

:モブにしか見えない裏ボスとか、狙う側からすると最悪なんてもんじゃないのよ

:迷賊はなぁ……

:やっぱり山主さん歴戦なんやなって

:なお、探索者の中には文字通りヤり返す人らもいたりするとか……

:長いこと探索者やってると、一回は対人トラブルに巻き込まれるからな

:探索者同士でバトるの普通に犯罪では……?


 まあ本当のことを言うと、連行するかどうかは気分と周囲の状況次第なんですけどね。害しかないので見逃すことは絶対にしないけど、面倒くさい時はサクッと塵にしてたり。……犯罪の自白なので表には出せないが。

 なお、これは一定以上の実力を持つ探索者たちの中では、暗黙の了解となっていたりする。状況次第ではあるけど、殺すのまあ仕方ないよねって感じで。

 法律を守るのはもちろん大事なのだが、法律守っても命が守れなければ本末転倒。だから犯罪者に慈悲はない。

 そもそもダンジョン内でことを起こすような輩……迷宮の賊で【迷賊】って呼ばれてるんだけど、そいつらアレだからね。実力ある探索者たちの中では人型モンスターって扱いだからね。

 なのでわりと容赦なく駆除されてたりするのが実情だったり。躊躇いとかは特にないです。モンスターと日夜殺しあってる探索者たちは、罪悪感とか忌避感とか無視して仕留めにいけます。……これ現代社会で認められてる職ってマ?


「……何と言うか、探索者って相当アレじゃないです? ボクの想像してた数倍は物騒なんですけど」

「否定はできないですねぇ。とは言え、敷居が低くないと社会的に不都合が多いのも事実でして。ダンジョンのアイテムは経済的にも重要ですし、なにより探索者人口はそのままスタンピードの抑制に繋がるんで」

「あー……」


:スタンピードなぁ

:ダンジョンはいろんな意味で放置できんからな

:ちょっと前にアメリカでも起きてたよな

:マジでダンジョン産のアイテムは需要におっついてない

:なんなら現状ですら若干人手不足感はある

:わりと洒落にならんやつ

:やべぇ奴が紛れるのを承知で、敷居を低くせなならんってことか

:他所の国だと兵役の代わりになってたりするからな。それぐらい切実ではある

:ダンジョン関係のアイテムは全体的に供給不足

:そら人手があれば災害を確定で防げるんだから、間口を狭めるわけがないわな

:そういう理由かぁ……

:そもそも現状ですら、犯罪歴のない人しか探索者資格は取れんわけで。これ以上何を縛るのって話ではある


 残念なことに、世の中ってのはままならないものなのである。素人でも分かる問題点があっても、大抵はそうならざる得ないからそうなっているパターンが大半なのだ。


「まあそんなわけで、ダンジョンは常に新しい探索者を求めているのです」

「今の話の流れで探索者になりたいって思う人がいるとでも……?」

「でも募集しなきゃ新規参入は見込めないですし?」

「じゃあ仮にこの場でボクが探索者始めるって言ったら、山主さんはどうします?」

「……ちなみに動機は?」

「んー、じゃあ無難にお金で」

「それなら絶対止めますわ。お金が必要なら俺の下で雇いますよ。日給二万ぐらいで」

「やっぱりあの流れで探索者を募集する──待って雇うって何!? あと日給二万!?」




ーーー

あとがき

エイプリルフールよ?


ちなみに私は季節エピソードは滅多にやらない派です。そんなことより本編進めろ派とも言う。




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