第102話 浜辺に打ち上げられたクラゲをツンツンするコラボ その三
「さて。前置きが長くなってきたので、そろそろ本題に入ろうかなと思うんですが」
「本題も何も、今日雑談コラボの予定ですよね?」
「まあそうなんですが。で、何話します?」
「待って凄い雑なフリされたんだけど」
:草
:草
:草
:草
:草
:雑ぅ
:草
:これは草
:山主さんさぁ……
:草生えるわ
ガチ困惑されてしまった。でも仕方ないじゃないか。このコラボ自体が突拍子のない思いつきみたいなものだし、実際に言葉を交わすのも初めて。この状態でまともなトークテーマなんて用意できるかって話である。
実際、雑談がメインとなった経緯も似たようなもの。初絡みでちゃんとした企画を考えるのも難しいし、かと言って適当なゲームをするにしても、お互いの得手不得手とか知らないし。……それに加えて、俺の場合はいくつかのジャンル縛りがあるし。
それならば、無難に雑談でまったり配信を回しましょうかって方向で意見が一致。その結果が今である。
「もしかして山主さん、今日ノープランできました?」
「いやいやいやいや。流石にそれは……。一応、トークテーマと言うか、会話デッキは用意してありますよ。コラボ持ち掛けたのは俺ですし。ただそれはそれとして、何かクラゲさんは話したいことあるかなって」
「あ、そういう? あー、良かった。てっきりボクに丸投げスタイルかと……。山主さんならワンチャンありそうだし」
「俺のこと何だと思ってます?」
こっちからコラボ持ち掛けておいて、企画諸々相手に丸投げとか普通にクソムーブがすぎるでしょ。そんなことやったら余裕で炎上するわ。
まとめサイトとかに記事載るやつじゃんそれ。『悲報。トップVTuberさん、登録者数にかこつけて個人勢に無茶振りしてしまう』とかそういうタイトルで。
「ま、ともかく。質問したいこととかあればどうぞ。無茶に付き合ってもらってる自覚はありますし、大抵のことは答えますよ」
「え、そんなこと言うと恋人の有無とか訊いちゃいますよ?」
「どうぞどうぞ。てか、年齢=彼女いない歴の男ですが何か?」
「普通に答えっ……いやちょマジで!?」
:ノータイムで凄いこと答えた!?
:馬鹿クラゲちょっとは躊躇え!
:山主さん恋人いたことないの!?
:流石に嘘やろ
:山主さん相手によくぶっ込んだな……
:いたとしてもYESって答えるわけないんだよなぁ
:HAHAHA。ご冗談を
:ボタンニキほどの男でも彼女いないとか現代キツすぎへんか……?
:堂々と答えすぎだろ
:いや絶対引く手数多やんアンタ
:今からでも恋人立候補して良いですか?
:よく訊いたクラゲ!
:答えるんかい!
そんな騒然とすることかね? 意中の相手のそれならともかく、他人の恋愛経歴なんて大して気にするような事柄でもなかろうに。
てか、俺の恋愛事情に皆興味津々すぎでは? ウタちゃんたちとのコラボの打ち上げの時も、似たような話題になったし。
「流石に年齢=彼女いない歴は嘘でしょ……? なんならハーレム築いてても不思議じゃないと思うんですが」
「……するしないは一旦置いておくとして。客観的な意見として、ハーレム云々は普通に実現できますね」
「あ、そこは否定しないんだ……」
「逆にここで否定した方が嘘っぽいじゃないですか。実際、それができるだけの資産はありますし。言い方は悪いですけど、お金さえあれば女性を囲うなんてわけないんですよ。適当な金額バラまいて、そういうのがOKな人を集めれば良いんですから」
「うーん身も蓋もない」
「現実ってそんなもんでしょ」
恋愛感情を否定するわけではないが、金銭の多寡はそこそこの頻度で恋にも愛にも勝ったりする。
てか、結局はその人の価値観よね。好きな人との家庭を築くことを重視するか、安定した生活を重視するかの差だ。
まあ、恋愛感情とか抜きでハーレムOKするような女性は、基本的に安定した生活ではなく『贅沢な生活』を求めているのだろうが。
なお、それが提供できないと物理or法で容赦なく背中を刺してくる模様。……甲斐性ないのにハーレム築こうとする男がアホだから仕方ないね。
「てか、それなら余計に山主さんに恋人いない理由が分からないんですが?」
「そりゃ妥協すればよりどりみどりでしょうけどね。ただ恋人なんて、欲しいと思わなければできないんですよ」
「彼女欲しくないんですか?」
「昔は必要性を感じてませんでしたね。今はテロとかの標的にされたら相手が可哀想なんで、そういうのは控えようかなって」
「はい終了! この話題終了!!」
:サラッと恐ろしいこと言ったな今
:テロってあーた
:いや確かに狙われかねんけども
:それ山主さんの周囲の人間全員に当てはまらんか……?
:アウトォォォッ!!
:アカン
:恋人作るとヤバい奴らに狙われるとか、現実ではまず聞かないのよ
:言われてみたらそりゃそうなんだけど
:何でVTuberの恋人がテロの標的になるんですかねぇ……
:炎上を回避するためじゃないのが怖いわ
:もう止めようぜこの話題
:唐突にぶっ込んでくるじゃん
テロって単語出したら話題切り上げられてしまったでござる。単に可能性の話をしているだけで、実際はそこまでビビるような内容ではないのだが。
にしても、この返し便利すぎやしないか? 今度から恋愛系の話題になったら、これでオチ付けるようにしようかしら? 定番ネタになりそう。
「ちなみになんですが、これ系のテーマが俺の用意していた会話デッキの一つだったりします。『この活動をしていた中で、特に印象深かったDMやリプは? ヤバい方面でも可』って感じで」
「……一応訊きますけど、山主さんの場合はどういうのがあったんですか?」
「某宗教の過激派テロ組織を名乗るSNSアカウントから──」
「ストォォォォップ!! それはガチで洒落にならないやつじゃないですか!? てかコンプラ的にもアウトでしょそれ!!」
「原文と翻訳版見ます?」
「止まれって言ってんですよお願いだから止まって!?」
ーーー
あとがき
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