第104話 浜辺に打ち上げられたクラゲをツンツンするコラボ その五

「……そんな驚くようなことですかね?」

「いや驚くでしょ! なんなら今日の配信ずっと山主さんに驚かされてますが!?」

「えー。だってコラボしたいなぁって思ったライバーさんが、お金欲しさでダンジョン潜ろうとしてるわけでしょ? なら代わりに安全な仕事ぐらい紹介するか、用意するぐらいするでしょ」

「……まあ、まあまあまあ。言いたいことは分からなくもないですけど。うん、一応、理解できなくもない、かな……?」

「そんな葛藤することあります?」


 何か変に大袈裟に受け取ってるっぽいけど、俺の言ってる内容自体は超シンプルなんだよなぁ。

 知り合いがお金で困ってるから、自分のツテの範囲で仕事を用意してあげようとしてるって話だし。

 そんな悩みに悩んで答えを濁すような内容じゃないでしょコレ。


「いやあの、言いたいことは本当に分かるんですよ? ただ一回コラボしただけの相手に、普通そこまでするかなって疑問がですね……。もちろん、例え話なのは分かってるんですけど」

「いやするでしょ。一回でもコラボすれば、十分動く理由にはなりますって」

「それは流石にお人好しがすぎません?」

「でもクラゲさんだって、多少なりとも顔見知りの女の子が風俗落ちしようとしてたら、最低限協力しようと思いません?」

「言い方ァ!! いやもうさっきから言いたいことはなんとなく分かるんですけど、もっと別の言い方とかないんですか!? 山主さん各方面から怒られますよ!?」

「……やっぱり女性を前に風俗落ちなんて言葉はよろしくないですか」

「そこもだけどそこじゃないです!」


:草

:草

:山主さん、さっきらずっと飛ばしてんな

:草

:探索者=風俗レベルって意味になるんですがそれは

:確かに顔見知りの子が風俗やろうとしてたら止めるけども

:草生える

:他人のチャンネルで暴れすぎやろこの人

:絶妙に肯定しずらい言い方なんだよなぁ

:草

:風俗云々はシンプルにセクハラだし、その他言動に関しても普通に失礼

:草

:草

:もう一回全方位から怒られるべき


 でも例えとしてはこれ以上のものはなくない? お金のために風俗に手を出そうとするとか、一般的な感性をしてれば止めようって思うじゃん。


「あー、もちろんアレですよ? 風俗に従事してる方を馬鹿にする意図とかはないですからね? ただ一般論として、大抵の人は一度は待ったを掛けるでしょうし、可能な人は自分のツテを紹介するよねって話でして」

「それについては心配してないですけど……」

「なんなら、俺は風俗の方がよっぽど上等な職だと思ってますし。探索者なんか職としては最底辺ですし。それで馬鹿にするとかどの面下げてってレベル」

「止まんないねぇ!? マジで山主さん止まんないねぇ!? もしかしてわざとやってます!?」

「多少意図的な部分はありますけど、感想自体は純然たる本心ですよ」

「それはそれで自分の職業に対して辛辣すぎません!?」

「当事者だからこその評価なんですよ」


 探索者なんて職としては底辺も底辺だ。職業に貴賎はないとは言うけど、それはあくまで綺麗事。現実は違う。

 探索者は率先してなるようなもんじゃないし、探索者やってる人間は異常者か救いようのない馬鹿のどっちか。これは断言しても良い。

 つまるところ、探索者など犯罪者に比べれば幾分マシってレベルでしかなく、なんなら結構な探索者がバレてないだけの犯罪者だったりする。


「常識的に考えて、です。モンスター相手に、日常的に命のやりとりする職が真っ当だとでも? ダンジョン自体が事実上の無法地帯だから、たまに人間を相手にすることもあって、それらの全てが自己責任で片付けられるような職がマトモに思えます?」

「そう並べられると否定できないのズルくないですか?」

「ハハッ。当たった時のリターンの大きさと、RPGを連想させる浪漫で上手く下駄履かされてるだけですもん。実態だけならどの職よりもブラックなのが探索者ですよ。ワンチャン倫理観とか中近世まで戻りますからね」

「もしかして山主さん、探索者嫌いですか?」

「青春を捧げるぐらいには好きでしたよ? 今も何だかんだで馬鹿やれるので嫌いじゃないです」

「もうボクにはこの人の情緒が分からないよ……」


:業界トップがボロクソ言うやん

:まあ言ってる内容的にはそれはそうとしか……

:現代社会に存在する職としては物騒すぎるからな

:この貶しようは大嫌いってレベルなんよ

:草草の草

:これだけ言って嫌いじゃないとか意味不明

:草

:文明レベル後退するんか……

:ぐうの音も出ないレベルの正論

:探索者募集しようぜって会話から、どうして貶す方向に転がっているのか。これが分からない

:何が面白いって、これを言ってるのがナンバーワン探索者ってことよ

:業界トップからの貴重なご意見

:風俗より下って最上位が認めるんか……

:草


 いやー、そんなおかしいことでもないでしょ。客観的な問題を語るのと、自分の好みは別ってだけだし。

 探索者は犯罪者予備軍。少なくとも俺はそう思っているし、俺自身その自覚はある。

 ただそれはそれとしてダンジョンには潜りたいし、現代社会を一旦忘れて蛮族ソウルで行進したくなるよねって話であってじゃな。


「まあいろいろ言いましたが、探索者の制度的な欠点はどうでも良いんですよ。俺にはさして関係ないですし」

「あんなにボロクソ言ってたのに!?」

「ええ。だって日本のお偉いさんたちが必死に頭捻って、紆余曲折を経て今の状態に落ち着いてるわけですし? つまるところ、素人が語るような欠点は承知の上で運用している。するしかないってことなんですから、今更個人が貶したところで変わるわけないんすよ」

「いやー……。山主さんが言ったら、ワンチャン制度も変えられそうですけど」

「俺には今んところ不都合ないんでパスっす。あとうちの事務所、政治活動系はNGなんで」

「世界中の政治を引っ掻き回してる人が何か言ってる……」


 せ、政治活動してそうなったわけじゃないから……。配信活動してたら勝手に世界が混乱してるだけだから……。


「まあアレです。いろいろ脱線しましたけど、まとめるとシンプルです。探索者なんてマトモな人間がなるもんじゃないから、それよか知り合いに頼んなさいなってことですよ」

「結論自体は凄い真っ当なんですけど、そもそものスタートって山主さんが新人募集したことですよね?」

「そうっすね。なので自分はマトモじゃないって思う人は是非ともダンジョンに。世界観が世紀末寄りではあるけど、当たればデカイのは間違いないし、肌に合う人はとことん肌に合うと思うZE☆」

「その募集の仕方だと全国の厨二病患者が殺到しちゃいません?」

「ダンジョンの中で厨二を通せるなら十分イカレてるんで無問題」


 真性以外の厨二病は大概臆病なイメージあるし、クラゲさんの懸念は多分杞憂だと思います。


「ところでなんですけど、山主さんは日給二万でボクに何させるつもりだったんですか?」

「えーと、配信で使うサムネ作成と、衝動買いしたスタジオの管理保守? あ、もちろん実際に雇おうってわけじゃないですよ? ……今のところは」

「今のところってナニ」

「ああいや、ライバー活動にまつわる部分で、人手が欲しいなぁとは実際に思ってまして。で、それもあってさっきの台詞が出た部分もあるので。クラゲさんの反応次第では実現する可能性も微レ存かなって」

「待って本当に日給二万の仕事が紹介されそうで震えてるんだけど」

「ちなみサムネに関しては、一本幾らの出来高制なんで報酬としては別枠予定。日給二万は音楽、料理スタジオの管理報酬。業務内容は主に掃除と、各種機材の簡単なチェック。それとオマケとして、常識の範囲内かつ、スキルがあるのなら各種機材の私的利用も可」

「しかも思ってた以上に条件が破格。あの、ガチで揺れるんで止めてもらって良いですか……?」

「あと日給は手取りのつもりだし、就業時間もフレックスタイム制のつもりなんで融通は利くよ。やること終わらしたらさっさと帰っても良いし、逆にスタジオで自分の時間をエンジョイしても良し。なんなら配信してても良いよ」

「もしかしなくても全社会人に喧嘩売ってませんこの内容?」


:クッソ好条件で草

:それ俺がやっちゃ駄目ですかね?

:クラゲそこ代われ

:週三で働いても平均的な新卒の給料超えるんですが

:破格なんてレベルじゃねぇ……

:これ遠回しな〇人契約では?

:週五で働いたら年収四百八十万じゃねぇか!

:俺より収入多くて泣きそう

:出会い目的にしても新しすぎるだろコレ

:好条件すぎて逆に怪しいんですがそれは

:学生のバイトだってもっと重労働だぞ!

:はいはい! 自分やりたいです! 自分ならそこの海産物よりずっと働ける自信あります!

:もうただの金持ちの道楽やん

:結局世の中ってコネなんよな

:やっぱり現実ってクソだわ


 一瞬でコメ欄が社会人の怨嗟で溢れて草ですわよ。






ーーー


あとがき(今回いろいろ長め)


前回のあとがきについてですが、もちろん完結云々は冗談ですからね?

エイプリルフールのネタです。すぐ後ろに季節ネタ云々の文を入れてたのもそういうことです。


一応宣言しておくと、モチベが致命的に消えない限りは、エタることはないです。完結するまで続く予定です(既にタイトル回収して物語的に一段落着いてる点は脇に置く)。


なお私のモチベは皆様の評価、感想、書籍の購入報告でブーストされます。特に新規の購入報告は効果が高いです。


まあつまるところ、書籍版の売上が好調の間は間違いなく続きます。なのでずっと続きが読みたいという方は書籍をご購入ください。


生臭い話ではあるので、こういう作者の意見は倦厭する方もいるでしょうが、その辺はシビアにやってかないと生活に関わるので……。

主張して売上が増えるなら遠慮なく私はやります。これで離れる人もいるでしょうが、この程度で離れる人はどうせその内離れるでしょうし。

ぶっちゃけ、この作品を総合の週間ランキングに載せるのはいつでもできる(更新頻度を上げれば多分イける)と思っているので、主張することで離れる少数はそこまで痛手じゃないです。もちろん、離れてほしいわけではないですが。

それよりも、新規の方に私のスタンスをこうして知らしめた方が、余計な摩擦も少ないのではと考える次第です。


とまあ、後書きの場を借りて長々と主張させていただきましたが、どうか今後とも本作をよろしくお願いいたします。ではでは〜 ノシ



PS.そんなこんなでお金が大事な私は、毎回この作品の主人公をクソがよって思いながら書いてたりします。宝くじ当たんないかなぁ……。

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