第57話 待望のコラボ回 その四

 ドラゴン。言わずと知れたモンスターの王様であり、ファンタジー系の作品で必ず一体はボスを張っているメジャー存在。


「──というのが、リスナーを含めた一般の方々が抱く、ドラゴンについての印象だと思うわけですよ」

「……まあそうですね。いわゆるファンタジーの代名詞ってやつです」


 現在もろもろ説明中。その場のノリで完全に煙に巻くのは、流石に不義理がすぎる+リスナーに優しくない。てなわけで、まず最初に『ドラゴンとはなんぞや?』という話題になった。

 ちなみに、俺のVの志望動機に関しては速攻で説明が終わった。このコラボがやりたかったの一言です。常識的に考えて、憧れ的なサムシングで受け止められてるとは思うけど、あえて訂正はしまい。多分沙界さんの胃にダメージが入る。


「では現実の、ダンジョンに出てくる方のドラゴンはどうなのかと言うと」

「……言うと?」

「なんかよく分からんボス、というのが正直なところです」

「はい?」


:分からないの?

:ドラゴンはドラゴンでは?

:どういうことなの?

:山主さんが分からなきゃ、多分この世の誰も分からんのよ

:急に雑になったな

:適当すぎません?


 むむむ。予想はしていたが、やはりそういう反応になったか。いやまあ分かるよ? ドラゴンなんてメジャー存在が、現実では正体不明と言われたところで、そりゃポカンという反応になるよ。

 だがしかし、だがしかしだ。奴らを何度も狩っている身としては、最終的な結論が『分からん』になるのは必然だと思っている。


「まず大前提として、ドラゴンって基本的にオンリーワンのモンスターなんですよ。ゲームとかで『ユニーク』なんて呼ばれてるアレです。つまり一体倒せば、二度と同じやつは出てこないんすよ」

「そうなんですか!?」

「そうなんです。なんか時たま探索者が、ドラゴンを倒したって写真や動画とかを上げてますけど、アレって全部カテゴリー的にはワイバーンと同じなんですよ。【亜竜】です。ドラゴンっぽいものってことで亜竜です」


:そうなの!?

:おいなんかサラッと衝撃的な情報出てきたぞ!?

:マジで言ってるそれ?

:これ専門家が揃って頭抱えるやつでは……?

:じゃああのいかにもなドラゴンたちは、全部が全部偽物、ってことォ!?

:いや、アレをドラゴンと言わずになんて言うの……?

:フィクションと現実は違うとは言うけども


 おー。ザワついてるザワついてる。まあ仕方あるまい。探索者、いやそれ以外の人たちにとっても、ドラゴンとはある種の憧憬。事実として、ドラゴンにまつわる情報は世界が興奮とともに受け取ってきた。──それを俺はたった今、偽りと切り捨てたのだ。

 でもね、ガチなのよ。ファイヤードラゴンとか、ウィンドドラゴンとか、アイスドラゴンとか、いろいろ情報が拡散されてるけどね。アレ、全部が分類的にはドラゴンモドキなのよ。

 一般的な鑑定とかだと『ドラゴン』ってついてたりするから、探索者ですら普通に勘違いするという罠。ロバの仲間であるシマウマを、名前のせいでウマと間違えてしまうアレだ。

 ……まあ、ガチのドラゴンが、本体もドロップアイテムもガッツリ固有名詞で出てくることを知らなければ、そりゃ騙されて然るべきではあるのだけど。


「ガチのドラゴンは、総じてオンリーワンの異形です。同種、つまりテンプレな姿形をしてる奴らは、ぜーんぶドラゴンモドキの亜竜なんですよね」

「異形……」

「はい、異形です。まあ、亜竜系モンスターの原典だけあって、大まかな姿形が似てる奴も多いんですけどね? ただそれでも、絶対にそいつしかありえない特徴が一つはあるんですよ」


 一部が非実体だったり、なんか謎の部位が備わってたり。……一番酷いやつだと、生き物の死体が鱗の代わりに生えてた奴とかいたからな。


「ファンタジーの代名詞だけあって、現実でもオンリーワンという意味で特別なんですよね。全部が全部、それこそアイテムまで二つとない代物というか」


 俺が持ってきたドラゴンエールも、ドラゴンの酒だからそんな名前になってるだけで、中身に関してはオンリーワンのアイテムだ。フレーバーテキストも物によって全然違う。

 だから結論が『分からん』に収束するのよ。ドラゴンなんてカテゴリーにぶち込まれてはいても、種族的な特徴が存在しているかどうかも不明だったりするから。

 なんだったら、お前は明らかに違うだろって奴ですら、鑑定するとドラゴン扱いされてたりするし。


「アイツらで明確になってるのなんて、せいぜいが強さぐらいなもんですよ。ランク以外はよく分からん謎モンスターです」

「じゃあ、さっき言ってた(王)というのは……?」

「俗に言うところの竜王のドロップアイテムってことです。あ、ソーセージの肉も、元は違えど同じランクだったり」

「竜王!?」


:それカテゴリー的にはラスボスやんけ!

:めたくそにゴツイ奴きた!

:竜王ってあーた……

:大丈夫? それ値段的にヤバかったりしない?

:ゲームだったらエンドコンテンツのアイテムじゃねぇか

:てか、異形って呼ばれるモンスターの肉って不安じゃない?

:それは例のウミフラシとどっちが強いんですかねぇ……?


 強さ的にはウミフラシの方がダブルスコアで負けてますが? ドラゴンの場合、無冠ですら超深層一歩手前の強さかデフォなので、竜王クラスは余裕で超深層でも上位だよ。

 ちなみに酒の方は【果樹竜王スミレグンジョウ】、ソーセージの方は【凝蝕竜王ストロロク】というドラゴンのドロップである。……本当にドラゴンだけRPG気味なのはなんなのだろうか?


「……あの、今更なんですけど。つまるところコレって、洒落にならないぐらい貴重なアイテムってことですよね……?」

「時価なので値段なんかあってないがごときですよ」

「それで誤魔化せると思ってます?」

「いやほら、買い手がつかなきゃ如何に高級食材でも廃棄になるので……」


 ドラゴンなので価値的には11桁ぐらい余裕でいくけど、結局のところ食材の範疇は出ないからなぁ。多分、ここまで突き抜けると買い手もつかないだろうし? それなら値段を気にするだけ無駄だと思うのですよ。……酒に関してはワンチャンある気がするのは黙っておくことにして。






ーーー

あとがき

コラボにかこつけた設定回。ドラゴンに関してはモンハンの古龍枠とでも思ってもろて。


……え? 話が進んでない? 実はス〇レにハマりすぎて、F〇Oのイベント及びウィークリーを忘れててじゃな。

それを終わらせてから速攻で書き上げたので、進行が亀ってるのは仕方ない。……仕方なくない?


分かりにくいとコメントがあったので、主人公の語るドラゴンとドラゴンモドキについて追記。


『〇〇ドラゴン』など⇒ゴブリンとかと同じ、そういうモンスター名の通常モブ。


ガチドラゴン⇒というカテゴリーにいるユニークボス。モンスター名は別にある。

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