第56話 待望のコラボ回 その三
「流石にこの枠ではやめましょう?」
「さいですか」
話し合いの結果、BOX開封はまた後日別枠でということになりました。次のコラボの約束ができたのは棚ぼたというべきか。まあやったぜ。
「……今ちょっと報告がきました。WTGと一緒に、山主さんがトレンド載ったそうです」
「あらー」
:トレンドにWTG載っててなにかと思ったわ
:ガチやん
:おめでとう?
:そりゃ載るよ
:反応が草
:山主さん超どうでも良さそうやん
:てかボタンニキの場合、普通に配信するだけでもトレンドに載るレベルなのよ
SNSをざっと眺めてみたところ、BOXの価値や合計金額をメインに祭りとなっているのが確認できる。なお、ちょくちょく『金持ちアピールがウザイ』などのアンチツイートがあるのはご愛嬌というやつか。
ま、全体的に受け入れられているようでなにより。沙界さんを巻き込んでの炎上などはなさそうだし、とりあえずもう放置でいっか。
「あ。ばーちかるの人たちも、何名かツイートしてますね」
「マジですかちょっと確認しますね」
前言撤回。ばーちかるのライバーさんたちが反応しているなら確認しなきゃ。ワンチャンWTG関係で反応したなら、あの人たちの可能性も高いだろうし。
「おー。結構な人が反応してますけど、やっぱりプレイしている人たちの食いつきが凄いですね」
「そりゃそうですよ。今仕舞ったBOX、一つ一つがファン垂涎の品なんですから」
「……ファースト8のBOXあったらどんな反応してたんでしょうね?」
ちなみにファースト8とは、WTGで初めて発売されたBOX『ファースト』に封入されている、伝説のカードたちの総称である。状態にもよるが一枚で7桁いく化け物だったり。
「待ってください持ってるんですか!?」
「いやー、あくまで例えですね。流石に持ってないです。貴重すぎるせいか、何処にも売りに出てなくて」
:いきなりファースト8のBOXとか出てきたら腰抜けるわ
:流石に山主さんでも持ってないか
:つまり売りに出てたら買ってたということでは?
:やっぱりヤバいわ山主さん
:でも実際買えるだろうなぁ……
:なんで料理系の配信でWTGの話になってるんです?
:というか、状況次第ではこの場でファースト剥いてたとかマ?
金額に関しては、ぶっちゃけ大した問題でもないんだけどねー。そもそも売ってないものはどうしようもないし。
もちろん、しっかり探せば出てくる可能性はゼロじゃないけど、正直ちゃんとした店とかじゃないと買う気しないし。下手なネット通販だと妙なトラブル起きそうで怖いじゃん?
「まー、ファーストは今後も探すつもりではありますけどね。見つけ次第買う感じで。その時は一緒に剥きましょう? あ、なんならお知り合いの方も呼んで。というか、さっきの山の開封の時もお声がけしても構いませんよ?」
「ははは……。では、お言葉に甘えて。その時は、私も知り合いを誘ってみますね」
「やったぁ」
やったぁ。
「では話を一旦戻しまして」
「……すいません。なんの話してましたっけ?」
「用意した品についてですね」
「あー……」
BOXのインパクトのせいで忘れてたようだけど、元を辿ると『食材』と『いろいろ』で、沙界さんが後者を選んだ結果滑らかに脱線していったのである。
「てことで、次は食材の方ですね。まあ、これも説明するより見てもらった方が早いわけですが」
ということで、はいドンッ。空間袋の中から、今日のために用意していた食材を取り出す。ついでに写真も取ってSNSにポイちょ。
「……ソーセージに、樽の……お酒ですか?」
「そうですね。ちなみにソーセージはドロップ品ではなく、ドロップ品を使った自家製だったりします」
「自家製!?」
:もう絵面からして美味いやつやん
:樽酒……感じからして洋酒系かな?
:樽に入った酒とかビジュアルがつおすぎる
:ファンタジー系の酒場で定番のアレやん!
:ソーセージもやべぇな。絶対美味いぞアレ
:ぶっといソーセージと酒かぁ。ドワーフかな?
:ソーセージが自家製ってマ!?
なんか自家製のソーセージで驚いているがちょくちょくいるが、ぶっちゃけそこまで難しい料理ではないとだけ言っておく。極論言えば、ひき肉と牛豚羊の腸と専用の調理器具があれば余裕だ。専用の調理器具に関しても、普通に家庭用のが売ってるし。
なお、簡単ではあるが、配信のテンポの問題で今回は事前に作ってきた。なんか調べた限り一番美味そうに作っていた動画で、『冷蔵庫で乾かしながら冷やして熟成させる〜』なんて工程が挟んでたんだよね。コラボ相手を待たせるすぎるのもアレだったし。
あと使う腸の種類によっては、いろいろ名前が変わったりするらしいのだけど、素人からすれば大した違いではないので悪しからず。全部まるっと『ソーセージ』と認識しておけばOKだ。
「なんというか……スーパーとかで売ってるのと違って、凄い存在感がありますね」
「そりゃまあ、袋ウィンナーとかと違って明らかにぶっといですからねぇ」
「海外のお店とかで出てきそうですよね」
そうっすね。バルとかでちゃんとした一品料理として提供されてそうな、そういう重厚感が漂ってくるというか。まだコレ焼き目も何もついてないのよ?
「……コレを今からジュワーと焼くんですよ。そんでバツッと噛み切りながら、お酒と一緒に流し込むわけです」
「……」
:悪魔の囁きやめれ
:想像しただけで美味そうなんですが
:……ゴクリ
:黄金メニューやん
:めっちゃ美味いやつ
:酒を飲ますための料理なんだよなぁ
:全力で仕留めにかかってて羨ましい
:リーマンが無言になるレベルの誘惑かw
ゴクリと、スタジオに喉が鳴る音が響く。もちろん、音の主は沙界さんだ。まあ当然の反応だろう。
なにせコレは、沙界さんが配信で話した個人的な優勝メニューの一つなのだから。
「……あの、もしかして私の好みって知ってました?」
「そりゃもちろん。コラボ相手の好物を調べるのは当然ですよ。まあ、沙界さんのは調べるまでもなく知ってましたが」
「それは……つまり配信とかを観てくれていたと?」
「そうですそうです。このタイミングで言うのもアレですけど、俺の推しだったんですよね沙界さんって。なんなら沙界さんがきっかけ、VTuber目指したレベルですし」
「そうなんですか!?」
「それで食材の解説に戻りますけど、ソーセージに使用してるのはドラゴンの肉です」
「いやちょ、まっ……ドラゴン!?」
「そんで樽の方は【ドラゴンエール(王)】というお酒でして。これもまた一定以上のドラゴンを倒すと、極低確率でドロップするめたくそに美味い酒です」
「またドラゴン!?」
はいそうです。ちなみになんでドラゴンが酒落とすねんって話なのだが、ドラゴンは倒すと割といろんなものをドロップするのである。お宝好きや酒好きなど、いろんな逸話が大量にあるからだと思われる。
「そんなわけで、本日のメニューはドラゴン祭りとなっております。いえーいどんどんぱふぱふ」
「情報の暴力なんですよ!! 説明責任を放棄しないでくれません!?」
「──これもまた癖、というやつです」
「説明めんどくさくなってるだけですよね!?」
ーーー
あとがき
これは正真正銘の週一投稿。
ちなみにソーセージとお酒の組み合わせだと、皆さん何が好きですか? 私は三ツ矢サイダーです。
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