第21話 運

 昼休み時間が終わり、午後の仕事を始めるチャイムが鳴り始めた。

さぁこれから仕事だ!などと張り切ったとたん必ず何か障害が起きるものである。

(ウンコが出たくなった....)

急いでトイレに駆け込み個室のドアを閉める。

速やかに下半身を露出し、便器に座った。

生理的欲求を満足させ、ホッと一息ついて立ち上がろうとした瞬間「ガシャガシャベトッ」と音がしたのである。


 何だろうと便器をのぞき込むと、腕時計がとぐろを巻いたウンコに突き刺さっているではないか!!!

ベルトのロックが外れ、腕から滑り落ちたようである。

「アチャー!! まずいべした!」個室の中で声を出してしまった。

「なにが したんだがっす?」

外から声を掛けられたが返事のしようがない。

「ななっ、なにも んね...」と言ったものの、このまま流す訳にもいかないし、どうしよう....

まったく今日はウンの悪い日だ、などと考えている場合ではない。

手を伸ばし、腕時計の端を摘んで持ち上げた。

なんと! 色つやそして程良い粘りのウンコが、腕時計の金属ベルトに絡みつき金色に輝いているさまは風格さえ感じられるではないか。

さすが勤続20年記念に貰った高級腕時計だけのことはある。

よし、このまま持ち上げ水を流して...ついでに時計も洗っちゃえ...


 なんとか持ち出せる程度に洗い、トイレットペーパーに包みポケットに入れる。

個室のドアを開け誰もいないのを確認し、急いで手洗い場で腕時計も洗う。

何食わぬ顔で部屋に戻ったが、金属ベルトの隙間にまだ付着しているのだろうか、左腕を持ち上げると多少匂うようである。

 

 もう一度洗おうと思ったが、これ以上ウンが逃げないようこのままにしておくことにしよう。

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