第20話 注意喚起

 少し遅い昼食を済ませ、部屋に戻りパソコンの画面を眺めながらネット検索を始めた。もうすぐ昼休みも終了の時刻である。キーワードを入力しマウスをクリックした途端、画面が真っ赤になり「セキュリティ警告」の文字が現れた。

続けて次のようなメッセージが表示された。

「このウィンドウを閉じると、お客様の個人情報が危険にさらされWindows登録が停止されます」

「Windows サポートに連絡する:(050)5539-95**」

あららら、ウィルスに感染したのだろうか?

しかし、社内のPCにはアンチウィルスソフトが導入されているし、外部とは二重三重のファイアーウォールで守られているので、簡単に感染することはない筈である。


表示された文章を良く読むと何やら怪しい日本語である。

「アクセスはこのパソコンのブロックセキュリティ上の理由」

「お使いのコンピューターは、それがトロイの木馬のスパイウェアに感染していること以下のデータが侵害されました」

Windowsのマークなどは本物そっくりであるが、日本語は翻訳ソフトをそのまま張り付けたような内容である。


念のため情報システム部の木村君に来てもらった。

「常務 何したんだっす?」

「ほれ この画面 見でみろ」

「おぉ これは おもしゃい 表示だなっす」

「詐欺の警告画面だど 思うんだけど...」

「んだね 何しった時 この画面になったんだっす?」

「ネット検索 しったのよ」

「どだな ネット検索や?」

「ん...と まぁ なんて言うか...」

「これは 全社員に注意喚起さんなねがら どだなサイトにアクセスしたんだが 教えてけろずぅ」

「んだがら あの...ほれ...」

「あ~ぁ 常務の好きな あれだがした アハハハ」

「......」

笑いながら木村君は戻って行ったが、どの様な注意喚起をするのか気になり、午後の仕事が手につかない状態になった。


 翌日、全社員に情報システム部からメールが配信された。

『全社員へ 注意してください』 「昨日、一部社員のPC画面にウィルスに感染した旨の警告画面が表示されました。これは詐欺画面ですので、表示された番号に電話するなど安易な行動をとらず、速やかに情報システム部にご連絡下さるようお願い致します。」

一部社員と言うことにしてくれた木村君に感謝!!

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